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2014年度中学入試の社会の問題を見ていると、世界の中で生きるとはどういうことか、と受験生に問いかけているような問題が多くありました。ここで言う、世界の中で生きる、という言葉の中には、海外の国々を知ることの他に、日本の姿を知ることも含まれます。自分達が住む日本のことを知らなければ真の国際化とは言えない、とよく言われますが、今年の中学入試の問題にもそのようなメッセージが込められているものが多く見られました。
ここでは2014年度入試の社会の問題からいくつかをご紹介しながら、中学入試で求められる国際的な視点について考えてみます。
問題Ⅱの文章は、「2013年4月24日、( A )の首都郊外でビルが崩落する事故が起きました」という書き出しから始まります。その後に続く繊維産業に関する文章を参考にしながら、この空欄( A )に入る国名を選択肢から選ばせる問題があります。大きなニュースになりましたので、空欄にバングラデシュが入ることは、大人であれば常識の範囲として答えられるかもしれませんが、中学受験生のどれほどが正解できたでしょうか。最難関校を志望するには、このレベルの時事問題はしっかり把握しておかなければならないということになります。
この問題のテーマは繊維産業の歴史と、いたってスタンダードですが、バングラデシュのビル崩壊事故から文章が始まり、同様の悲惨な事故が繊維産業の歴史の中で繰り返されてきたとして、本題を進めてゆくという構成は非常に読みやすく、この文章をしっかり読むことで、テーマに関する知識も大いに増えます。桜蔭を志望する生徒さん以外にもぜひ取り組んでほしい問題です。
市川中の第3問は、日本よりも面積の大きい国について説明した10個の文章を題材に、国名を答える問題や、記述問題などで構成されています。その中でインドについて、「近年IT産業の発展がめざましい理由は何ですか。IT産業の中心であるアメリカ合衆国との位置関係をふまえ、具体的に説明しなさい」という問題があります。同様の出題が淑徳与野でもありました。「アメリカの消費者のためのコールセンターがインドに置かれた理由を2つあげて説明しなさい」という問題です。淑徳与野の問題には別の資料文があり、その中で「時差を利用して」との表現がありますので、これをヒントにすることができますが、2つの理由を正確に記すことは容易ではありません。インドがかつてイギリスの植民地であったことから英語を話せる人材が多いことが書けたとしても、アメリカとの時差が12時間であるという位置関係をふまえ、アメリカの夜にインドに仕事を依頼すると、同時刻のインドでは朝にそれを受けて、その日のインドでの夜の時間、つまりアメリカの翌日の朝までには仕事を完成させることができるという利点があることを、わかりやすく説明できる受験生は、かなり限られるのではないでしょうか。
これらの問題で扱われている内容は、いずれも直接的に日本がかかわっているものではありません。中学受験で出題される世界地理が、貿易など、日本とのつながりが深い内容に限定される、ということがあてはまらなくなっていると言えます。
世界に関する時事問題では、他にも以下のような出題がありました。
第1問の問11で、以下の資料文が示されます。「2011年初頭に起きた民主化運動により、ムバラク大統領は辞任しました。しかし、2013年7月には、再びムバラク大統領支持派によるクーデターが発生しました。」問題でこの資料文が表す国の名前(エジプト・アラブ共和国)を問うかと思いきや、そうではなく、この国で使用されたことのある紙幣を4つの写真から選ばせる、という出題でした。正解の紙幣にはスフィンクスが描かれているのですが、エジプトとスフィンクスが結びつくかどうか、は難しいところです。
以下の資料文から、都市名を選ばせる問題です。「2013年7月、アメリカ合衆国ミシガン州のある大都市が財政破綻しました。この都市は、かつて大企業の本社が集まり、ある産業の世界的中心地として世界にその名を知られていました。」この問題では、ある産業が自動車産業であることは明かされていません。知識としてデトロイトが思い浮かばなくてはなりません。
いずれの時事問題も大きな話題になりましたので、普段からニュースを見ていれば、難なく正解できるものではありますが、開智の出題のように、さらにひとひねりがある問題が今後も出題される可能性は高いと言えるでしょう。 その他、桐朋中では1960年のチリ地震の震源を地図から選ばせる問題が出ていましたし、女子学院ではブラジルに関する問題が出ていました。チリではつい先日も巨大地震がありましたし、今年の6月にブラジルでサッカーのワールドカップが開催されることを考えると、来年度入試では南米大陸には注意が必要となるかもしれません。
世界を見る目という観点から、欠かせない問題があります。慶應普通部の問題です。
第3問は2013年9月に安倍首相を乗せた政府専用機が、G20サンクトペテルブルク・サミットと2020年のオリンピック開催地を決めるIOC(国際オリンピック委員会)総会に出席するために世界を駆け巡った、という文章から始まる問題です。問2、3は、政府専用機が東京国際空港からサンクトペテルブルクへ、サンクトペテルブルクからブエノスアイレスに向かう際の最短コースを、それぞれ地図上に書かれたコースから選ぶ問題です。メルカトル図法と最短コースの関連をしっかり理解できていなければ、手も足も出ません。
これらの問題に対応するのに必要なのは、日頃からニュースを注意深く見て、地図を手元に置いて都度確認をすること、親御さんが関連情報を知らせてあげること、は言うまでもありませんが、それだけでは正解できない問題もこれから出題されるかもしれません。
そこでひとつの対策として、「地球儀」を入手されることをぜひお勧めします。ニュースなどで、海外の国の名前を耳にしたら都度地球儀で確認をして、地球上での位置、日本との位置的関係などを見ておくのはいかがでしょう。意外に日本から近い、思ったより北に位置しているなど、新たな発見があるかもしれません。先程の慶應普通部の問題なども、地球儀があればとてもクリアーに理解することができます。地球儀は、高いものはかなりの額になりますが、中には自分で作るタイプのものもあり、その場合は多くが廉価です。地球儀を作り上げる作業を通じて、より世界地理への関心が高まるかもしれません。ぜひ一家に一台、地球儀を!
