No.1361 大学附属フィーバーの終焉?四工大という新しい選択

 この数年、中学受験における大学附属校の人気は上昇を続けてきました。

 大学入試改革への不安や、2016年に始まった東京23区の大学の入学定員の厳格化大学受験における推薦枠の増加による一般受験枠の減少などの影響によって、中学受験で附属校に入ろうと考える受験生のご家庭が増えたのです。

 しかし、2023年に大学入学定員の厳格化が緩和されることとなりました。このことは中学受験での大学附属人気にも影響を与えると予想されていましたが、実際にはどうだったのでしょうか。その結果を調べてみました。そして現時点でお得と言える大学附属校はどこなのかを考えてみましょう。

 2021年6月6日に配信したメールマガジン『No.1048 大学附属・系属中学が爆上がり中!まだお得な学校はどこだ!?』38校の大学付属校を取り上げたのですが、今回はその38校に加え、新しい視点として「四工大」についても触れました。

 今回のメールマガジンの内容は以下の通りです。
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1、2023年度入試で大学附属校の応募者数はどうなったのか?
2、さらに伸びた中学はここだ!
3、まだお得な学校はどこだ?
4、四工大という新しい選択。
5、賢い併願作戦を立てましょう。
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 それでは順にご説明致します。

1.2023年度入試で大学附属校の応募者数はどうなったのか?

 以前に配信させて頂いたメールマガジンでは、38校の大学付属校を取り上げて、2017年から2021年までの偏差値推移をまとめました。

 今回は、その際に取り上げた38校のその後の偏差値推移と2022年度入試と2023年度入試の応募者数の変化を調べました。一覧は最後に載せておきます。

 応募者数については、それぞれ第一回入試の応募者数を比較したのですが、2022年と2023年で比べますと38校中で応募者数が増加した学校が11校、減少した学校が26校、変化なしが1校でした。

 38校(第一回入試)の合計増加数と合計減少数を差し引きすると、1,084名の減少となり、一旦大学附属フィーバーは一息ついた印象です。
※慶應中等部も減らしていますがこれは男子定員減が大きく影響したものと思われます。

 しかし、多少応募者数が減少したからといって、ここ数年で爆上がりした偏差値が大きく下がるわけではありません。レベルが高止まりしたというところでしょうか。

 2021年度入試から2023年度入試にかけて偏差値はどのように変わったのか、まずはさらに伸びた学校を見てみましょう。偏差値は四谷大塚の結果偏差値(80%偏差値)を用いています。

2.さらに伸びた中学はここだ!

 2021と2023年の偏差値を比べ、まださらに伸びた学校の第一は日大第一中学の女子で、+5ポイントでした。それに続くのが+3ポイントで、獨協、日大第一の男子、日大豊山女子の3校です。そして+2ポイントで明大中野、青山学院横浜英和の男子、中央大附属の女子、日大豊山、東洋大京北の男女と続きます。

第一位:日大第一(女子)
第二位:獨協・日大第一(男子)・日大豊山女子
第三位:明大中野・青山学院横浜英和(男子)・中央大附属(女子)・日大豊山・東洋大京北(男女)

 2017年から2021年にかけてプラス10ポイントと爆上がりしていた日大豊山はさらに2ポイントアップと強さをみせました。同じ日大系の日大第一は2017年から2021年にかけては女子1ポイント、男子2ポイントと微増だったのですが、ここにきて伸びてきました。

日本大学第一中学校 画像引用元:ウィキペディア

 それでは、次にまだお得と言える学校はどこなのかを見てみましょう。

3.まだお得な学校はどこだ?

『早慶上理』

 前回に続き、残念ながらこのグループではお得と言える学校は無いという状況です。
 上智大学・東京理科大学は附属中がなく、中学があるのは早慶のみです。早慶ともにレベルはトップクラスで変わらずお得感は全くない状態です。

『GMARCH』

 GMARCHクラスで唯一残っているお得な学校が明治大学付属八王子です(現・明治大学付属中野八王子・・・2024年4月から明治大学付属八王子に校名変更予定)。2021年から2023年にかけて男女とも±0です。明大明治の偏差値と比べると女子で9ポイント差、男子で8ポイント差となっており、八王子駅か拝島駅からスクールバスで25分という立地さえクリアできれば、まだまだ魅力的です。

明治大学付属八王子中学校(現・明治大学付属中野八王子中学校) 画像引用元:学校HP

 2021年のメールマガジンでは、明大中野の偏差値が55で、明大明治(男子)60と比較すると5ポイントの差があり、お得なレベルであるとお伝えしたのですが、明大中野はそこからさらに2ポイント上がり、現在は明大中野の偏差値は57、明大明治(男子)60と3ポイント差まで迫ってきて、いよいよお得とは言えないレベルになってきました。

