No.842 入試で狙われそうな今月の理科時事問題(宇宙誕生直後の銀河、かぐら始動)

 宇宙の年齢はなんと推定〇〇〇億歳!秋に入り星がきれいに見える季節になってきました。今月は星の世界に思いを馳(は)せてみましょう。“宇宙誕生直後の銀河”“かぐら始動”について取り上げてみました。

< 宇宙誕生直後の銀河 >

すばる望遠鏡(左)。右はケックI望遠鏡 画像引用元:ウィキペディア

 私達が生きているこの宇宙は138億年前に起こったビッグバンと呼ばれる大爆発によって誕生したと言われています。その時に誕生した水素やヘリウムのガスが重力で集まって銀河や銀河団ができたそうです。どのようにできたかの詳細はまだ判っていないのですが、観測機器や技術の進歩により最も古い銀河や銀河団、銀河の源(みなもと)となる網状のガスが発見された、とのニュースがこの1か月間で立て続けに発表されました。

『135億年前誕生の3つの銀河』

 銀河はビッグバンの1~5億年後に出来たものと考えられています。しかし、遠い天体程遠ざかるスピードが速くなるので、光も波長が長くなり現在の技術をもってしても観測が困難で、銀河がいつ頃はじめて誕生したかはよく分かっていませんでした。波長が長くなるのは、音のドップラー効果で離れて行く救急車のサイレンの音が低くなる原理と同じです。
 これまで観測された最古の銀河は133億年前の銀河でした。
 東京大学宇宙線研究所の馬渡健(まわたり けん)特任研究員、早稲田大学の井上昭雄(いのうえ あきお)教授らの研究チームは9月10日、誕生から7億年ほど経過した128億光年離れた銀河を3つ発見しました。これらの銀河が誕生したのは135億年前ということになり、宇宙誕生の3億年後には銀河が在ったことになるのですね。

『130億年前の最古の銀河団』

 現在の宇宙では銀河が1000個程度集まった一団を銀河団と言っていますが、これまで128億7000万年前の銀河団が最古と思われていました。ところが、国立天文台などのチームがハワイのすばる望遠鏡、ケック望遠鏡などを使って、銀河の密集している領域を調査した結果、12個の銀河からできている銀河団の祖先とされる「原始銀河団」を発見し、129億7000万年前に出来たものと判ったと9月27日に発表しました。
 宇宙誕生から約8億年後には初期の銀河団のような大規模構造ができていたとは驚きですね。
 なお、この原始銀河団の中には、2009年すばる望遠鏡による最古の天体の発見とニュースとなった巨大ガス雲天体「ヒミコ」が入っているそうです。

『115億光年先に網状のガス』

 115億光年先の宇宙に複数の銀河やブラックホ―ルの源となる、網状のガスの広がりを見付けたと10月4日、理化学研究所や国立天文台などの国際チームが発表しました。理論上、広範囲にガスの供給源となる網の様な構造が有り、銀河やブラックホ―ルはその水素などのガスが供給されることで成長すると考えられていました。ところが、網状に分布するガスの出す光は弱く、発見されていませんでした。
 チームはハワイ島のすばる望遠鏡や南米チリのアルマ電波望遠鏡を使って、みずがめ座の方向に縦450万光年、横300万光年の領域に、網状に広がる水素ガスを確認したとのことです。その中に銀河やブラックホ―ルが合計18個形成されていたのだそうです。
 銀河などがどの様に出来てきたのかを解明することにつながる成果なのだそうです。

