今年要注意の時事問題を過去問で演習する!

毎年この時期になりますと、塾の社会の授業では「時事問題」に注意するように、との指示が多く聞かれることでしょう。多くの中学校が入試問題を通じて、「日頃から身の回りで起きている出来事にどれだけ積極的に関心を持っているか」を確かめようとしているからです。その意味では「時事問題」が社会に限らず、理科においても重要な単元であることは今後も変わらないでしょう。

ところが、過去問題集で社会の「出題分野表」を見てみると、時事問題の欄に○がついている学校が意外に少ないことに気がつきます。それなのに、塾では「時事問題対策は不可欠!」と何度も言われている、この違いは何が原因なのでしょうか。

ひとつの答えとしては「時事問題が問題のベースになっている」ということが挙げられます。つまり、問題のテーマとしては環境問題や直近の選挙としながらも、中学校側が確かめたいことは、「社会全般に対する広い理解」にあるのです。例えば環境問題を主たる議題とするサミットが開かれたとして、その開催地を聞くだけならば「時事問題」の単元にしか入らないでしょう。それが出席する国の特徴などを問われれば「地理」になりますし、国政としての対応を問われれば「公民」になります。この結果、時事問題はむしろ「総合問題」と呼ぶに相応しいものとなり、出題分野表にも食い違いが生まれるのです。 このように「時事問題」は、時事的なテーマそのものの内容を問うよりも、問題の導入としての役割となることが多くあります。そうした問題を解く際には、導入からの問題内容の広がりに対応して、持っている社会の知識をいかにアウトプットするかがポイントになります。そうした問題には慣れが不可欠ですが、では、どのように対策すればよいでしょうか。

各出版社から販売される時事問題集もそうした点を十分に考慮しています。単なる用語集ではなく、生徒さんが各問題に深く理解できるような解説を充実させています。ですので、問題集を活用する際には、言葉だけを覚えるのではなく、その問題の背景・現状・影響を確実におさえるようにしましょう。もちろん問題集の解説をしっかり読むことからですが、テーマによっては生徒さんにとって「何が書いてあるのかさっぱりわからない!」といったものもあるでしょう。そうした際はお父さん、お母さんが説明してあげて下さい。時事問題については、生徒さんにとってお父さん、お母さんが一番の先生です。お子さんにわかりやすい言葉で、ゆっくりと説明してあげて下さい。

その上で、より総合的・実践的な問題演習としては、過去問演習をお薦めします。この時期になれば既に過去問演習は始めていて、社会も解き終わっている、という方々も多くいらっしゃるでしょう。ここで言う過去問演習は、生徒さんの志望校の問題を解くという取り組みではなく、「テーマ別に志望校以外の問題演習を取り入れる」といったことを指します。

学校ごとに出題傾向はありますので、受験しない学校の問題演習を数多く取り入れることは必ずしも効果的とは言えません。ただし、先にも触れました通り、時事問題対策には、内容に広がりのある問題を数多く演習することが必要になります。そうした広がりのある問題については、学校の偏差値や難易度はある程度度外視すべきでしょう。解いて正解することよりも、一度解いてみて、しっかり考えた後で解説をゆっくりと読み、時事的なテーマの持つ他分野への広がりを体感することが第一の目標です。

例えば今年は北京オリンピックが開催された年でした。前回アテネオリンピックが開催された2004年を踏まえた2005年度の各校の社会を見ますと、多くの学校がオリンピックをテーマとして問題を作成しています。以下にいくつかを挙げてみますと…

【1】開成中学 平成17年度・第1問

近代オリンピックの歴史についての文章から、開催年度に日本で起きた出来事を問うものや、各国と日本の関係を問うものなど「現代史」の内容を多く含んだ問題になっています。

【2】女子学院 平成17年度・第3問

開成のような大問としての出題ではなく、小問2問で開催地を問われています。問題全体の主旨は日本と世界の国々との関係」になっています。

【3】渋谷教育学園幕張 平成17年度・第2次・第3問

オリンピックとパラリンピックを題材にした文章から、「女性の社会進出、社会保障制度」まで出題される。テーマの広がりの典型とも言える問題です。オリンピックの開催を通してアテネの街が歴史的な変貌を遂げるくだりの文章は、まさに社会を通して世界を見ることの重要性が含まれており、ぜひとも取り組みたい問題のひとつと言えます。

【4】立教新座 平成17年度・第2回・第1問

オリンピック開催地の表から、各都市・各国の特徴や、日本との関係などを問う、やはり広がりを感じさせる問題です。ギリシャの通貨単位など、やや細かい点まで問われますが、問題全体の広がりの体感に集中しましょう。

以上に挙げた学校は一部でありますが、テーマを共通にする問題が多くあることが見て取ることができます。学校によって出題の仕方などは異なりますが、問題が他分野にまで広がりを持つことでは共通していると言えるでしょう。

その他、今年度注意すべき時事的テーマについて、これまでに出題している学校を以下に挙げてみます。時事的な内容ですから、過去に出された時とは国内外の情勢も異なりますので、変更点などには留意したうえで取り組んでみて下さい。

【食の安全】
  • 海城 平成18年度・第1回
  • 東京女学館 平成19年度・第2回・第1問
  • 東京学芸大学附属竹早 平成17年度・第4問
【石油価格の高騰】
  • 海城 平成19年度・第2回
  • 本郷 平成19年度・第1回・第3問
【地震】
  • 麻布 平成19年度
  • 海城 平成19年度・第1回
  • 東京学芸大学附属竹早 平成20年度・第1問
【ノーベル賞】
  • 慶應普通部 平成20年度・第1問
【環境サミット】
  • 女子学院 平成17年度・第2問

こうした広がりのある問題への実践的な取り組みが重要ですが、もちろん用語の意味など、時事的なテーマについての基本的な事項の暗記・定着は不可欠です。そうした演習の教材としては、先に触れました時事問題集が十分に活用できます。

すでに書店では日能研・学研から出されたものが発売されていますし、今週末から来週にかけては、サピックスと四谷大塚のものが発売になる予定です。こうした時事問題集ですが、できましたら2冊以上を持つことが効果的です。情報が異なることはありませんが、最新のニュースですので、取り上げ方に若干の違いが出ることも可能性としてあります。また、解説の充実度、見やすさなど様々な要素がありますので、ぜひお子さんと書店で、直接見て決めと良いでしょう。

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