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今月は、“日本版GPS”と“アニサキス”について取り上げてみました。
6月1日種子島宇宙センターからH2Aロケット34号機により準天頂衛星「みちびき2号機」が打ち上げられました。年内には3,4号機の打ち上げで24時間運用の4基体制を作り、2023年度までに7基体制の日本版GPSが完成するそうです。
今では自分がどこにいるか教えてくれたり、行きたい場所に道案内をしてくれる携帯電話やスマホ。車の運転を画期的に楽にしてくれたカーナビ。これらはGPSという全地球測位システムのおかげなのです。
GPSは、米国の艦船(かんせん)、戦闘機、兵隊などの軍隊が世界中どこに居ても正確な位置(緯度、経度に加え高度)を知るため、米国が開発して運用している測位システムです。その後、米国大統領が民間活用を保証したため、GPSの活用が爆発的に広がりました。
GPS衛星は6つの軌道上に各4基の衛星が等間隔に並び、合計24基の衛星で運用されています。各々の衛星は約2万kmの高度から電波を出しながら12時間で地球を周回しています。予備の衛星を入れると現在31基の衛星で運用されています。最小4基の衛星の電波を受信することで位置が分るシステムなのです。何もない野原なら水平線上に見える10基程度の衛星の電波を受信できるので位置精度が上がりますが、それでも誤差は約3~10m程度となります。当然ビルの谷間では衛星が見えなくなり誤差が大きくなり最悪は位置が分らなくなります。
赤道上空36,000kmを24時間で周回する気象衛星ひまわりなどの静止衛星は、衛星を見る位置によって異なりますが、南方上空約30~50度の位置に見えます。ところが、南方に障害物があると衛星からの電波が遮(さえぎ)られてしまいます。そこで日本版GPSでは、衛星が日本上空に長時間居るように軌道を決めたのです。それは、赤道上空ではなく日本上空(準天頂)とオーストラリア上空を通るような楕円(だえん)軌道とし、1周24時間で回っています。日本上空では40,000km、オーストラリア上空では32,000kmの楕円を描いて周回しています。日本上空に長時間居るので準天頂衛星と言われています。
その結果、地球上から見ると、世界地図で日本からオーストラリアの上空を8の字を描いて動いている様に見えます。本当は日本上空(天頂)に静止している衛星なら最適なのですが、物理的に不可能なので、準天頂衛星となりました。
1つの衛星は日本上空(8の字の上の部分)に約8時間居るように周回しています。最低3基の衛星で24時間運用ができるのですが、最終的には準天頂衛星を6基と災害時などの情報通信にも使用する静止衛星1基の7基体制となる予定です。
衛星が常に日本上空に有れば、高層ビルの谷間や山間部でも衛星からの電波を受信でき位置が分るようになります。
更に日本版GPSは、米国のGPSの誤差を修正する特殊な信号を出しているので、修正された位置情報の誤差はなんと“ 6cm ”となって飛躍的に向上することになります。
日本政府は2020年の東京オリンピックに訪れる世界の方々に“みちびき”の技術をアピールしたい考えで、競技会場、駅構内の道案内、車や人の移動のビッグデータを使って混雑の解消システムの開発等に生かしたいようです。
産業への応用としては、最も期待されるのは車の自動運転。車線を変更したり、対向車とすれ違ったりする際にはセンチメートル単位の精度で位置を把握する必要がありました。3~10mの誤差のあるGPSだけでは困難でした。また、農作業用トラクターの耕作、種まき、田植え、刈取り、農薬散布などの農業用機器の自動運転。小型無人機ドローンによる決められた位置への正確な配送等など、画期的な応用が期待できます。
皆さんだったらどの様な活用方法が考えられますか?
更に東南アジア、オセアニア上空も通るので、様々な国際貢献にも期待できます。
最近、魚の生食などによって発生するアニサキス中毒が急増しています。厚生労働省の食中毒統計では、2016年の報告件数は126件で、2007年の20倍以上となり、ノロウイルス、細菌に次ぐ、原因微生物となっているそうです。国立感染症研究所が行った調査では、報告されていない、はるかに多くのアニサキス食中毒が、全国で発生しているようです。
アニサキスは回虫の仲間の線虫で、成虫はクジラやイルカなど海生哺乳類が最終宿主です。その腸の中に寄生して居て卵を産み、排出された卵がオキアミなどの甲殻類に捕食されその腸内で成長し、幼虫(アニサキス幼虫)になります。長さ2〜3cm、幅は0.5〜1mm位の、白色の少し太い糸のように見えます。
アニサキス幼虫は私たちが食べる身近なサバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類の内臓が大好きで寄生しています。ところが、寄生している魚介類が死んで内臓の鮮度が落ちると、アニサキス幼虫は内臓から筋肉(身)に移動します。スーパーなどで買ってきた魚の内臓や身をよく探してみると、白い糸のような幼虫が、小さくとぐろを巻いているのが見付けられるかも知れません。
幼虫が生きたまま胃や腸に入ると内壁に潜り込むため嘔吐(おうと)や激痛を起こすことが有ります。
アニサキスを駆除する有効なお薬は未だ無いので、内視鏡検査で見付け、直接つまみ出す治療が行われています。
アニサキスは、配合飼料で育てられる養殖魚ではほぼ居ないそうです。
熱処理が有効です。加熱なら、60℃で1分間、70℃以上ならすぐに死んでしまいます。
また、冷凍ならマイナス20度以下24時間以上で死んでしまうので、一度冷凍した魚介類であればリスクを回避できるでしょう。
一方、酢漬け、しょう油浸け、わさび等では、アニサキスの幼虫は死にません。残念ながらシメサバも安全とは言えません。
少しでもリスクを減らす方法は、
・魚介類の内臓を生で食べるのは避けること
・鮮度の良い魚を選び、できるだけ早く内臓を切り取り、幼虫が身の部分へ移動するのを防ぐこと
・刺し身などを食べるときには、良く噛み砕く(かみくだく)こと
「新鮮だから安全」とは限らないのです。
「産地直送の氷温保冷、内臓付きの天然物」美味しそうではありますが、そのまま食べるのは賢明とは言えませんね。
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