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今年=平成22年度の開成3問一については、前編で解説しました。 後編では、さらに問三の記述問題についても解説しておきます。
問一の答えとなる「1 めでとう(ございます)」、「2 せこう(ございます)」、「3 さむう(ございます)」、「4 やぼう(ございます)」、「5 おおきゅう(ございます)」の中で、「2 せこう(ございます)」と「4 やぼう(ございます)」は、言葉のきまりとしては正しいのに、実際の会話で使うには、ふさわしくないものです。
そこで、問三です。「それはなぜふさわしくないのでしょうか。理由を考えて説明しなさい」。
まずは、開成志望の小6生であるM君の答案例を見てみましょう(=かなり頑張れました)。
<「せこい」と「やばい」は自分の相手のことをマイナス思考で考えたものなので、丁ねい語をつけると自分の相手のことを尊敬しているのかマイナス思考で考えているのかがわからないから>。
では、内容を検討してゆきます。
まず「自分の相手のこと」・「自分の相手」という部分は正確ではありません。たしかに、「あなたは せこい」とか「あなたは やばい」と言えば、「自分の相手のこと」を言っていることになります。けれども、例えば「日本の財政の未来は やばい」と言ったら、「自分の相手」以外の事柄について言っていることになります。
したがって、「自分の相手」という表現は、「話の対象」に直すと良いでしょう。
次に、「マイナス思考で考えたものなので、丁ねい語をつけると」ふさわしくない、というのは正しくありません。
例を挙げて、検討しましょう。
例えば「悲しい」・「寂しい」というのは、「マイナス思考で考えたもの」です。けれども、この「マイナス思考で考えたもの」に「ございます」をつけて、「悲しゅうございます」・「寂しゅうございます」という言い回しをしても、「ふさわしくない」言い回しではありません。
この例から判るように、「マイナス思考」だから、「丁ねい語をつけると」ふさわしくない、とは言えないのです。
では、どう直せばいいと皆さんは考えますか? ヒントをあげます。
「丁ねい」の反対は何ですか?反対のものを一緒にくっつけてしまうと、おかしくなってしまうのです。例えば「年老いている赤ちゃん」と言ったら、おかしいですよね。「赤ちゃん」は「幼い」ものですから、それと反対の「年老いた」をくっつけると、おかしいのです。
M君に「丁ねい」の反対は何ですか?」と質問したら、「乱暴」という答えが返ってきました。それを踏まえて書き直したのが、以下の答案例です。
<「せこい」と「やばい」は話の対象を乱暴に言う言葉である。しかし、丁ねい語をつけると話の対象について丁ねいな表し方をしているのか乱暴に言っているのかがわからなくなるから>。
ずいぶん良くなりました。しかし、読点(=「、」)を補った方が、読みやすくなるでしょう。それから、この文章の前半では「乱暴」—→「丁ねい」の順に言葉が出てきますから、後半でも「乱暴」—→「丁ねい」の順に言葉が出てくるように、入れ替えをした方がよいです。
それらの修正を加えて、書き直します。
<「せこい」と「やばい」は話の対象を乱暴に言う言葉である。しかし、丁ねい語をつけると、話の対象について乱暴に言っているのか、丁ねいな表し方をしているのか、がわからなくなるから>。
非常に良くなった、と皆さんも思うことでしょう。ただし、さらにもう少し考えてみましょう。たしかに「やばい」という言葉は少し乱暴な感じがします。しかし、「せこい」の方は必ずしも乱暴とまでは言えないような感じがします。
そこで、もう1度、皆さんにヒントの質問をします。「丁ねい」の反対は何ですか?[「乱暴」という以外に、答えを考えて下さい。]
「丁ねい」な言葉遣いというのは、「上品」な印象を受けますよね。すると、「丁ねい」の反対は「下品」と言うこともできるでしょう。
そこで、それを踏まえて、さらに答案例を直します。
<「せこい」と「やばい」は話の対象を下品に言う言葉である。しかし、丁ねい語をつけると、話の対象について下品に言っているのか、丁ねいな表し方をしているのか、がわからなくなるから>。
さらに、論理的に正反対の「上品」と「下品」という言葉を入れた方が、明快な文章になります。少し説明を加えて、以下のように直してみます。
<「せこい」と「やばい」は話の対象を下品に言う言葉である。しかし、丁ねい語は話の対象を上品に言う言葉である。そのため、丁ねい語をつけると、話の対象について下品に言っているのか、丁ねいな表し方をしているのか、がわからなくなるから>。
内容として、充分な答えになりました。
以上のように、小6生であるM君の書いた答案をもとにして、M君にヒントをあげながら、何度か書き直してもらって、ここまでの答えを作ることができました。ただし、この答えは(内容的にはとても良いのですが)、本番の解答欄へ記入するには、やや長過ぎるのです。[3問三の解答欄は2行だけです]。
そこで、上記の答えができ上がったあとで、M君に答案用紙のコピーを渡して、「この3問三の解答欄におさまるように答えを直して、実際に記入してごらん」と言いました。
そう言われてM君が書いたのが、以下の答えです。
<「せこい」と「やばい」は下品な言葉である。しかし、この下品である「せこい」や「やばい」に、上品な丁ねい語である「ございます」をつけると、下品なのか上品なのかわからなくなるから>。
これでM君の答案が完成しました。
開成のようなハイレベルな国語記述問題で、小学生がいきなり合格答案を書くことは、きわめて困難です。プロ家庭教師として筆者が開成受験生を指導するときには、何度もヒントをあげながら生徒に考えてもらい、徐々に内容と表現を直していって、最後に合格答案が完成するところまで持ち上げます。
今回のメールマガジンでは、今年=平成22年度3問三をサンプルに、その具体的過程をお見せしました。
開成を志望する受験生は、日常的に、言葉に対する感覚を磨いたり、物事をよく考えたりしながら、開成型の記述問題にも多く取り組んで下さい。
今年=平成22年度の開成では、’ビックリ箱問題’として「言葉のきまり」(=文法)が出題されました。
そこで、最後に、来年度以降の’ビックリ箱問題’を予想してみます。分野としては、中学入試ではあまり出題されない「詩・短歌・俳句」。そして、その場で考える「思考力」を試すために、二つのものを比較する視点が盛り込まれた問題です。
実は、この形式は、近年の開成中学や桜蔭中学の問題に類似した傾向であった「東京大学の国語の入試問題」において、昭和60年度に出題されていたものです。来年度=平成23年度以降に、開成や桜蔭などで出題されてくる可能性があります。
[ちなみに、筆者は、開成が初めて「経験したこと」を記述させる問題を出題した平成18年度2問二の形式を、予想して的中させました。平成18年度入試に向けての某塾での開成国語ゼミにおいて、昭和58年度の東京大学入試の「自己の体験」を交えての記述問題を扱ってありました]。
<次の俳句Aと詩Bを読んで、二つに共通する物の見方について、あなたの考えたこと・感じたことを、160字以上180字以内で記して下さい>。
俳句A
「五月雨や大河を前に家二軒」。
詩B
「広い広い宇宙。
その中にぼくがいる。
でも、宇宙の中のぼくは、
まるで〈大きな大きな熊さん〉の胃の中にいる、
〈一匹のビフィズス菌〉みたいだ」。
さぁ、皆さんはどんな答案を作りますか?
われわれ中学受験鉄人会のプロ家庭教師は、常に100%合格を胸に日々研鑽しております。ぜひ、大切なお子さんの合格の為にプロ家庭教師をご指名ください!
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