 香蘭女学校は立教大学への系属校推薦枠がありますが、2025年度立教大学入学予定者(2024年度の高3生)より、現在の97名から160名に増員となることが発表されました。160名というのは募集定員数と同数ですので、全員分の推薦枠が確保されたこととなり、さらに人気を呼ぶでしょう。現在でも立教女学院に肉薄している香蘭女学校ですが、完全に並ぶレベルとなるかもしれません。

香蘭女学校中等科 画像引用元:ウィキペディア

『成成明学獨國武』

 前回に引き続き、明治学院はお得と言えます。2021年から1ポイントアップしたものの、成蹊、成城学園と比べるとだいぶ差があります。明治学院は最初の入試が2月1日の午後入試なので一覧表は午後入試の偏差値を用いています。2月2日の午前入試の偏差値はさらに2ポイント程度低くなり、2月1日午前の成蹊・成城学園と2月2日午前の明治学院を比較すると前回と変わらず7~11ポイントの差がありますので、お得であると言えます。

明治学院中学校 画像引用元:学校HP

 獨協中学は、2021年から2023年で3ポイント偏差値が伸びています。獨協医科大学への学校推薦型選抜の系列校枠が設けられたことが偏差値アップの要因の一つでしょう。

『日東駒専』

 このグループでのお得な学校は日大三中です。日大系はどの学校も伸びています。前回は日大豊山、千葉日大一が爆上がり中で、日大豊山女子、日大一はとてもお得な印象でしたが、日大豊山女子はプラス3ポイント、日大一は女子でプラス5、男子でプラス3とだいぶ上がってきています。そんな中、日大三中はプラス1ポイントとなっていて、そこまで上がっていませんのでお得と言えるでしょう。

日本大学第三中学校 画像引用元:ウィキペディア

4.四工大という新しい選択

 ChatGPTの登場は社会に大きな衝撃を与えました。人工知能をはじめ情報技術は飛躍的に進歩を遂げています。理系人材の必要性は今後もますます高まってくると考えられ、今から理系への進学を考えているご家庭も増えているのではないでしょうか。

 大学附属志望で、かつ理系に進みたいという生徒様の場合は、四工大という選択肢も視野に入れると志望校選択に幅が出てくるでしょう。

 四工大は、正確には東京4理工という枠組みです。上記でご紹介してきたGMARCH、日東駒専などは、近いレベルの大学を便宜的にグループ分けして呼んでいるだけですが、四工大は、東京都内に本部を置く芝浦工業大学、東京電機大学、東京都市大学、工学院大学の4大学が連携をしている枠組みのことで、各大学で開講する学部及び大学院修士課程の授業を履修できる「単位互換制度」を設けていたり、各大学の学部生が相互に大学院修士課程に入学できる「特別推薦入試制度」を設けています(推薦枠は各大学1専攻につき1名)。

 それぞれの大学の附属中学の偏差値と附属大学の内部進学数は以下の通りです。いずれも半附属校もしくは、ほぼ完全に進学校という学校になりますが、今まで総合大学の附属しか考えていなかった方は一度検討してみてはいかがでしょうか。

学校名 男女 2023年第一回入試の結果偏差値(四谷大塚) 22年3月卒業生の附属校への進学数
芝浦工業大学附属 女子 54 卒業生225名中99名が芝浦工業大学へ内部推薦で進学
男子 52
芝浦工業大学柏 女子 55(一般) 卒業生285名中36名が芝浦工業大学へ内部推薦で進学
男子 53(一般)
東京電機大学 女子 41 卒業生255名中61名が東京電機大学へ内部推薦で進学
男子 42
東京都市大学付属 男子 53 22年3月は内部推薦数不明
21年3月は卒業生286名中6名が東京都市大学へ内部推薦で進学
東京都市大学等々力 女子 55(特選) 卒業生216名中8名が東京都市大学へ内部推薦で進学
男子 53(特選)
工学院大学附属 女子 41(2月1日午後のB特待) 卒業生234名中63名が工学院大学へ内部推薦で進学
男子 40(2月1日午後のB特待)
※工学院大学付属は2月1日午前の四谷大塚結果偏差値不明の為2月1日午後を掲載  

5.賢い併願作戦を立てましょう

 爆上がりしてきた大学付属校の人気も一段落した様子ですが、レベルが下がったわけではなく上がりきって止まった、というところでしょうか。
 そのような中でも、まだ残されているお得な学校は、明大八王子、明治学院、日大三と言えます。

 大学付属人気が一段落したとはいえ、「今日のお得な学校」は「明日の爆上がり校」という可能性がありますので、しっかりと安全校を含めながら併願作成を立てましょう。

 頑張ってください!

