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先週に引き続きまして、国語入試問題で頻出の「重松清」作品について、その攻略方法をご説明いたします。前回は、実際に出題された問題を題材に、出題傾向を分析するとともに、問題解答を前提とした、重松清作品の読み取るポイントについてお話しました。今回は、これから出題される可能性の高い重松作品を取り上げまして、予想問題をはさみながら、問題の解き方をシミュレーションしたいと考えます。
麻布中で出題された『タオル』、昨年の四谷大塚合不合判定テストの『おとうと』、センター模試の『ライギョ』は、どれも短編集『小学五年生』に収録されています。ここで同書に収められた作品の中で上記以外から、今後問題として取り扱われる可能性が高いと思われるものを以下に挙げてみます。『葉桜』『友だちの友だち』『南小、フォーエバー』『ケンタのたそがれ』『バスに乗って』『正』が、主人公の気持ちの揺れ動きが分かりやすい点、小道具の活用(『南小、フォーエバー』の“グローブ”、『バスに乗って』の“回数券”など)、身近な誰にでも起きそうな「事件」が心情変化のきっかけになっている点など、内容として他の作品と比べても入試問題に適していると言えます。
ここでは、その中から『友だちの友だち』を一例としまして、読解のポイントと予想される設問を挙げて、解答方法をシミュレーションしてゆきます。
まず、本編のあらすじですが、「主人公の少年は転校先の学校で、自らの言動がもとでクラスに馴染めなくなってしまう。ひとり孤独を紛らしていた少年は、風に飛ばされたこいのぼりを見つけ、持ち主の元に返しに行く。その持ち主の家には、少年と同い年の男の子の遺影が飾られていた。男の子の母親に招かれるままに部屋にいた少年だったが、そこにクラスのヨッちゃんが現れる。亡くなった男の子の親友だったヨッちゃんと少年は、気まずい空気の中にいたが、男の子の母親への気遣いからお互いに帰ることも出来ず、ゲームを通して同じ時間を過ごす。やがてふたりの間にわずかな空気の変化が生まれる。部屋を出たふたりは、男の子の母親から渡されたこいのぼりを手に河原へと向かい、そこでかつてヨッちゃんの親友であったという、亡き男の子の話などを重ねるなかで、心の交わりを感じ、並んで自転車を走らせる」といった内容です。
まず重松清の作品の大きな要素となり、物語文読解の基本でもある「気持ちの変化」ですが、「主人公の少年が、孤独の状態から、どのような過程を経て、ヨッちゃんとの関係を修復させるにいたったか」が最大のポイントになります。場面の移り変わりとしては、
〔少年がこいのぼりを見つけるまで〕⇒〔亡くなった男の子の家:p.42「団地の建物は…」から〕⇒〔家を出て河原へ向かう場面p.47「先に「さようなら」と言った…から〕といった構成になります。
それぞれに〔孤独〕⇒〔ヨッちゃんとのわだかまり〕⇒〔心の通い合い〕といった少年の心情のポイントをつかみ、どこで変化が生まれて来たかを把握することが必要です。
ここで前回ご紹介しました重松清攻略アイテム、「情景」と「小道具」ですが、まず「情景」としては場面づくりの背景としての情景こそはありませんが、「風」が重要な要素となっています。孤独を感じる少年に吹き付ける「埃っぽい風」、男の子の家からこいのぼりを飛ばす「風」(物語の重要な転機となります)、そして最後の場面で「こいのぼりが泳ぐ」といった描写にも、それを手に主人公とヨッちゃんが「風」を切って自転車を走らせる、爽快感が感じ取られます。この「風」が持つ意味合いの変化から、主人公の少年の心情変化を確実につかむことが重要になります。
今回の「小道具」は言うまでもなく「こいのぼり」です。本編が当初「オール読物」に掲載された際の原題は「こいのぼり」でした。この「こいのぼり」が、〔主人公と男の子の家をつなぐきっかけ〕〔亡くなった男の子とヨッちゃんとの間の絆〕〔主人公とヨッちゃんのわだかまりを解く媒体〕と、いくつもの「絆」を表す重要な媒体になっていますので、「こいのぼり」が出て来たところには全て線を引く、などの方法で、それぞれの場面でどのような効果がもたらされているのかを確実に読み取りましょう。
また、『おとうと』と同様に本作でも「自転車」が重要な役割をはたしています。主人公の少年の「孤独」を表す「ハンドルを強く握り直して」の表現、少年同士の心の交流を表す、終盤の「道幅いっぱいに蛇行」といった表現など。どこか少年らしさの象徴とも思える「自転車」は、重松清の描く少年像でも重要なファクターとなっており、今回もその効果をいかんなく発揮しています。「こいのぼり」と同様に「自転車」が出てくる度に線を引く、などのかたちで注意が必要です。
その他、予想される心情問題としては、
☆「胸がどきんとした」(p.45の2行目)のはなぜか→親友になれると思っていながら、自分の発言のせいで話せなくなったヨッちゃんの名前を、突然聞かされたから。
☆「頬が急に熱くなり、赤くなった」のはなぜか→おばさんの、友だちという言葉を聞いて、嘘をつくことのつらさを改めて感じる一方で、このまま嘘をつき続けなければならない、という焦りをより強く感じたから などが想定されます。
重松清の特徴のひとつとして、心情表現を省いた表情だけの表現を連発し、その心情については詳しく記さないという点があります。受験で重松清が好まれる理由のひとつがここにもあります。人物の表情が変化した時に、「なぜその表情になったのか」といった理由づけを問題に設定できるのです。出来ましたら、お父様・お母様が先に文章を読まれて、そうした省略表現を確認され、「どうしてこうなったんだろうね」と、お子さんに問いかけてみて下さい。
重松清の作品をこうした読み方をすることは、読解力を養成するだけではなく、文章の面白さを知るきっかけにもなります。中学受験鉄人会では、このように工夫を凝らしながらプロの読解ノウハウを伝授しています。国語の勉強方法に不安や迷いを感じることがありましたら、ぜひ中学受験鉄人会の中学受験専門プロ家庭教師にいつでもご相談ください!もちろん、算数のご指導や6年生の総仕上げ、過去問対策についてもぜひご相談ください!
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