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先日4月10日(日)に四谷大塚の第1回合不合判定予備テストが実施され、いよいよ中学受験の公開模試が本格的にスタートしました。今回は、この第1回予備・国語の内容を振り返り、どこがポイントだったかをお伝えします。問題がお手元にあるようでしたら、ぜひ問題文と照らし合わせながら読んでください。
全体の問題構成はこれまでと大きな違いはありません。第1問は漢字の読み書きで小問10問、第2問はことわざ・四字熟語で小問8問。この最初の大問2問での全体正答率(受験生全体から見た正答者の割合)を見ると、漢字で「探究」「補う」の書き取り、「軽率」の読み取り、「心機一転」の空所補充で50%を割りましたが(特に探究は39%)、それ以外は70%以上と、取りこぼしのできない内容となっていました。
第3問は論説文読解。文章は長い(上下段で3段半)ですが、「つまり、しかし、たとえば」といった接続詞をしっかりと追ってゆけばわかりやすい文章構成であったと言えます。それでも小問1の段落構成で全体正答率が34%ということは、まだまだ構成を意識した読み方が受験生全体で徹底されていないのかもしれません。論説文・説明文では形式段落が意味のうえでどのように分かれるかを把握することはとても大事です。問題になっていなくとも意識するようにしましょう。その他の問題については後ほど述べます。
第4問は物語文読解。文書の長さ以上に、主人公の心の声が文章の至るところで現れることは、読みづらさを感じる要因になったかもしれません。情景描写や象徴的存在に何が托されているかが問題になっているところは、最近の入試問題のトレンドが反映されたかたちと言えるでしょう。時間がなかったこともあるでしょうが、最終問題の『象徴的存在の解釈』は全体正答率も5%少しまでにしか至りませんでしたが、できなくても良い問題ではありません。今後もこうした表現問題は多くの学校で出題されることが予想されますので注意が必要です。
出題の傾向としては、合不合判定テストの特徴である80字前後の記述問題はなく、そのかわり第3問で65字以内、第4問で50字以内の問題がそれぞれ1題出されました。第3問の記述は決して難しい問題ではありませんでしたが、それでも制限時間内で精度の高い内容を書ききることは容易ではなかったでしょう。合不合判定テスト対策の鉄則となりますが、必ず「時間配分」を意識して、時間をかけてはいけない問題と、記述のようにかけるべき問題を分けるなど、時間に対する意識を高めることがまず必要です。
上述の通り、決して構成のわかりづらい問題ではありませんでした。語彙レベルも従来の合不合判定模試からすれば決して高くはなく、こうした文章にどれだけ時間をかけず、かつ雑にならずに読めるかが、早急に習得すべき課題になります。小問1が不正解であった、あるいは読んでいる途中で集中が切れてしまったような生徒さんは、もう一度塾のテキストなどで論説文・説明文の基本問題に戻り、構成を意識して文章を丁寧に読み直してみましょう。
この第3問のポイントは『抜き出し問題への取り組み方』です。これまでのメルマガでも触れてきましたが、抜き出し問題は一見易しそうで、非常に難しいケースが多くあります。今回の第3問はまさにその抜き出し問題の扱い方で明暗が分かれたと思われます。結論から言えば、抜き出し問題を難しく感じた場合はすぐに抜かして次の問題にゆくべきです。例えば小問4では「文章中から6字で探し」とあります。このように字数指定までされると、つい探しやすく感じて、時間をかけてでも探そうとしてしまいます。それは極めて危険な判断です。長い文章から6字の表現を何の手がかりもないままに見つけ出そうとするのは、森の中でコンタクトレンズを探すような作業になります。実際この問題は全体正答率が7.5%と非常に低く、難しい問題でした。抜き出し問題ではよほどの手がかりがなければ時間をかけ過ぎないこと、間違ってもムキになって探すようなことはないようにしましょう。
むしろ第3問では小問7の2にある65字以内の記述問題の方に時間を費やすべきです。書くべきポイントが明確ですので、丁寧に制限字数内に仕上げれば、満点は難しくても部分点を多く取れる問題です。記述に苦手意識のない生徒さんは、この問題でどれだけ得点できたかをよく見直しておきましょう。そこから今後の記述問題に取り組むヒントが見つかります。