大学名 中学校名 2021年 2022年 2023年 2023-2021 2022年応募者数 2023年応募者数 応募者増減
早稲田大学 早稲田中 64 64 65 1 756 830 74
早稲田実業(女子) 68 69 68 0 210 204 -6
早稲田実業(男子) 63 64 64 1 337 320 -17
早稲田大学高等学院中学部 64 64 65 1 470 465 -5
早稲田大学佐賀(女子) 59 60 60 1 155 141 -14
早稲田大学佐賀(男子) 57 58 58 1 412 367 -45
慶應義塾大学 慶應中等部(女子) 70 70 71 1 475 448 -27
慶應中等部(男子) 64 64 65 1 1021 856 -165
慶應普通部 64 64 63 -1 619 587 -32
慶應湘南藤沢(女子) 68 68 68 0 304 275 -29
慶應湘南藤沢(男子) 65 65 65 0 240 179 -61
学習院大学 学習院中等科 56 56 54 -2 471 389 -82
学習院女子 58 59 57 -1 302 255 -47
明治大学 明大明治(女子) 63 64 63 0 298 290 -8
明大明治(男子) 60 60 60 0 289 283 -6
明大中野 55 57 57 2 1,042 886 -156
明大中野八王子(女子) 54 54 54 0 169 177 8
明大中野八王子(男子) 52 52 52 0 237 229 -8
青山学院大学 青山学院(女子) 65 65 65 0 546 563 17
青山学院(男子) 58 59 59 1 408 410 2
青山学院横浜英和(女子) 56 56 57 1 161 226 65
青山学院横浜英和(男子) 53 54 55 2 99 102 3
青山学院系属浦和ルーテル(女子) 52 54 53 1 男女計221 男女計211 -10
青山学院系属浦和ルーテル(男子) 51 52 51 0 男女計221 男女計211 0
立教大学 立教池袋 58 56 57 -1 293 343 50
立教女学院 61 60 60 -1 300 353 53
立教新座 60 59 59 -1 1,802 1760 -42
香蘭女学校 58 58 58 0 365 391 26
中央大学 中央大学付属(女子) 58 59 60 2 277 257 -20
中央大学付属(男子) 56 57 57 1 237 227 -10
中大横浜(女子) 58 59 59 1 309 234 -75
中大横浜(男子) 56 57 57 1 207 170 -37
法政大学 法政大学中(女子) 58 58 57 -1 141 133 -8
法政大学中(男子) 56 56 55 -1 165 99 -66
法政第二(女子) 58 58 58 0 415 430 15
法政第二(男子) 56 56 56 0 630 630 0
成蹊大学 成蹊中(女子) 55 56 56 1 170 170 0
成蹊中(男子) 50 51 51 1 236 182 -54
成城大学 成城学園中(女子) 54 54 54 0 326 258 -68
成城学園中(男子) 51 51 51 0 195 233 38
明治学院大学 明治学院中(女子)2/1午後 46 47 47 1 234 223 -11
明治学院中(男子)2/1午後 45 46 46 1 234 224 -10
獨協大学 獨協 44 45 47 3 368 341 -27
獨協埼玉(女子) 42 42 42 0 596 577 -19
獨協埼玉(男子) 41 41 41 0 793 758 -35
日本大学 日本大学中(女子) 49 50 50 1 GL・AF計290 GL・AF計254 -36
日本大学中(男子) 48 49 49 1 GL・AF計290 GL・AF計254 0
日大第一(女子) 36 41 41 5 134 102 -32
日大第一(男子) 37 40 40 3 214 211 -3
日大第二(女子) 45 46 46 1 228 200 -28
日大第二(男子) 45 45 45 0 268 213 -55
日大第三(女子) 38 39 39 1 264 130 -134
日大第三(男子) 38 39 39 1 166 281 115
日大豊山 45 46 47 2 478 408 -70
日大豊山女子2/1午後 38 39 41 3 83 92 9
日大藤沢(女子) 46 46 46 0 76 91 15
日大藤沢(男子) 45 45 45 0 130 120 -10
目黒日大(女子) 45 45 45 0 男女計184 男女計252 68
目黒日大(男子) 44 44 44 0 男女計184 男女計252 0
千葉日本大学第一(女子) 44 44 44 0 286 308 22
千葉日本大学第一(男子) 43 43 43 0 509 523 14
東洋大学 東洋大京北(女子) 47 49 49 2 153 118 -35
東洋大京北(男子) 46 48 48 2 173 98 -75
              合計 -1084
※1 早稲田大学佐賀は1月首都圏入試のデータです。
※2 青山学院系属浦和ルーテルは1月10日4科型のデータです。
※3 香蘭女学校は2月1日4科型のデータです。
※4 日本大学中の応募者数は応募者数は4科入試の数値、偏差値はGLのデータです。
※5 日大豊山女子の2/1午後の応募者数は2科・4科合計のデータです。

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