子どもの「好き」を「好き」で終わらせずに学力向上に結び付ける方法

学習院中等科の国語で出題される文章には特徴があります。平成24年度第1回の第2問には照明デザイナーの東海林弘靖の文章が、また同年度第2回の第2問には茶道家の千宗屋(そうおく)による茶道のたしなみについての文章が、平成22年度第1回の第2問には、将棋棋士の羽生喜治による将棋の戦法についての説明文が出されるなど、様々な分野で活躍する人物による多岐にわたるテーマの文章が出題されるのです。小学生が知らないような人物が、自分の属する分野について書いた文章が出題されるのは、学習院中等科に限ったことではありません。大人であれば、例えば千宗屋は知らなくても、茶道について多少のイメージは持っており、読んでいて「なるほど」と納得できるところはあります。それが小学生になると、そう簡単に理解ができるものではありません。

そうした文章に対するには、同じような、その道のプロが書いた文章にできる限り多く触れることが大きな効果を生むことは言うまでもありません。では、その具体的方法にはどのようなものがあるでしょうか。今回はその方法のいくつかを紹介します。ポイントは「子どもの好きを好きで終わらせない」ことです。

【雑誌という切り口】

以前にも2008年8月8日配信の「親御さんの趣味の雑誌も貴重な教材になります」で、雑誌の『Number』や『dancyu』などの大人が読む雑誌が、国語の読解力育成の題材になることを紹介しました。大人向けの雑誌の活用という趣旨では同じですが、今回は子どもの視点から題材となる雑誌を見つけることがポイントになります。

例えばお子さんが漫画の『ドラえもん』が好きだとします(嫌いなお子さんはいないと思いますが)。そこで、親御さんが「『ドラえもん』ばかり読んでいてはダメでしょう!」と叱るのではなく、その好きであるという気持ちを受験国語の対策につなげることを考えてはいかがでしょうか。雑誌の『pen』が別冊特集で「大人のための藤子・F・不二雄」という号を出しました。まだ発行されて間もないので、大きな書店では置いてありますし、バックナンバーで購入することもできます。その内容は、『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』などの作者、藤子・F・不二雄の生涯を紹介するものから、作品論、さらには大学の教授が『ドラえもん』のタイムトラベルを科学的に分析するといった、学問として作品をとらえるものまで、様々なテーマに溢れています。こうした文章に触れることで、ただ「『ドラえもん』は面白い」という観点から、ドラえもんがそうだったように、何にでも歴史や背景があり、また様々な視点でものを見ることの楽しさがあるのだ、とお子さんにとっては新しい発見をすることができます。そうしたプロセスを通して、お子さんの視野は大きく広がり、一歩深く物事を考える習慣にもつながる効果が望めます。

またお子さんが野球好きであれば、例えばメジャーリーグを扱う雑誌には、「スカウティングレポート」といった選手を分析するコーナーがあります。こうした文章には、例えば「見違えるような安定感」や「屈指の」「他の追随を許さない」といった、説明文に出てきてもおかしくないような語彙が満載です。入り口は野球でも、語彙増加のテキストとして活用することができるのです。

また、女子のお子さんで嵐のファンであれば、『美術手帖』という雑誌を活用することができます。嵐のリーダーである大野智がグラフィックや立体表現などの芸術活動をしており、現代美術家の奈良美智(よしとも)と交流があることは、先日の24時間テレビでコラボTシャツを作ったことからも有名ですが、大野智と奈良美智の対談が『美術手帖』の「奈良美智」の特集号に掲載されています。対談やインタビューは口語文体にはなりますが、自分の仕事にかける思いなどがより強く表現されることもあり、目にしたお子さんにとっては大いに刺激になり、そこでなければ得られない語彙もあります。まして大好きな嵐のリーダーです。「あの大野君がこんなこと言ってる!」というきっかけがあるだけでも、お子さんが文章内容を吸収する勢いは一気に増します。そこから他のページも読み進めたくなるといった気持ちにもなるでしょう。大人向けの芸術雑誌ですので、お子さんには見せたくない内容もあるかもしれません。そうしたところは省けば、お子さんの知的好奇心を喚起させながら説明文読解対策を進められる教材として活用することができます。

ここで大事なのは、こうした雑誌をただお子さんに読ませて終わるのではなく、その後に親子の会話を持つことです。例えば「どんなことが書いてあった?大野君は何て言ってた?」と再現させてもよいですし、「言葉の意味はわかった?大人向けだから難しかったんじゃない?」と聞いてみて下さい。国語のテストでわからなかった語句があった時には、そのことに全く触れないお子さんでも、ドラえもんや大野君のことであれば、素直に親御さんにわからないことを質問する気持ちになることがあります。お子さんの疑問に対する気持ちを素直にさせる効果もあるのです。

【人物という切り口】

文章からは離れますが、その道を極めた人物の生き様や言葉に触れるのは雑誌や書籍に限りません。人気番組のTBSの『情熱大陸』やテレビ東京の『ソロモン流』、先日最終回を迎えましたがNHKの『プロフェッショナル・仕事の流儀』(以下『プロフェッショナル』)も教材としての活用価値は大きいです。例えば漫画好きのお子さんであれば、『プロフェッショナル』で「バガボンド」の作家、井上雄彦を取り上げた回を見せてもよいでしょう。またジブリのファンであれば、やはり『プロフェッショナル』で宮崎駿を取り上げた回もあります。これらはDVDでレンタルにもなっていますので、借りて見ることができます。そこには作品の製作に取り組む者ならではの葛藤や苦しみが描かれています。そうした人物だからこそ発することのできる言葉も溢れています。ただ楽しく見ていた『となりのトトロ』だけれど、それができるまではこんな苦労があったんだ、とお子さんが感じるだけでも視野が広がる効果もあるでしょう。リラックスした状態だからこそ吸収できる人物や物事のありさまは、より深くお子さんの心に刻まれます。

今回紹介した題材は、すべてお子さんの「好き」から始まっています。その「好き」を受験の弊害として抑えるのではなく、むしろ生徒さんの力を伸ばす題材として活用してみてはいかがでしょうか。多くの時間を割く必要はありません。特に6年生は時間がありませんので、ほんの10分、15分でよいでしょう。それは気分転換にもなりますし、それ以上に受験対策をしての効果を大いに見込める時間になります。

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