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今回は、なかなか原理や仕組みを理解しにくい二つの分野に取り組んで見ましょう。いずれも「一応解ける」「解法は知っている」というものの、本当に「理解」するところまでは至っていない受験生が多い分野です。
A、B、C、D、E、Fの6人の生徒がいます。この中から掃除当番、給食当番、飼育当番をそれぞれ一人ずつ選びます。選び方は全部で何通りありますか。
基本的な、そして典型的な場合の数の一行問題です。解き方としては「樹形図(ツリー)」を描く人と「積の法則(要するに掛け算)」を使う人とに二分されますが、効率よく解けるのはもちろん「積の法則」のほうです。しかし、この積の法則について、「どういう式にすればいいのかわからない」「なぜそういう式になるのかわからない」という受験生はたくさんいます。そこで、この「どうしてこういう式になるのか」をじっくり考えて見ましょう。
まず、頭の中で大きなスポーツイベントの組み合わせ抽選会を思い浮かべてください。サッカーのワールドカップなどの組み合わせ抽選会です。あのときに、国の名前を書いた紙をくるくる巻きにして外からは読み取れないようにして、プラスチックのボール(ガチャガチャのようなもの)の中に入れて、それを透明な大きなガラスの容器(つぼのようなもの)に入れます。この方式を、積の方式でも使うのです。
それではまず掃除当番から決めましょう。つぼの中にはA〜Fの紙の入った6つのボールが入っていますから、掃除当番は6通り考えられます。そして、頭の中でつぼの中に片手を突っ込み、くるくるとかき回した後どれか一つのボールを取り出し、そのボールを開けて中からくるくる巻きにされた紙を取り出し、集まった報道陣に向けてその紙を示してみてください。そしてそのボールをつぼに戻さず、どこか脇に置いてください。「使用済みボール回収箱」でも用意しておくといいかもしれません。
続いて給食当番の抽選に入ります。この段階では5つのボールが入っているわけですから、給食当番の選び方は5通り考えられます。さあ、また頭の中でどれか一つボールを取り出し、 …報道陣に向けて紙を示し、そのボールをつぼに戻さずに「回収箱」にポイしてください。
最後に飼育当番です。この時点でつぼの中には4つのボールが入っているのですから、飼育当番の選び方は4通り考えられます。
これをまとめて、6(掃除当番)×5(給食当番)×4(飼育当番)=120通りと計算することができます。
カードが6枚あり、それぞれのカードには0〜5の数字がそれぞれ一つずつ書かれています。このうち3枚を並べて3桁の数字を作るとき、全部で何通りの数字が作れますか。
先ほどよりも少しだけ難しい問題です。そして、これが「納得して」解ければ、積の法則についての理解は十分と言えます。それではまた組み合わせ抽選会を始めましょう。
つぼの中には0から5までのす氏の書かれた6つのボールが…、ではありません。まず初めに百の位の数から抽選するわけですが、当然ながらここに「0」は当てはまりません。ですから、0のボールだけ横に置いておいて、1から5までの5個のボールが入っています。ですから百の位の数は5通り考えられます。では頭の中でつぼの中に片手を突っ込み、ぐるぐるとかき回してから1個を取り出し、それを報道陣に示し、回収箱にポイしてください。
続いて十の位です。この時点ではつぼには4つのボールが入っていますが、「横においておいた0のボール」をつぼに戻してから抽選することが大事です。ですから十の位の数はこれまた5通り考えられます。さあ、また頭の中でどれか一つボールを取り出し、 …報道陣に向けて紙を示し、そのボールをつぼに戻さずに「回収箱」にポイしてください。
最後に一の位の数を抽選します。当然、つぼには4つのボールが入っているわけですから、4通りが考えられます。
これをまとめて、5(百の位)×5(十の位)×4(一の位)=100通りと計算することができます。
ある仕事を、A君一人でやると24時間かかり、B君一人でやると16時間かかります。これをA君一人出始め、4時間たったところでB君も加わったところ、全体の3分の2を終えることができました。B君は何時間働きましたか。
仕事算の標準的な問題です。我々大人から見るとなんでもない問題なのですが、受験生たちは驚くほど自信を持てていないようです。大切なことは「手順を整理してあげる」ことです。私が示す手順は次の2つだけです。
まず準備として、A、Bそれぞれが1時間あたりどのくらいずつの仕事ができるのかを求めておきます。「全体を(1)とするか(48)とするか」という問題もあるのですが、ここでは「全体を(48)として」考えます。
それでは第一段階です。Aが4時間働きますが、これを掛け算の式で表します。1時間につき(2)ずつ仕事をした × 4時間働いた =(8)の仕事が終わった ⇒全体(48)のうち(8)が終わったので、あと(40)が残っている。(これが大事!)
次に第二段階です。AとBが?時間働きます。二人で働くので、一時間に付き(5)の仕事ができます。また、第一段階で(8)の仕事が終わっており、さらに第二段階を終えた時点で全体の3分の2(つまり(32))を終えるわけなので、第二段階では(24)の仕事をすることになります。これをまた掛け算の式で表します。
1時間につき(5)ずつ仕事をした × ?時間働いた = (24)の仕事が終わった ⇒ 24 ÷ 5 = 4.8時間かかった
A. 4.8時間
場合の数の「積の法則」は、原理を理解してしまえばかなり解き方の幅が広がります。つまずくたびに樹形図を書いている場合に比べれば、解答効率が格段にUPします。ぜひお子様にこの考え方を示し、理解を深めてください。また仕事算については、多くの場合「なんとなく」「パパッと」解いてしまい、本当の納得にまで至っていない場合が多いです。私が示したポイントのうち2の「それぞれの段階が終わるごとに、仕事の残量を書いておく」だけでも、かなり頭の中が整理されるものです。ほんの少しのアドバイスでずいぶん解きやすくなるものですので、ぜひご活用ください。
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