意外によく出題されています!メダカの生態系・飼育法

メダカは飼育しやすく繁殖も難しくないので、学校や家庭でよく飼育されています。エサをあげたり、産まれた卵を観察したりと色々な思い出をお持ちの方も多いでしょう。意外かもしれませんが、そんな身近なメダカの生態や飼い方が中学入試理科ではよく出題されています。出題した学校をいくつか挙げてみましょう。

  • 平成18年度 フェリス女学院中
  • 平成20年度 学習院女子中
  • 平成20年度 東京学芸大竹早中
  • 平成23年度 青山学院中
  • 平成23年度 早稲田大高等学院中
  • 平成24年度 市川中

男女共学に限らず多くの中学で出題されていますね。そこで、今回はメダカの水槽の中をのぞいてみたいと思います。水槽というのは人の手も入りますが、それ自体が小さなひとつの生態系でもありますから、水槽の中でどのような生き物がどのようにつながっているか、ここでじっくり考察してみたいと思います。

■メダカがエサを食べる

自然界では植物プランクトン・水草・コケ→動物プランクトン→メダカという流れで食物連鎖がつながっています。水槽内ではプランクトンなどの微生物が不足しがちなためエサを与えることになりますが、大きな水槽で豊富に水草などを用意し、メダカの数をかなり少なくすればエサを与えなくても育つ環境を作ることはできます(そういった育成設備をバランスドアクアリウムと呼びます)。実際には食物連鎖のバランスを取るのはなかなか難しいため、エサを投入して育成する方法が簡単で確実です。

水槽内ではメダカが食物連鎖の頂上になりますが、自然界ではメダカを捕食するヤゴ(トンボの幼虫)やゲンゴロウなどの昆虫がいたり、さらにはコイやナマズなどの大型魚などがいたりするので、メダカも食べられることがあります。

ちなみにエサやりについてですが、メダカを含む魚類は変温動物なので、あまり低水温だとメダカの体温も下がり、その結果消化酵素がうまくはたらかず消化不良をおこしやすくなります。水温が下がる夕方から夜間はエサをやらず、朝や昼間のうちにエサやりを済ませておきましょう。

■メダカがフンをする

メダカがエサを食べた後のことは考えたことはあるでしょうか?当然フンをしますから、水はどんどん汚れていきます。しかしここでもさまざまなことが起こっているのです。まずフンをすると水中にアンモニアが発生します。これはメダカにとって毒になりますし、水がアルカリ性になって植物にも悪影響を与えます(アンモニアは水に非常に溶けやすいため、発生したアンモニアはすべて水に溶け込んでしまいます)。ここで登場するのがバクテリアなどの分解者です。バクテリアはアンモニアを毒性の低い物質に分解します。この物質は自然界では違う種類のバクテリアによってさらに窒素などに分解されて空気中に放出されますが、水槽内ではそのバクテリアを発生させるのが難しいため、定期的に水換えをおこなう必要があります。

またバクテリアは生物の死がいや枯れた水草なども分解し、分解された物質は水草の肥料に(時にはコケの肥料に)なって、水槽内での植物の育成を助けます。このようなバクテリアの働きによって水質が安定し、メダカなどの生物が暮らしやすい環境が保たれているのです。

バクテリアなんて入れた覚えがない、と思う方もいるかもしれませんが、バクテリアは水草や流木、そして大気中とどこにでもいます。水槽をセッティングしてから数週間もすればバクテリアは繁殖して、水質安定に役立ってくれます。ただバクテリアは顕微鏡でないと見えないようなごくごく小さな生物で、分解できる量にも限度がありますから、小さい水槽でメダカをギュウギュウに飼育すると分解のはたらきが間に合いません。そういった場合はこまめな水換えが必要です。

■水草が育って大きくなる

水草は植物ですから光合成を行っています。水中に溶けた二酸化炭素を使って酸素と養分を作り出す働きです。生み出された養分は植物が成長するのに使われ、酸素はメダカやプランクトン、そして水草自身の呼吸に使われます。水草は光合成を行うだけでなくメダカの卵がからみつく場所になりますから、メダカ水槽にはぜひとも入れておきましょう。ただし水草は夜間には呼吸のみをおこないますので(昼間は呼吸と光合成の両方をおこなっています)、あまり入れすぎると今度は夜間にメダカが酸欠になるおそれもあるので注意が必要です。
教科書にもマツモやオオナカダモなどを入れるとよいと書いてありますが、どちらも丈夫で成長が速い水草ですから、水槽用の照明を用意しなくても十分育成することができます。ちなみに水草は陸上植物と比べて葉が薄く、その中でもオオカナダモは細胞が大きいため、よく細胞の観察に用いられます。

日本では小川や水路などで見られるメダカは、古来から観賞用として、また研究用としても親しまれています。自然環境下ではメダカが蚊の幼虫(ボウフラ)を食べるため、蚊の大量発生を抑えられることから益魚としても知られています(ちなみに蚊の幼虫のボウフラはメダカの好物ですが、蚊のサナギであるオニボウフラはあまりおいしくないようでほとんど食べません)。ですが現在では農薬の使用や生活排水による水質悪化、水路整備による小川の現象、外来種による生態系の乱れなどが原因でメダカがあまり見られなくなってきています。ついには2003年にはメダカが絶滅危惧種に指定され、それに伴い保護活動も盛んになるなど、メダカをとりまく環境は急激に変化しています。ここで気をつけたいのは、メダカが減っているのなら、とショップで買ってきたメダカを自然にかえすつもりで池や川に放す人がいますが、これは絶対にしてはいけません。メダカは水域ごとに遺伝的な差を持っている場合が多いので、もともと存在していたメダカの種が、違う種が混じることで雑種ばかりになってしまう可能性があるのです。もし飼っていたメダカを手放さなくてはならない場合は、次の飼い主を探すか、学校などに譲りましょう。

メダカだけで、これだけの知識(しかも中学受験に関係すること)が学べるなんて意外だと感じるかもしれませんが、そもそも理科は身近な現象を科学的に説明するための学問ですから、学んでいる事がらのほとんどが身近な現象に関連しています。教科書を読んで学んだ事がらを実生活に結び付けて活きた知識に変えていくことが本当の実力(学力)に繋がっていきますので、ぜひ苦手意識を持たずに取り組んでいってください。

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