中学受験的「となりのトトロ」の見方

※筆者私物

 夏休みは、受験の勝負所です。夏期講習の密度も濃くなり、熱心に勉強されていることと思います。しかし、1ヶ月以上の期間、ずっと120%の力でがんばり続けては、体が持ちません。体調をくずしたり、精神的に押し潰されたりしないように、適切な「遊び(休養)」が必要です。
そうはいっても、受験生の夏休み、完全に遊んでしてしまうのは、やはり心配です。休養はとりつつも、何か得点に結びつくような工夫をしたいものです。

 じつは、遊びの中にも「得点のモト」はたくさんあります。映画を見たり、虫取りに行ったりしても、その中で対象を「分析」し、「根拠」を見つけて「説明」することで、読解力や表現力を養うことができるのです。そして、このような「遊び」の中で得た能力は、文字情報を分析する入試問題にも、そのまま転換可能です。「遊び」だからといって、ぼんやり過ごすのではなく、真剣に遊べば勉強にもなるのです。

 では、どのようにすれば、「得点のモト」を引き出すことができるでしょうか。今回は、「となりのトトロ」を例にとって、どのように見れば中学受験に役立つのかを説明してみたいと思います。

【中学入試に出そうな場面】

 「となりのトトロ」の映画の中でも、入試問題になりそうな場面がいくつかあります。人と人とのつながりや、複雑な心情を描いた場面に注目です。

 ひとつは「めい」が「さつき」の学校に来てしまう場面です。おばあちゃんと一緒に留守番をしていたはずなのに、さみしさのあまりさつきの学校にきてしまった「めい」の気持ちを鑑賞できるとよいでしょう。このときの「めい」の表情に注目してみてください。ただ単に甘えて泣いているわけではありません。目を見開いて涙を流しています。なぜでしょうか? ここは、いろいろな解釈ができることろです。わたしは、「めい」は「さみしくてたまらない」という気持ちだけでなく、「しっかりお留守番できなくてくやしい」という気持ちが混ざっているからだと思いましたが、いかがでしょうか? ぜひお子様の意見も聞いてみて下さい。
また、ここでは昔の学校のようすや、その後の「かんた」の気持ちにも注目できるとよいでしょう。

 もうひとつは、病院から電報をもらうってから、「さつき」が井戸で泣いてしまうまでの場面です。病院からの電報を受けたときの驚きと不安、母の一時帰宅が延期になったことを「めい」に伝える「さつき」の気持ち、母の死を連想してしまったときの胸が張り裂けそうな不安など、「さつき」の気持ちをきちんと説明できるようにしたいものです。

【トトロで時代背景を学ぼう】

 トトロの中では、ポンプ式の井戸や人の家の電話を借りる状況、緊急の連絡は電報でするなど、現在の生活ではなかなか目にする機会のない、昭和30年代のようすが描かれています。中学入試でも、やや古い時代を描いた物語が多く出題されます。山本有三、井上靖、有島武郎などの描く物語について、具体的なイメージを持てるようになります。
 また里山の風景や、近所づきあいにも注目です。随筆文や論説文でも、「あのころはよかった」と、トトロの時代を懐かしむ文章もあるでしょう。

【物語を分析する力を養う】

 トトロを見た感想が「おもしろかった」「たのしかった」では、あまり説明したことになりません。「あの場面のあの表情に胸が詰まった」「あのときのあのしぐさが、よくわかる」といった具体的な感想を言わせることが大切です。そうすることで、物語を分析し、説明する能力を養うことができるからです。

 たとえば、「このお話どう思う?」と問いかけたとしましょう。そのとき、子供が「おもしろかった」としか答えなかったとしても、叱ってはいけません。あくまで、自分の言葉で話し始めることを促すようにします。

 「どこが一番おもしろかった?」「そのとき、さつきはどう思っていたと思う?」などと掘り下げていけば、子供なりに考えて答えようとするはずです。そのときの頭の働きが、じつは「得点のモト」になるのです。

