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国語の入試問題で使われる作品の中で、「重松清」の作品は年を経てもその頻出度が下がりません。10月7日に実施された日能研センター試験でも、『ライギョ』が出題されました。以前にご紹介した短編集『小学五年生』に収録されている作品です。下記に解説いたしますように、これまでも『小学五年生』からは、麻布中で『タオル』、四谷大塚の合不合判定で『おとうと』が出題されました。この重松清の文章を読み解くことは、物語文読解全般に効果を及ぼすところがあります。そこで今週と来週の二回に分けて、その人気作家作品の攻略法を挙げてみたいと思います。
今回の「第1章」では、実際に重松清の文章を問題文として出題された問題の中から、数問をピックアップしまして、その出題内容を分析したうえで、攻略法についてご説明いたします。次回「第2章」では、その他の作品の中から、今後出題される可能性の高い作品をご紹介したうえで、予想問題などを通して攻略のシミュレーションを実際に行ってみます。なお、途中にページを記しましたものは、『小学五年生』によるものです。
まずは、これまで出題された中から、麻布中と四谷大塚の合不合判定テストの問題について分析を進めてみましょう。
平成17年度麻布中『タオル』
【問11】
①「涙が出てこない」状態から、「熱いものがまぶたからあふれ出た」状態になるまでに、少年はどのように変化していますか。この間の経過と涙が出た理由を明らかにして、説明しなさい。
→「気持ちの場面分け」です。[シライさんに会う前]⇒[シライさんと話したり、写真・年賀状を見た時]⇒[祖父のタオルを額に巻きつけた時]の三段階に分けて「主人公の気持ちの変化」を読み取ることがポイントです。[祖父の死を現実として受け止められなかった]⇒[シライさんとの関わりの中で、次第に死を実感できてきた]⇒[祖父の分身のタオルに接することで、死を悲しみと共に受け入れられた]の変化を説明します。
②「熱いものがまぶたからあふれ出た」、「かすかな潮のにおいは、そこにもあった」というところでこの作品は終わっていますが、自分の涙の中に「潮のにおい」があることに気づくということは、少年のどのような変化を表していると考えられますか。
→主人公の少年の、前問での「死の実感」の変化から、さらに「潮のにおい」を通じて、自分と祖父の血のつながりを踏まえて、少年の未来への展望まで触れることが必要です。
平成18年度 四谷大塚第一回合不合判定テスト『おとうと』
【問5】
「」の部分(p.31「かわいそうなこと…」からp.32「アッくん、知ってるの?—」)には、少年が高まってくる不安に耐えていることを、少年の動作を描くことで表している一文があります。その文のはじめの五字をぬき出して答えなさい。
→「動作」とありますので「体の動き」に限定することが、まず必要です。「どきどきする」の心情表現に目をとられますが、「動き」ではないために不正解になります。
【問11】
「手術がすんだら〜マンガ、たくさん持って行ってやる」「あと、いろんなテレビ〜一緒に観てやるし」「…べつにたいしたことないよ、もっときれいなの〜見せてやるから…」とありますが、これらの表現に共通して読み取れる少年の気持ちとして最も適当なものを選びなさい(選択肢)
→麻布の問題にも共通する、いくつかの表現を通して、そこに共通する心情を読み取らせる問題です。「アツシの不安を和らげたい」と「自分自身に手術の成功を確信させたい」の二重の思いを読み取ることがポイントです。こうしてふたつの問題を並べてみますと、出題の仕方に違い(記述か選択肢か)はありますが、いくつかの共通するポイントが見えて来ます。
①“小道具”と“情景” 例えば『タオル』でのシライさんが持参した、「祖父からの年賀状」は、少年が祖父の思いを目の当たりにし、そこから自覚と死の実感を併せ感じるきっかけとなっています。『おとうと』では「自転車」が、海へと向かう「道程」を表しながら、主人公の少年が悲しみや不安を抑えていることを表現する「小道具」となっています。 また、奇しくも両方に「海」が現れます。『タオル』では舞台となるだけではなく、「潮のにおい」という嗅覚に訴える効果も含まれています。『おとうと』では、主人公の兄弟が目指す場所が「海」ですが、そこには兄の弟への優しさと、兄弟の未来への希望を受け止める、「大きな存在」としての海がたたずんでいます。 こうした“小道具”や“情景”の存在を確実に把握して、「そこに筆者が託した心情」を読み取ることが重要になります。目についた小道具には文中に線を引いたり、印をつけて、より注意を喚起するように心がけましょう。
②気持ちの“ジェットコースター” 重松清が少年を主人公にした物語の大きな特徴が「心情の変化と成長」です。その心情はさながらジェットコースターのように移り変わります。麻布名物の最終記述問で、まさにそれが問われています。合不合の『おとうと』でも、選択肢問題をはさみながらも〔アツシを重荷に思う〕⇒〔アツシの手術を知り、悲しみと、わずかでも望みにかける思い〕⇒〔アツシを思う兄としての自覚〕といった変化をとらえることを大前提としています。 対策としましては、以前こちらの欄でもご紹介いたしましたが、「心情のフローチャート」を作成することが有効です。
上記のふたつのポイントですが、ご覧頂きましたとおり、それぞれが密接に関わり合っています。つまり、「様々な出来事をきっかけに、主人公の少年の心情が段階を追って変化する。その出来事に小道具や情景が巧みに含まれている」ことに重松清の作品の真髄が隠されています。そして入試問題でも、その真髄を把握し、お子さん自身の言葉で表現することを求められます。作業として、決して簡単なものではありませんが、心情変化はどの物語文でも問われるところで、重松清対策を進めることが、物語対策全般の実力アップにも通じる理由がここにあります。
以上のように、重松清作品が実際の入試問題や模試でどのように扱われているかをご紹介してきました。この時点で、出来ましたら一度、『小学五年生』を手に取られて、何篇かを読み進められて下さい。次回ではさらに攻略のステージを進めて、出題可能性の高い作品を通じての「攻略シミュレーション」を進めていきます。取り上げます作品は『友だちの友だち』です。
国語の読解は、勉強方法がわかりづらいため、苦手にしているお子さんも多いと思いますが、算数と同じようにポイント押さえながら、トレーニングを繰り返せば必ず結果が出てきます。勉強方法に不安や迷いを感じることがありましたら、ぜひ中学受験鉄人会の中学受験専門プロ家庭教師にいつでもご相談ください!もちろん、6年生の総仕上げ、過去問対策についてもお気軽にご相談ください!
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