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現在小学校高学年である中学受験生のお子さんが大学を卒業するのは約10年後。その頃の日本がどのようになっているかは想像できませんが、他国の文化を理解する力を国際的な視野があることと呼ぶとすれば、その視野がより一層必要とされることは間違いないでしょう。他国の文化を理解するためには、まず日本の文化を知ることが大前提となりますが、そもそも中学受験の社会には基本的には世界史・世界地理が含まれません。中学受験の社会をしっかり学ぶことは、日本の文化をより深く理解し、お子さんの国際的な視野を養う重要な礎を築く作業になっている、とも言えます。
例えば平成22年度の麻布中学の社会最終問題は、受験生に「日本を知ってもらう観光計画」を考えさせ、記述させるものでした。この問題で求められるのは、外国人に対して「フジヤマ、ゲイシャ」といった日本のイメージを持たせてしまうような、ありきたりの観光計画を紹介するのではなく、現在の日本の本来の姿とは何かを受験生に考えさせることにあります。中学受験の世界でも真の国際化とは何かが問われているのです。
そこで今回は国際的な視野を築く基本作業のひとつとして、自宅でテレビ番組を観ながら日本の様々な姿を知ることができる方法をお伝えします。いずれも短い時間に区切って鑑賞することができるものですので、6年生のお子さんにも、気分転換も兼ねたものとしてお薦めできます。
人気のバラエティ番組ですので多くの方がご存知とは思いますが、ギャラクシー賞をはじめ数々のテレビ番組関連の受賞歴があるなど、話題性だけでなく番組のクオリティーも高い評価を得ています。故事の『矛盾』にちなんで、例えば「どんなものでも切断する解体作業用カッター」と「絶対に切れないワイヤーロープ」など、相反する「絶対○○なもの」同士を対決させて決着を見届けるという番組です。
特に話題となったのが、「絶対に穴の開かない金属」と「どんな金属にも穴を開けられるドリル」の対決でした。福岡県に本社のある金属精製加工メーカーの日本タングステンが製造する金属を貫通させんと、様々な工具メーカーの強力なドリルが勝負に臨むのですが、強靭な金属の前に次々とドリルの刃が砕け散ってしまう光景は衝撃的でもありました。
この番組が人気を博した理由は、まず何といってもそうした対決の場面の迫力、緊張感にあるでしょう。金属vsドリルの対決でも、ダイヤモンド粒子を付着させたドリルが金属音を立て、時に火花を散らせながら金属を少しずつ削りとって行く様は、テレビの画面を通して見ていても固唾を呑んでしまうほどの緊張感に満ちていました。過度な演出がなく、対決の様子をそのまま映し出しているからこその迫力です。
ただ、この番組の大きな魅力はそれだけではありません。いくつかの例外を除いて、勝負に参加するのは日本の企業です。それも上記に紹介した金属精製加工メーカーや工具メーカー、鋳物製品メーカー、建設機械メーカーから、ある食材が絶対に食べられないゲストにその食材を食べさせられるか、といった対決で登場する農家の人々など、いわゆる第一次・第二次産業で働く人々が登場します。こうした人々が見せる職人気質が番組の人気を支えているとも言えます。自らが作り出した製品に対する絶対の自信と愛情、また勝負に挑む際の緊張感や勝負を終えた後の達成感や悔しさが表情に現れた瞬間に、見ている側もなぜか製品に強い愛着を感じることがあります。
日本の技術の素晴らしさ、それを成しえる職人達の毅然とした姿、それらこそが日本が世界に誇れる文化のひとつであるとも言えるのではないでしょうか。
また、番組の慣わしとして、対決は両者の名刺交換から始まります。そして勝負を終えた後には、それぞれが健闘を称え合うというシーンが映し出されます。武道の世界の「礼に始まり礼に終わる」が実践されているのです。こうした姿を見ることも、お子さんにとっては日本文化が持つひとつの美を知る良い機会となるでしょう。たかがバラエティと侮ることなかれ、非常に造詣の深い番組です。
分野としては美術鑑賞番組とでも言えるでしょうか、毎回暮らしの中に隠れた様々な題材を取り上げて、その鑑賞方法を、いくつかのツボにわけて解説していく番組です。
取り扱う題材が、器や家具、建築などですので、お子さんにはあまり馴染みのないものかもしれません。また、流れる音楽がジャズ中心ということで、かなり大人っぽい雰囲気に包まれていますが、こうした番組に少し背伸びして触れることも、意外にお子さんのモチベーションを上げる効果があります。
先に紹介した『ほこ×たて』を“動”とすれば、雰囲気としては“静”に包まれていて対照的ですが、日本の文化の美しさに触れるという点で活用価値の高い点は共通しています。特に映像の美しさは特筆に値します。
例えば「青森のねぶた」をテーマとした回では、「壱のツボ」として、現在にも継承される、ねぶたの顔を針金でつくりだすという技術を生み出した天才ねぶた師が紹介されます。ついで「弐のツボ」では、ねぶたを縁取る太い墨の黒を取り上げ、ねぶたの極彩色の成り立ちが解説され、最後の「参のツボ」では、ねぶたの周りで跳ね踊る跳人(ハネト)の姿を紹介しながら、踊りながら楽しむねぶたの鑑賞の極意が示されます。
このようにひとつのテーマを様々な角度から見ることは、お子さんの視野を広げ、見識を深めるうえで大きな効果があります。中学受験の社会でも、麻布や海城、栄光学園などで、ひとつのテーマを題材として様々な出題をする形式をとっています。
大人の雰囲気を垣間見ながら自然とテーマ学習ができるという、お子さんの感覚を刺激する効果のある番組です。
最後に海外の国々を扱う番組を紹介します。旅をテーマとしたバラエティ番組ですが、毎回ゲストが自分にとっての「海外にある第2の故郷」と呼べる地を訪問することで、そのゲストの歩んできた人生を掘り下げるという内容です。ゲストが訪問する土地への思いを語り、映像が紹介されるという構成ですが、ゲストの意外な一面を垣間見ることもできます。
例えば魚類学者のさかなクンは、フランスのパリに訪れました。あまりに意外な取り合わせですが、さかなクンが魚を好きになるきっかけがタコで、そのタコの研究で有名なモナコ大公が開館したモナコ海洋博物館がパリにあるなど、パリはさかなクンにとっての様々な出会いが詰まった場所であるとのことなのです。
表面的には見えないその人物のルーツや人生観が、海外の意外な場所にあることを知るだけでも、それはお子さんがより深く物事を見るきっかけにもなります。中学受験の国語でも、海外旅行での体験がつづられた随筆文を見ることが多くありますが、出題する中学校も、受験生のほとんどに海外旅行経験がないことは十分承知のうえで、いかに文章から情景をイメージできるかを問うているところもあります。こうした番組に触れることで少しでも映像を頭の中にインプットしておくことで、イメージがしやすくなる効果があると言えます。
他にも海外旅行を題材にした番組はいくつかありますが、この『アナザースカイ』はそれに人間模様が織り交ぜられているところに魅力があります。放映時間が遅いので録画をしておくことをお薦めします。
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