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来年2016年度中学入試の国語で出題されそうな物語文の作品を、ベストテン形式で選びました。対象は2014年8月から2015年7月末までに出版された書籍です。ぜひ参考にしてください。
内容上、大人向けの表現などを含むと思われるものには、※をつけています。
上位3位には頻出作家の作品が並びました。もちろんこれまで作品が出題された実績も考慮はしましたが、それ以上に出題される可能性が高いと思われるものを選びました。
1位は重松清です。このメルマガの読者の方々でしたら、また重松清か、と思われるかもしれません。その通り、作品を読むまでは中学受験国語の最頻出作家の名前を挙げることにためらいはありましたが、この総350ページにわたる長編は、一度読み始めるとページをめくる手が止まらなくなる傑作中の傑作です。入試に出る出ないにかかわらず、ぜひ読んで頂きたい作品です。内容はタイトルが示す通り、一人っ子である子供たちが織りなすドラマなのですが、随所に重松節とも言える「説明しすぎない表現」が見られます。問題をつくる側からすれば、説明されていない部分の心情を受験生に推測させるかたちで出題ができるのです。重松清が頻出になる理由はそんなところにもあります。とても読みやすい文体でありながら、身近な者を失う悲しみや、本当の孤独とはどのように表現されるか、などの心の深い部分にまで踏み込んでいます。団地という設定が、物語の舞台として存分に活かされているところも大きな魅力です。
2位も頻出作家、椰月美智子の作品です。14歳の息子とその父親が、夏休みを故郷の島で過ごす物語なのですが、14歳の息子による現代の物語と、父親が14歳だった頃の過去の物語が交互に進められるという、絶妙の構成でエピソードが連なっていきます。特に息子が島で知り合った同い年の人物たちと織りなす物語は鮮烈で、胸を熱くさせる魅力に満ちています。少年たちがはじめは激しくぶつかり合いながら、次第に友情を深め合っていく過程には、小学生のお子さんにも十分に理解できる心情変化が随所に見られます。けんかしたからこそ深まる絆というものを目の当たりにできるのです。また現在、過去どちらにも出てくる神話的なエピソードが、物語をさらに深くする効果を生みだしています。
3位の辻村深月の作品は短編集です。タイトルの通り、姉妹や親子、祖父と孫といった様々な家族模様を取り上げていますが、全7編のうち特に読んで頂きたいのが『1992年の秋空』と『孫と誕生会』です。『1992年の秋空』は以前にある雑誌に掲載されたことがあることから、今年2月の入試で甲陽学院が出題していました。『1992年…』はタイプの異なる姉妹の話、『孫と誕生会』は祖父と3年生の孫娘の話です。どちらにも共通しているのが、はじめは理解しあえなかった両者の関係が徐々に変わっていくプロセスが、とてもきめ細やかに描かれているところです。『孫の誕生会』はそれがよりわかりやすく、幼い頃は慕っていた祖父に反抗する孫娘と、頑固で譲らない祖父という2人の関係が、少しずつ、柔らかく変化していくのです。短編ということもあって出題されやすいので、要注意の作品です。
4位は2008年に芥川賞を受賞した津村記久子の作品です。大坂を舞台にした、中学3年生の群像劇です。父親の死や、友人のいじめ、家族内の不和など、文字にするとシリアスになるエピソードが詰め込まれていますが、軽やかに、それでいて心情表現豊かに文章が連ねられていますので、読んでいてつらくなることはありません。念のためいじめの場面(p.139〜149)は、まず親御さんが目を通されてから、お子さんに読ませてください。後半の人間関係が濃くなってからの物語が秀逸ですが、入試で出題されるとなると、前半の何気ない会話のやり取りの方が使われやすいかもしれません。
5位には、松本清張賞を受賞した作品を選びました。この賞の選考委員には石田衣良や角田光代といった中学入試でも頻出の作家が含まれていました。引っ込み思案で自分のことを「おれ」と呼ぶ高校1年生の少女が、吹奏楽部に入部して、様々な出来事を経て成長していく物語ですが、まず主人公をはじめとして、人物たちの心情表現がとても爽やかで、またリアリティがあり、大人が読むと懐かしく、お子さんたちには新鮮に映るのではないかと思われます。部活ものの中でも、主人公の成長を実感できる点でおすすめです。
6位の宮下奈都の作品は、別々の場所で生まれ育った1組の男女が、成長し、やがて出会うという恋愛小説です。男女それぞれのエピソードを、短編のように交互につないでいく構成になっていて、中盤以降は完全に大人の恋愛小説になりますので、注意してください。遥名(女性)が中学に入学してからの時代が描かれている章(p.26〜44)が、より出題されそうなところですので、そこだけ、あるいはその前までを抜粋してお子さんに読ませた方がよいでしょう。遥名が中学で空気になじめず、自分をどのように表現してよいかわからず、いらだつ場面の描写はリアリティがあり、心情表現もとても豊かです。
7位に部活ものを選びましたが、部活といっても短歌をつくる「うた部」という独特の設定になっています。登場人物が高校生のため、恋愛に関する直接的な表現(p.117)が含まれますので、まずは親御さんが読まれて、不適切と思われるところは省いてお子さんに渡してあげてください。主人公の親友が中学3年生の時にいじめに遭って、自室に引き込もってしまうのですが、いじめの場面は一か所だけ(p.232〜237)ではありながら、なかなかにつらい描写です。それだけに親友が短歌を通して立ち直っていく過程の表現がより感動的に伝わってくるのですが、お子さんが読んでよいか、まず親御さんが目を通してみてください。
8位も部活もので、今度は放送部の物語です。作者の市川朔久子は今年の鴎友学園女子3次など複数校で『紙コップのオリオン』が、2013年度には立教女学院などで『よるの美容室』が出題されており、要注意の作家です。主人公の友人となる転校生・葉月のキャラクター設定が秀逸です。美少女でありながら冷たく毒舌を吐くこの少女に主人公が振り回されながらやがて心を通わせていきます。葉月の心が次第に和らいでいく過程には、中学受験の国語で好まれる「心の変化」が絶妙に描かれています。
9位には森絵都の短編を選びました。掲載されている雑誌「飛ぶ教室」には、これまでも今年の桐朋中学で濱野京子の作品が、昨年の香蘭女学校で庭野雫の作品が出題されるなどの実績があります。森絵都といえば今年の入試で大変多くの学校が『クラスメイツ』を出典としたことで話題になりました。『クラスメイツ』に収録されている作品と比べると、やや物語のうねりが平坦ではありますが、それでも主人公が抱える漠然とした不安の描き方などは、やはりさすがは森絵都、と言えます。
10位に選んだ作品は、ある女子高校の俳句同好会の物語です。7位の『うたうとは小さきいのちひろいあげ』が短歌を題材にしているので、多少重なるところはありますが、こちらの作品の方がより群像劇の色合いが強くなっています。『うたうとは…』のような心の再生を描くような、大きな展開はありませんが、前半で俳句同好会のメンバーが1人1人と増えていく様子を、それぞれの人物ごとに章をわけて描写しています。そのため短編のような構成にもなっており、出題のしやすさも感じられます。高校生ですが大人びたキャラクターなどはいませんので、安心して読める青春物語です。
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