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ホームメールマガジン宝箱合格に導く魔法の本棚八重野統摩『ペンギンは空を見上げる』(東京創元社)は来年度中学入試で出題が予想される、少年の成長を煌めくような描写で綴った宝石のような傑作です!

八重野統摩『ペンギンは空を見上げる』(東京創元社)は来年度中学入試で出題が予想される、少年の成長を煌めくような描写で綴った宝石のような傑作です!

amazon 八重野統摩『ペンギンは空を見上げる』(東京創元社)

 書籍の分類としてはミステリーに属される作品です。中学受験の国語でミステリー作品が出題されることはほとんどないのですが、それでもあえておすすめするのは、この物語がロケット開発者になる夢を持つ主人公の小学6年生ハルという少年の成長を美しく描いた物語であるからです。まさに中学受験の物語の定番テーマの「成長」を、非常に瑞々しく描いており、主人公ハルの他者との接し方が少しずつ変わっていく様子には、切なくも温かい印象を強く受けます。
 大人向けの深刻な事件が一切出てこないこの作品がミステリーに属される理由は、その物語展開にあります。終盤に明かされる主人公に関する真実で、物語全体の様相が変わり、それまで描かれた様々な出来事の裏付けが見えてくるという巧妙な仕掛けがあることが、この作品をミステリーたらしめているのです。そのような仕掛けのある作品では、物語としては上質でも中学受験の問題文としては適さないのではないかと思われるかもしれませんが、この物語に多く含まれる中学受験国語のエッセンスは、そうした仕掛けのあるなしとは関係なく、仕掛けに一切気づかない段階でも十分に味わうことができます。
 ハルが物語の中で語る言葉は6年生としては大人びているものの、確かに等身大のものであり、ハルと周辺の人物の関係の変化は、中学受験の物語文読解力を養成するためにぜひ触れて頂きたいものなのです。
 特にハーフの転校生イリスという少女とハルの心の交流は切実に伝わってくる心の痛みを伴って、読む者を惹きつける力に満ちています。
 
 中学受験の視点からぜひ注目して頂きたいのが、193ページから209ページのハルと家族のやりとりの場面です。心の痛みを持ったハルとそれを見守ってきた家族の間にあった確執に変化が生まれるこの場面は、親子関係、祖父と孫の関係という中学受験物語の頻出テーマを理解する格好の題材になります。

 長編作品ではありますが、ハルの成長を見守っているうちに物語の世界に没頭して、一気に読み進められてしまいます。夢に向かって全身全霊をかけることの美しさ、他者への深い優しさが、煌めくような描写で描かれている宝石のような傑作です。
 まずはぜひ本屋でご覧になってみてください!

入試対策室 室長 筑駒 貝塚正輝

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