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今年も入試シーズンが終了しました。今年度の入試問題も、ここ数年の易化傾向が継続された印象を受けますが、これは「大人の目」からみて奇問・難問の出題がほとんど見られなくなったと感じるだけで、「受験生の目」からみると、かえって難しく感じているかもしれません。
そこで今回は、今年度の入試問題から2題引用し、塾教材の反復学習では対応できない、中学校が求めている視点をご紹介します。
まず、雙葉中学 大問[5]です。 『海外旅行に行きました。13万円の所持金を、できるだけドルに換えて、残りは円のまま持っていました。最初に250ドルを使いました。次に1000ドルをユーロに換えると、ちょうど768ユーロでした。540ユーロを使い、使わなかったドルもユーロも円に換えると、残りの所持金は全部で47284円でした。1ユーロは何円でしたか。お金を交換するときの比率は、旅行中は変わりません。また、交換の手数料は考えません。割り切れないときは小数第1位を四捨五入しましょう。(式と計算と答え)』
実は私も「あれ、円ドルのレートが無い」と思いましたが、必要なかったのですね。1000ドル=768ユーロより、250ドル=192ユーロと変換すると、使ったお金が732ユーロ=82716円とわかります。
よって、82716÷732=113円となります。
解法暗記型の学習をしてきた受験生は状況が把握できず、「このようなときは、まず円をドルに換えるのだ」という、これまでに学習経験のある問題の出発点で立ち止まってしまったのではないでしょうか。
次に、桜蔭中学 大問Ⅱ
『異なる4つの整数があり、小さい順にA、B、C、Dとします。これらから2つずつとってかけあわせた数を小さい順に並べると108、126、162、168、216、252となります。このとき、4つの整数A、B、C、Dを求めなさい。』
こちらの問題は典型題に分類してもよい程度で、A×B=108とA×C=126より、Aは108と126の公約数。C×D=252とB×D=216より、Dは252と216の公約数。あとA<B<C<Dをまもると、 A=9、B=12、C=14、D=18となります。
実際にはA×D=162、B×C=168ですが、これはA、B、C、Dが確定しなくてはわからないことで、そもそも答えを求めるために必要のないことです。
これを理解できていれば数分で正解できますが、A×DとB×Cについてあれこれ考えてしまうと非常に時間を割いてしまう、あるいは過程を複雑にしてしまい不正解となってしまいます。
このように、受験生が「見たことがある」問題を少し加工して、「何が問われているのか、これまで学習してきた内容のどの知識を活用すればよいか」という、本質を見抜く力を問う出題が増加しています。本質を見抜く力とは、根本的な理屈の理解とお考えいただくとよいと思います。
例えば、入試問題では「数の性質」に分類される数的感覚を問う出題が多く見られます(先にご紹介した桜蔭中学の問題もそうですね。)が、4年生から学習し続けている公約数・最大公約数・公倍数・最小公倍数の意味をしっかり理解できているでしょうか。
一例を挙げますと、『7/10(10分の7)と14/15(15分の14)のどちらにかけても答えが整数となる分数の中で、最も小さい分数はいくつですか』という問題で、分子は10と15の最小公倍数、分母は7と14の最大公約数となりますが、これをスムーズに解答できるかが一つの目安です。
数の性質の問題では、「最大公約数でまちがえたから最小公倍数だ」と訂正して復習を終わってしまうケースが多いのですが、なぜ最大公約数なのか、あるいは最小公倍数なのか、理屈をしっかり理解してください。
大手塾のマンスリーテストやカリテ、週例テストをはじめとする確認テストでは、テキストの数値換えが出題されますので、解き方を覚えてしまえば点数は取れます。そして点数が良ければ、その単元は理解できていると捉えてしまいますが、理屈が理解できていないと、切り口を少し変えただけで問題の本質を見抜くことができないわけです。
これは入試問題に限ったことではなく、範囲の無い実力テストで「習っていない問題が出た」という印象を持ってしまうお子さんは、理屈を理解せず解法を暗記しているだけの恐れがあります。同じ問題を何度もくり返し学習するのではなく、学習した知識で解ける、問いかけ方の異なる問題を解いて、知識を活用できているか確認することが肝心です。
また、数的感覚を磨くという点では、割合の文章題を解くときに「とりあえず全体量を1とする」のではなく、解きやすい数字に設定することも効果があります。
これも一例を挙げますと、『ある仕事をするのに、Aさんは10日、Bさんは15日かかります。2人で行うと何日かかりますか』という仕事算の問題で、全体を10と15の最小公倍数である30とするのです。
さらに具体性を持たせて、全体量を作品30個として考えると、1日にAさんは3個、Bさんは2個作るので、二人で30÷(3+2)=6日とできます。全体量を1とするよりもイメージを持ちやすく、解き進める過程も理解しやすくなります。
また、常に「考えやすい数値」を意識することで公倍数を見つける力がアップするわけですが、副産物として計算中の通分・約分のスピードも各段にアップします。
学習する際に「どうやって解くんだっけ」と解法を丸ごと引っ張り出してくるのではなく、「どうしてこの式を立てるのか」考えながら解くことが、本質的な理解につながります。家庭学習量が増え、問題に追われる毎日ですが、だからこそ学習の質を高めることが大切です。
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