 感想を聞くと、「めいが見つかってよかった」とか「トトロと一緒に飛びたいと思った」という程度の、断片的なものかもしれません。それはそれで、子供なりの素直な感想ですし、否定する必要もないと思います。
 しかし、その答えに対して、親が深い問いかけをすることが大切です。より内容のある感想に導くのです。そのような親子の会話によって、子供は、何に着目して、どのように考えればよいのかという思考方法を学ぶことができるのです。ほんの一例ですが、母子の会話モデルを書いてます。

  • 母「トトロの映画は、どうだった?」
  • 子「うん、おもしろかったよ」
  • 母「それはよかったね。それで、どのあたりが一番おもしろかったの?」
  • 子「えーとね、トトロと空を飛ぶところ」
  • 母「確かに、気持ちよさそうだったわ。じゃあ、ここでクイズね。だれが一番最後にトトロのおなかに飛びついたのでしょうか?」
  • 子「えっ、だれだっけ・・・あ、さつきじゃなかった?」
  • 母「正解! はじめにちっちゃいトトロが飛びついて、次にめいが飛びついて、さつきが最後でした。なんでさつきが最後だったんだろうね?」
  • 子「うーん、どうしてだろう? わからない・・・」
  • 母「さつきが飛び乗る前の、トトロの顔覚えてる? すっごい笑顔だったの」
  • 子「そうそう、歯がにーってなってた!」
  • 母「さつきは、そのトトロの顔を見て飛び乗る気になったんだよね。それまでは、どうしていいかわからないような顔をしてたのに」
  • 子「トトロの笑顔って、『さつきも来ていいよ』って意味だったのかなあ」
  • 母「その通りかもね。さつきはおねえちゃんで、めいほど無邪気じゃないから、わたしも乗っていいのか気にしてたのかもね」

このような会話ができれば、「表情」に注目すればいろいろなことがわかるということを子供に示してあげることができます。また、そうすることで、子供が文章で物語文を読むときも、自然と「表情」に注目できるようになるでしょう。

【トトロで情景描写を学ぼう】

 最後に、ぜひ注目していただきたい場面があります。物語の最後のほうで、「めい」が行方不明になってしまう場面です。「さつき」は「めい」を探しに、夕焼けのなかを走ります。そのときの、背景の夕焼けにぜひ注目してみて下さい。非常にリアルで美しい夕焼けが描かれています。この夕焼けは、そのときの「さつき」のあせりや不安を暗示しています。情景描写が、人物の心情を表す典型例です。 じつは、夕焼けは入試でもたくさん取り上げられています。石田衣良「夕日へ続く道」は、2009年の早稲田、渋谷教育学園渋谷、富士見の3校で取り上げられましたし、重松清の「小学五年生」の中にも、印象的な夕日が描かれています。都会ではなかなか見られなくなった夕焼けから、情景描写を学びましょう。

 以上、ご家庭で、気分転換に「トトロ」のDVDを借りてきて見てみることにしたとき、どこに着目し、どのように子どもに問いかけるべきかをご紹介しました。もちろん、「トトロ」でなくてもかまいません。子供の興味のあるものを、子供なりに分析させてみることが大切です。そのとき、遊んでばかりいると叱るのではなく、大人が少し手助けして、より深い理解につなけられるとよいと思います。

 われわれ中学受験鉄人会のプロ家庭教師は、常に100%合格を胸に日々研鑽しております。ぜひ、大切なお子さんの合格の為にプロ家庭教師をご指名ください!

メールマガジン登録は無料です!

頑張っている中学受験生のみなさんが、志望中学に合格することだけを考えて、一通一通、魂を込めて書いています。ぜひご登録ください!メールアドレスの入力のみで無料でご登録頂けます!

ぜひクラスアップを実現してください。応援しています!

ページのトップへ