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「温故知新」という言葉は、入試のためにあるわけではないのですが、昔の入試問題がアレンジされて新しく登場するということはしばしば見られますので、古い入試問題を研究しておくと役に立つことが往々にしてあります。10年ひと昔とよくいわれますが、10年ほど前の入試問題には’お宝’があちこちに隠れています。
中学入試の問題を作成するのは実に大変な作業です。とくに、生物や地学の分野では、高度な知識を前提とせず、小学生にも無理なく思考を巡らすことができるような問題をつくるのは、とても難しい作業です。しかも、毎年毎年、手を変え、品を変えての出題を続けるということは本当に大変だと思います。
また、小学生に適した実験や観察の例が、それほど豊富にあるわけでもありません。実験結果がある程度合理的なものであるか、現象を説明する統一的な見解が成立しているか、理屈を組み立てて説明できるかどうか、などといった検討も必要です。したがって、自ずと過去の入試問題の良問を参考にしたり、アレンジしたりするということが起こってくるのです。
それでは、’名作’といえる過去問をいくつかご紹介します。
東京の麻布中や兵庫の灘中では、重心を意識させる力の問題がしばしば出題されています。
麻布中では、水平な棒を糸でつるし、それに同じ重さのおもりを多数つるしていく、という設定で、三角形の板の重心を意識させる問題が10年以上も前に出題されました。複雑な問題が三角形の重心を考えることですっきりと解けるという、思考力とセンスを問う良問でした。灘中では、端におもりをつるした棒を次々と継ぎ足していき、つり合ったときの形状を問うという問題が出され、棒を継ぎ足すごとに重心の位置をとらえていく、という発想で解かせていました。麻布中では、地層の岩石中に含まれるある特定の物質の半減期から、地層の年代を測定させる問題も出されたことがあります。
東京の開成中では半月の傾き方と季節の関係を、灘中では月が空を移動する道すじの傾きと季節の関係を考えさせる問題が出されたことがあります。月と地球、太陽の関係を立体的にとらえて考えなければいけない、とても難しい問題でしたが、月の動きに関しては満ち欠けと形、見える時刻などの問題が平凡なものになりつつあるので、より深い考察を必要とするものが増えてくるかも知れません。10年近く前になりますが、千葉の専大松戸中では月の位置と潮の干満に関するテーマの問題が出題されました。
物理分野や化学分野では、’定番’の問題でじゅうぶん思考力をみることができるためか、斬新な問題が現れることはあまり多くありませんが、物体の衝突では、前述の千葉の専大松戸中でおもりの衝突前後の速さの変化のデータから、おもりの重さや速さを求めさせるという問題が出されたことがあります。衝突する2つのおもりの重さと速さの関係に隠れている法則を見つけ出して解くものでした。力のつり合いとはたらきについては、前に述べたように重心という概念を用いるとスムーズに解くことができる問題への準備をしておくとよいと思います。
数年前に東京の筑駒中で出題されたような、おもりをつるす位置を実際にあてはめて確かめるというように、試行錯誤を短時間にくり返して解いていく力を要求する問題も今後は要注意だと思います。直方体の積み木やレンガを積み重ねていく問題などは、すでに’定番’になりましたね。
化学分野については,昔から同じようなテーマと形式の問題が続いており,とくに着目すべき点はないように思います。知識を正確にすることと,計算力をつけておくことでじゅうぶん闘えると思います。
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