『観測技術の進歩って?』

 宇宙からは、隕石や粒子の様な物体だけでなく、低い周波数から並べると「電波」、「赤外線」、「光」、「紫外線」、レントゲンで使うX線を含む「放射線」が飛んできています。人間の目で見える光(可視光)だけではないのです。これらを電磁波と言います。
 宇宙観測で主に可視光に使われる反射望遠鏡。17世紀にニュートンにより発明されて以来、大型化により遠く微弱な光を見られるようになってきました。現在、口径8.2mのすばる望遠鏡をはじめ多数の口径8~11mの望遠鏡が稼働し、口径30mの反射望遠鏡の建設がハワイ島に計画されています。
 また、昔のフィルムカメラのような「写真乾板」から高感度大型「CCD」カメラへの移行が画期的に暗く遠い天体の撮影に貢献しました。
 今では衛星放送受信用として各家庭まで普及したパラボラアンテナも、宇宙観測用の電波望遠鏡として大口径化してきました。さらに、単独のパラボラアンテナには限界があるので、複数のパラボラを敷地内に配置する大口径化を行いました。ついにはブラックホールの撮影で有名になったように、地球上各地にある複数の電波望遠鏡をつないで地球規模の口径をもつ電波望遠鏡で観測できるようになりました。
昔から天文衛星が広範囲な電磁波を観測してきましたが、近年有名なハッブル宇宙望遠鏡や赤外線天文衛星スピッツァなど地球の周回軌道上の天文衛星が高性能の観測機器を使い鮮明な画像を捕らえ、遠くの星や銀河などが鮮明に映し出され解析できるようになりました。
 一方、全世界にある天文台は宇宙で重大な出来事が起こると、情報を交換しあい、予定の行動を中断してでも連携して天体の観測に参加するのだそうです。素晴らしい国際協調なのですね。
ハッブル宇宙望遠鏡による観測画像はこちらから。

< かぐら始動 >

岐阜山中で建設中のKAGRA 画像引用元:ウィキペディア

 東京大学、高エネルギー加速器研究機構と国立天文台は10月4日岐阜県飛騨市に建設中の重力波観測装置「かぐら」(KAGRA)が観測を開始したと発表しました。米国2基、欧州に次ぐ4基目の施設ではありますが、地上にある他の3基に比べ振動などのノイズに強く、重力波発生源の方角を精度よく捉え、発生源のより詳細な解明に貢献するものと期待されています。

『重力波ってなに?』

 2015年米国チームが米国重力波観測所LIGOによって初めて観測した重力波。天才物理学者アインシュタインの最後の宿題と呼ばれていました。その功績によって2017年のノーベル物理学賞が授与されました。
 皆さんはセルロイドの下敷きを髪の毛でこすると髪の毛や軽い紙やほこりが下敷きに引き寄せられてくっつく遊びをしたこと有りますよね。これは電気(静電気)の力です。砂場で遊んだ磁石が砂鉄や他の磁石とくっつくのは磁気の力(磁力)です。他に物体が引き寄せあう力には重力があります。
 リンゴが地面に落ちるのを見てアイザック・ニュートンが発見したと言われる「万有引力の法則」がありますが、これは物体同士の引き合う力(引力)は重力(重さ)に比例していることを言っています。
 引力は物体同士が引き合う力なのですが非常に弱いので地球のように重い星の表面に居ないと感じることはできません。地球を回っている月が離れて行かないのは、地球と月のように重い星同士が持っている重力によって生じる引力によって引き合っているからです。
 この重力は太陽と惑星、銀河の中の星の動き、銀河と銀河の動きにも広く及んでいます。通常は凪(な)いだ水面のように変化が無いのですが、太陽の数十倍の重さのブラックホール同士が衝突した様な場合、巨大な重力が空間内を激しく変動するので時間と空間が歪められてしまいます。その影響は水面に石を投げた時の波紋のように宇宙へ光の速度で広がっていきます。それが重力波です。
 重力波は物体が重いほど、早く動くほど大きくなります。

『どうやって測るの?』

 重力波観測装置「かぐら」は、長さ3kmの直交したトンネルに、真空にしたパイプを置き、その両端に鏡を向かい合わせた構造です。そこに強力なレーザー光を反射させ、光の到達する時間差を測ります。重力波が来ると空間が歪み、距離が微妙に変化します。真空中の光の速さは秒速約30万kmと常に一定なので、到達時間に差が生じるのです。時間差が起ったら重力波が観測できたことになります。但し空間が歪むと言っても水素原子1個の1億分の1以下という距離の差なので、鏡は-253℃まで冷却した人工サファイアを使い表面の揺らぎを極限まで減らす工夫がされています。
 いわば地下にある重力波の天体望遠鏡と言えるでしょう。従来の電磁波の望遠鏡と協力しあい、新しい天文学が始まっています。

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