ここで視点を切り替えて、日本の文化・慣習に目を向けた問題を取り上げてみます。
第2問は、出雲大社で60年に一度の大遷宮が、伊勢神宮で20年に一度の式年遷宮が行われたことについての出題でした。大遷宮が今年の時事問題として出題されることまでは十分に予想されましたが、中等部では、「手水舎(ちょうずや)」での作法について出題してきたのです。一礼の後に右手で柄杓(ひしゃく)を取って手水をすくった後の過程を、並べ替えて答える、というもので、知らなければ解けないことはもちろんですが、その知識レベルがかなり高く、多くの受験生が苦戦したのではないでしょうか。
料理をテーマとした問題の中で、和食がユネスコの無形文化財に登録されたことを取り上げ、そこから一般的な和食の「一汁一菜(いちじゅういっさい)」の献立を配ぜんする場合の、正しい配ぜん方法を3つの図から選ばせるという問題です。普段の生活の中で、どれだけ鋭いアンテナを張り巡らせているかを問う意味で、極めて中学受験らしい問題と言えますが、正解できた受験生は決して多くはなかったのではないでしょうか。
料理については、渋谷教育渋谷で香川県の「讃岐三白(塩・佐藤・木綿)」についての問題が、早稲田実業では寿司を題材にして、濃口醤油の産地を問う問題が出されました。
これらの問題に対応するための特別なツールはなかなか存在しないでしょう。まさに普段の生活の中で、身の回りの事象に興味関心、探究心を持っているか、にかかってきます。手水の作法などは、初心者の人にもわかるように多くの手水舎で説明書きがあると思います。それを知るには、まずやってみることです。すぐに親御さんが説明をするのではなく、わからなければどこかに説明がないか探させてもよいでしょう。その過程で新たな発見をお子さんがするかもしれません。それは探究心を育てる大きなチャンスにもなります。
スマートフォンの普及で、大人達をはじめ多くの日本人が、日々毎刻うつむきながら歩いています。情報網の発達は素晴らしいことです。ただ、常にうつむいて視線を下げてばかりでは、見落としてしまうことも多くあります。社会に限らず他の科目につながる事象、例えば空に浮かぶ雲、お店の看板、見たことのないかたちの建物などなど…ほとんどお子さんの目線より上にあります。少なくとも受験生であるお子さん達には、ゲームや携帯に目を奪われず、胸を張って前を見て歩き、日々新たな発見をしてほしいと切に願います。
最後に今年の筑波大学附属駒場中の問題を紹介します。
第3問ですが、2011年の福島第1原発事故について真正面から取り組んだ問題です。何かしら政治的な訴えなどはなく、淡々と客観的に出題がなされています。問4には、現在行われている福島第1原発廃炉への工程表作業の手順を並べ替える問題が出されました。日本の現代史において福島第1原発事故は、細かな事実まで知ることを避けて通れない、極めて重要な事件です。筑駒を志望する生徒さん以外にもぜひ取り組んでほしい問題です。
以上のように、中学入試の社会では海外で起きた出来事、日本の古くからの慣習など、幅広い範囲から問題が出されます。縦軸に時代、横軸に地域として座標を作ったとして、軸の交点となる原点には自分を置き、様々な座標に目を向けることが国際的な視点を培う礎になるでしょう。ぜひ今回ご紹介した問題に限らず、様々な学校の問題をまず親御さんがご覧になってみて、中学校からのメッセージを受け止めてみてください。
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