入試で必要とされている能力を身につけるための学習法(国語編)

2008年の中学入試が実施されました。そこで、「国語」について今年度入試の傾向を簡単にご報告したうえで、入試で必要とされている能力とその能力を身につけるための学習法をお伝えしたいと思います。

【入試の傾向〜国語〜】

今年の入試は、ほぼ例年通りといってよいでしょう。
個々の学校において細かい変化はあったようですが、全体として「新作重視」「記述重視」の傾向は続いています。印象としては、受験テクニックだけでは通用しない、「考えさせる問題」が多くなったように感じます。中学入試の国語の文章は、なんといっても新刊からの出題が目立ちます。「受験生が見たことのない文章を読ませたい」という学校側の意向を反映しているのかもしれません。

物語では、等身大の少年少女を主人公にした文章が、今年も多く出題されました。その中でも圧倒的に多いのは、主人公が、さまざまな出来事や友人関係を通して、人間的に成長していく物語です。人の痛みがわかるようになった、友人を思いやることができるようになった、という内容が多くなっています。このメールマガジンでも出題される可能性が高い書籍としてご紹介した、重松清「小学五年生」(文藝春秋)は、聖光学院、学習院女子、城北、神奈川大付属など複数の学校で出題されました。

説明文では、やはり動物や植物の生態を説明した文章が多く出題されました。また、「新作重視」の傾向がありますから、テーマとしては、「言葉・マナーの乱れ」、「自然保護、環境問題」、「地球規模での貧富の格差」、「日本文化の見直し」、「いじめ問題」といった現在の社会問題をあつかった文章が多くなる傾向にあります。科学的な説明文や、対立する意見を比べて主張を展開するバランスのとれた文章が好まれています。

【入試で必要とされている能力とは】

中学入試では、基本的な「読み書き」能力が試されています。
ですから、大人が読めばすぐにわかってしまう問題も、中学入試では多く出題されます。大人は無意識のうちに身につけてしまっているけれど、子供たちにとってはまだ身につけていない能力が、中学入試では試されているといえます。

入試で必要とされている能力の第一は、「読む力」です。書いてあることが理解できているか、前後のつながりの中で話を整理できているか、ということが試されています。この「読む力」を試すために、傍線部の直前、直後に答えが書いてある問題が出題されます。大人にとっては「読めばわかるじゃないか」という問題です。しかし、子供たちは「読んでもわからない」のです。入試では、「読む力」=「きちんと書いてあることがわかる能力」が必要とされているのです。

入試で必要とされている能力の第二は、読み取ったことを「書く力」です。正しく日本語を表記できるか、頭の中に読み取ったことを表現できるか、ということが試されています。この点についても、大人であれば「わかっていることは書ける」「わからないことは書けない」ということになりますが、子供はそうではありません。「わかっていても書けない」のです。

ですから、「書く力」=「頭の中にあることをきちんと文章にする能力」が要求されているのです。中学入試の国語において、記述問題の量は年々増えています。多くの中学校で、200字ぐらいの記述問題を出題しています。ぜひとも、これからの勉強で「書く力」を伸ばしてください。

冒頭にも述べましたが、今年は「考えさせる問題」が多くなった印象があります。昨年までは「書くべきこと」は明確で、しっかり表現できれば正解できる問題が多かったのですが、今年は「書くべきこと」を自分で考えなければならない、という問題が増えたように感じます。たとえば、開成は、文章の量(読む量)をずいぶん減らして、自由作文を出題しています。文章を読み取ったうえで、さらに書くべきことを自分の経験から探さなければならい問題でした。こういった「考えさせる問題」は、単純な暗記ばかりしていたり、受験テクニックを追求していると解けない問題です。「自分で考える能力」を身につけ、本当の実力を養う必要があると思います。

【その能力を身につけるには】

■『読む力』を養う

「音読してから、その内容を確認する」という学習を反復することが、最も効果的です。問題文に「何が書いてあったの? どんなお話だった?」と問いかけることが大切です。「読書百遍意自ずから通ず」(難しい文章でも繰り返し読めばその意図はわかってくるという意味)ともいうように、繰り返し読むことが「読む力」に結びつくのです。

■『書く力』を養う

やみくもに記述問題を解くのはよくありません。「わからない」「できない」という印象ばかりになって、「記述は苦手」というイメージを植えつけてしまいます。そこで、答えを知っている状態で書いてみる練習が効果的です。「書くことができた」「記述問題を正解した」という成功体験を得ていくことがとても大切なのです。その際、気持ちを表す言葉(「うしろめたい」、「気が晴れる」など)を覚え、使えるようにすることで、「書く力」を身につけることができるでしょう。

■『考える力』を養う

受験勉強だけでなく、多くの経験をすることが大切だと思います。友達とけんかをしたり、豊かな自然とふれあうなど、人格的に成長できる経験を通して、自分で考える力がつくと考えます。この経験は、実際の経験に限りません。読書の中での経験も重要です。多くの本を読むことで、複数の人生を学び、考える力を得ることができます。以上です。

入試まであと1年を切りました。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」といいます。「敵=入試」が要求している能力を知り、そのなかで自分に足りない能力を見つけ、訓練することで、ぜひ効果的な勉強をしてください。

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