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2014年6月12日、南米ブラジルのサンパウロで行われるブラジル対クロアチアの試合から、いよいよサッカー・ワールドカップ・ブラジル大会が始まります。オリンピックに並ぶ世界規模のスポーツの大会ということで、日本はもちろん世界各地の人々から注目を集めていますが、このサッカー・ワールドカップを中学受験・社会の時事問題としてとらえた場合、どのような出題がなされるのでしょうか。
今回は前回の2010年南アフリカ大会が開催された翌年2月の2011年度入試から、ワールドカップを題材とした社会の問題をいくつか取り上げ、そこで何が問われたのか、同じパターンが来年度入試で踏襲された場合、何に気をつけておく必要があるのかについて分析してみます。
学習院では、ワールドカップを題材としながら、幅広い範囲から出題がなされていました。まず日本がアジア地区予選を勝ち抜いたことから、同じく地区予選を突破した韓国・北朝鮮・オーストラリアを出題の対象としました。具体的には日本と韓国との領土問題についての記述問題、北朝鮮の核兵器開発問題から核拡散防止条約の内容やIAEAを答えさせる問題、日本とオーストラリアの二国間貿易の内容についての問題などが出されました。その後は同じく地区予選が開催されたヨーロッパからEUについての記号選択問題、開催国の南アフリカ共和国が抱える人種差別問題から、国民みな平等であることが書かれている日本国憲法についての問題、そこから発展して選挙について、と分野を問わず幅広い範囲からの出題になっています。
同じ傾向の出題が、大妻中の第1回第3問でも見られました。
この傾向を今回のワールドカップに当てはめて対策する場合には、以下の項目をおさえてく必要があります。
今回は日本以外に、イラン・韓国・オーストラリアが出場します。この中でイランについては、他2国と比べてお子さんには馴染みがないと思われますが、日本とイラン両国が歴史を通じて比較的友好な関係にあること、その理由ともなる1953年の日章丸事件がどのような内容なのか、イランが日本に対する世界第3位の石油供給国であることなどを確認しておきましょう。また、地図でイランの場所を確認しておくことも必要です。
開催国がブラジルであることからも、南米を広くとらえておきましょう。出場国(ブラジル・アルゼンチン・コロンビア・チリ・エクアドル・ウルグアイ)については念のため地図で場所を確認しておくと心強いです。特にコロンビアはグループリーグの対戦国(コロンビアについては後述します)ですし、チリは日本と同じく規模の大きい地震が多発している国として注意が必要です。
今回最も注意すべきテーマです。他を後回しにしてでもここだけはおさえておきましょう。恐らく塾でも情報が提供されると思われます。必ず復習して整理しておいてください。歴史的にも日本から多くの移民が渡った国で、距離は遠いですが深いつながりのある国です。ここでは最近ブラジルについて出題された例を紹介します。
「浅野中 平成21年度 第2問」
「田園調布学園中 平成21年度 第1回」
2008年がブラジル日本移民百周年にあたることから2009年度入試で出されました。どちらも情報量が多く、とても有効な教材になります。ぜひ見てみてください。
地理の問題として出されていました。まず開催国の南アフリカ共和国の首都付近を中心として描いた正距方位図法が大きく掲載されます。ここから日本をはじめ決勝トーナメントに出場した国々と南アフリカ共和国との位置関係について、時差を含めて出題が続きます。次いで日本と対戦した国々(オランダ・カメルーン・デンマーク・パラグアイ)の緯度・経度を示した表から考察する問題と、それらの国々の首都について、あてはまる雨温図を選ばせる問題になります。日本代表に選手を送ったJリーグのチームとそのホームタウン(横浜Fマリノス—横浜市など)を一覧にした表を示し、そこからホームタウンの市町村についての問題も出されていました。
同じ傾向の出題があった場合の注意点です。
まず、先に紹介しました「浅野中 平成21年度 第2問」では、日本を中心にした正距方位図法が掲載され、そこからブラジルのサンパウロの位置を答えさせる問題がありますので、ぜひ参考にしてください。日本から見てブラジルがほぼ地球の真裏にあると言われますが、首都のブラジリア(サンパウロではありません)の位置は「南緯15度、西経47度」です。東京を「北緯36度、東経140度」とすると、地球上での真裏は「南緯36度、西経40度」の地点となり、これはアルゼンチンの東沖になりますので、正確にはブラジルは日本の真裏とは言えません。両国の歴史的なつながりが深いために親愛の意味もこめて裏側と呼んでいる、との説もあります。また、日本とブラジルの時差は「−12時間」ですので、午前と午後を替えればよいことになります。
前回のパラグアイにあたる、決勝トーナメントの対戦国がわかりませんので、グループリーグの対戦国について、首都と位置を挙げると以下の通りになります。
日本の対戦国については、東洋英和女学院のB日程第4問で、オランダの風車が映る田園風景の写真から「干拓」が行われていることを答えさせる問題もありました。
これからワールドカップが始まるまで、メディアで各国の特徴は大量に流れてくると思われますが、日本の対戦国であるからといって厳しい目で見ずに、あくまで客観的な情報を手に入れるようにしてください。
ここではコロンビアについて少し触れておきます。
19世紀終わりまでスペインの植民地であったコロンビアは、独立後は内戦と政治不安が収まらない状態が続きましたが、経済成長は安定しており2013年度のGDPは世界30位、南米ではブラジル、アルゼンチンに次ぐ3位になります。コーヒー、エメラルド(産出量は世界市場の80%)、バラやカーネーションの産地として有名で、人口はブラジル、メキシコに続きラテンアメリカ3位になります。人口の95%以上がキリスト教徒で、公用語はスペイン語です。『百年の孤独』などで知られるコロンビア人作家のガブリエル・ガルシア=マルケスはノーベル文学賞を受賞しました。
城北埼玉の出題にならって、今回のワールドカップ代表に選ばれた選手(現段階での予備登録も含めた30名)が所属するJリーグのチームから、そのホームタウンをまとめてみました。
出題パターンはいくつか想定されますが、一例としてこの中で政令指定都市にあたるのは、「さいたま市・広島市・大阪市・堺市・川崎市・横浜市」となります。
この問題では、前回大会で優勝したスペインをテーマとして取り上げていました。日本との貿易上のつながりはその起源を15世紀にまでさかのぼりますので、出題する側にとって優勝国がスペインになったことは願ってもない結果だったのではないでしょうか。
問題ではスペインの歴史をひもとく文章が題材になっていますが、その中に日本との交流や、同時代の日本の様子(18世紀のスペイン継承戦争の際、日本では江戸の三大改革が行われていた、など)が説明されています。ひとつの国の歴史を題材にしながら、日本の歴史も交差させるという、構成の妙が感じられる問題です。ぜひ取り組んでみてください。
ただ、同じ傾向となると、まだ優勝国がわかっていませんので、何ともしようがありません。個人的な予想を示すことはできませんので、あくまで参考として、イギリス政府公認のブックメーカー社William Hillによる優勝オッズのベストテンを以下に紹介します。
出題する側としては、日本と開催国のブラジル以外では、3位のドイツが優勝となれば、歴史上日本と関連する事項が多くありますのでありがたいところでしょうか。
予想はあくまで予想、ワールドカップは毎回波乱ばかりおきますので、気にせず世界レベルのサッカー戦術・技術を楽しみながら、社会の勉強を進めましょう。
各国の詳しいデータを収集されたい際ですが、外務省のHPに「各国・地域情勢」というページがあります。客観的なデータが多く掲載されていますので、ぜひ活用してみてください。
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