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今回は、最近の入試問題で出題数が増加傾向にある「速さとグラフ」「点や図形の移動」「立体図形」の問題について、その対応方法をお伝えします。
これまでに何度か紹介させていただきましたが、これらの出題が増えている理由として、ただ単に「典型的な問題の解き方を覚えている」だけではなく、「与えられたグラフや図を読み取り、問題で設定された状況を把握し、順序立てて解決していく」という能力を、中学校側が求めているのであろうと考えられます。
大手塾もこの傾向をくみ取り、模擬試験でも必ず出題されるようになってきております。10月の模擬試験を例に、これらの問題を挙げてみます。四谷大塚合不合判定テストの男子では、大問5で「速さとグラフ」、大問10で「立体図形の表面積」を出題。女子では、大問6で水槽に立体を沈める「水量の変化」、大問9で「速さとグラフ」を出題。サピックスの合格力判定テストでは、大問5で円柱と円すいを合わせた「立体図形」、大問7で「図形の移動」を出題。さらに先日のマンスリーテストでは、大問4で「速さとグラフ」が出題されていました。
「速さとグラフ」の問題では、「横軸に時間を、縦軸には二人の間の距離」を示すグラフが、最近の流行のようです。先に示した模擬試験の「速さとグラフ」で与えられていたグラフは、全て「二人の間の距離」を示したものでした。
そして、これらの問題が難しく感じてしまう原因ですが、普段解きなれている「旅人算」などでは、あらかじめ時速などの必要な数値が明示されているのですが、「速さとグラフ」ではグラフを読み取って、解くために必要な数値を自分で見つけて行かなくてはなりません。それに加えて「二人の間の距離」を示すグラフでは、途中で速度を変化させる設定の出題が多くなっています。このようなときには「グラフの傾き」が変化するたびに、「どのように状況が変化していくのか」を分析して、考えて行かなくてはなりません。このように、問題文を一読して方針が立ちにくいと、生徒さんにとってはハードルが高くなってしまいます。
また、「点や図形の移動」や「立体図形」では、各小問ごとに状況設定の図を書き直す必要がありますが、消しては書き直す作業を繰り返すうちに混乱してしまうことも多いでしょう。さらに問題傾向として、(1)→(2)→(3)と連続性のある出題が多いため、問題文に与えられた図に書き込むのではなく、自分でスタートの状態から書き直す方が得策なのですが、「ていねいな図をかく」ことも高いハードルなのです。
ただ、これらの問題で問われている能力は「状況を把握し順序立てて考える」ことで、出題パターンはさほど多様ではありません。よって、苦手意識を克服するために問題をたくさん解く必要は無いと思います。模擬試験や過去問でこれらの問題に取り組んでいるわけですから、実際に解いた問題をどのように解いて、どこで間違えたか、どうすれば正解したのかを検証しておくと、次回は対応できるレベルの出題だと認識してください。一方、解説と見比べて違う解き方をしている場合、お子様の解き方を検証することなく、「解説を読んで理解させる」という方法はお勧めできません。
受験に向けて仕上げの時期ですから、問題を解くために必要な知識はかなり持ち合わせています。お子様は、全ての問題に対して自分なりに解くための道筋をたてて取り組んできたはずです。典型的な問題であれば答えを求めるまでの方針が立てやすいため、解法にそれほどばらつきは無いと考えられますが、自分で状況を整理して論理的に考えて行かなくてはならない問題ですと、一つずつ「分かったこと」を積み重ねて行って答えを求めるため、どの条件を最初の糸口としたかによって解法は異なるからです。
このような問題に取り組む際、お子様はこれまでに習った知識を総動員して、問題に挑んでいます。塾によって、あるいは先生によって解法を含め指導方法は異なりますので、アプローチ方法はまさに十人十色です。自分の築いてきた思考回路とは異なる解説の解き方を理解したところで、これまでに積み上げてきた学力をさらに高めることにはならないのではないでしょうか。
どのように解いていくかという思考回路は固まりつつありますので、次に同じような問題に取り組む際、解答に示してあった解き方ではなく、前回自分が解いた方法でアプローチしていくケースが多いでしょう。つまり、お子様自身の解法の中で前回のつまづきを修正しておかないと、同じようなところでミスしてしまう危険が高まります。
だからこそ、お子様が最初に思いついた解法を大事にしてほしいのです。まずは、どこで間違えたのか検証するために、一つひとつアプローチを確認していってください。例え問題文を読み違えていたとしても、どうしてその解釈が間違っているのかお子様自身が理解しなくては、いつまでも繰り返してしまいます。また、途中で間違っていたとしても、「途中まで解けていた」や、小問(1)の「ちょっとした計算ミスで連鎖的に間違えてしまったが、考え方は正しかった」などの原因が分かれば、苦手意識を克服できるだけではなく、「次はミスしたところに気をつければ解けるはず」と、自信も持てるようになるのではないでしょうか。
模擬試験の正答率をみても、かなり得点差のついている出題ではあります。しかし、問題への取り組み方を理解しコツをつかんでしまえば、さほど難しい問題ではありません。得点差のつく問題でしっかり得点するために、アプローチ方法を確立していきましょう。
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