この第3問は、構成のしっかりした論説文にいかに意識的に取り組むか、難しい抜き出し問題に時間をかけ過ぎなかったか、記述問題でどれだけ部分点が取れたかなど、貴重な見直しポイントに富む、レベルの高い問題であったと言えます。
主人公の心の声がそのまま文章に現れるかたちで物語が進みます。その声を拾い上げることで内容を把握しやすいと感じる生徒さんと、口語体の文章が続くことで逆に気持ちの流れがつかみづらいと感じる生徒さんに分かれたかもしれません。この第4問のポイントは、『心の声以外の部分に表現されている情景で心情理解をどれだけ補えるか』です。
問題でもその点が要求されています。それが先にも述べた情景描写や象徴的存在の意味するところを問う問題です。このタイプの出題は最近の入試問題では頻出になっています。今年の入試でも麻布、開成、駒場東邦、芝といった難関上位校で象徴的存在が何を意味しているかが問われました。例えば麻布であれば厳しい境遇にある主人公の兄弟が自分たちと同じ苦しみを持つものとして「蝉」に思いを寄せ、開成では「カラス」が主人公の母親が抱える不安な気持ちを暗示するなど。これらの表現は、「カラスは母親の気持ちを暗示している」といった直接的な説明が文章中に一切書かれていません。それだけに生徒さんにとっては難しく感じることが多いようです。
今回の第4問でも、そうした問題がズバリ出題されています。例えば小問3では主人公の心の傾きを「バス停」が暗示していることが、小問7と小問10では「くつのひも」に主人公の心の動きが托されていることが問われています。「くつのひも」については同じ内容が複数の問題で重複することに違和感を持った生徒さんがいたこともあるかもしれませんが、全体正答率は小問7で2.2%、小問10で5.7%と際立って低くなりました。象徴的存在の意味するところを把握するためには、とにかく同様の問題を数多く解いて、「一見関係のなさそうなものがわざわざ使われていることには意味がある」といった意識をしっかり持つことが重要です。そうした訓練は文章を読むだけでなく、ドラマなどの映像作品を見ていても学習できます。また、こうした何かを象徴するものには大人の方が断然慣れていますので、目にする度にそれが何を意味するのか、どんどん生徒さんに問いかけてあげて下さい。
第4問では記号選択問題は比較的取り組みやすかったと思われます。こうした問題にはできる限り時間をかけずに、また考え直しは逆に正答率を下げることにもなってしまいますので、しっかり自分で問題ごとに制限時間を設けて臨むようにしましょう。
小問5の50字記述問題は第3問の記述よりも難度が高く、正答率も第3問の48.5%に比べて28.3%に止まりました。ただし、心情説明の記述問題としてはスタンダードな内容ですので、時間がなくて手がつけられなかった生徒さんは、必ず再度取り組んで下さい。この問題で問われていた「強気」と「とぼとぼ歩く」という、相反する要素が混在する心情を説明する内容は、最近の入試では頻出パターンのひとつです。強気の部分と弱気の部分をそれぞれ自分の言葉を補ってしっかり説明することが求められます。
この第4問も、象徴的存在や何かを暗示する情景を把握すること、記号選択問題に時間をかけ過ぎないこと、相反する内容が混在する心情を説明することなど、物語文読解で要求される重要なポイントが網羅された、極めて精度の高い問題でした。
今回の第1回合不合判定予備テストはその名の通り予備テストであり、まだ四谷大塚でも最初の模試です。偏差値結果が思わしくなかったとしても、その数値にとらわれるより、どこで得点できて、どこが取れなかったのか、得点できなかった理由は何か、といった見直しに大きく重点を置きましょう。見直して、そこで出た課題を克服することを目標に次の模試に臨む。その繰り返しで実践的な問題対応力は向上します。
上述の通り、今回のテストには国語読解の重要ポイントが大変多く含まれています。すぐにすべてを習得しようと焦らず、ひとつひとつを確実に自分のものにするように進めて下さい。
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