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来年2015年は安土桃山時代に活躍した武将茶人・古田織部(ふるたおりべ:1544-1615)の没後400年にあたります。それを記念して、今年の12月30日(火)から2015年1月19日(月)までの期間、松屋銀座で『没後400年 古田織部展』が開催されます。
その大胆で斬新な美意識と造形性で、天下一の茶人のひとりとされる古田織部の生きた時代は織田信長、豊臣秀吉が天下統一を目指し、豪壮にして華麗な文化が花開いた時でした。
そこでこんな問題が考えられます。
「桃山文化に関する以下の問題に答えなさい。
今回は古田織部とその作品をテーマに、中学入試・歴史の観点から分析を進めてみます。
最初の問題の答えは(1)が狩野永徳(かのうえいとく)、(2)が姫路城(ひめじじょう)です。
天下統一を目指した織田信長、その意を継いだ豊臣秀吉ともに文化が国の建設にとって重要であることを知る人物であり、彼らの文化重視政策が桃山文化の礎となりました。そうして花開いた桃山文化は、スペイン・ポルトガルとの貿易(南蛮貿易)でもたらされた西欧の要素と、キリスト教的色彩を共に強く含んでおり、日本史上屈指のレベルの高さを誇る文化として評されることが多いです。
そんな時代を生きた古田織部は織田信長・豊臣秀吉・徳川家康らに仕えた大名にして茶人でもありました。織部が好んだ陶器は「織部焼」の名がつけられていて、この織部焼にも信長・秀吉の文化を国策とする意向が色濃く反映されているのです。織部焼をつくり出す窯(かま)は個人の窯ではなく、政府管理の窯であったと言われています。当時、日用品と茶の湯に用いられる陶器(茶陶)は同じ窯を使って焼き上げられるのですが、日用品が陶工個人の収入になるのに対し、茶陶はすべて最高権力者である織田信長の直轄管理の下にあったのです。信長がつくり出したこの管理システムは、そのまま豊臣秀吉に引き継がれました。
桃山文化を代表する工芸品である織部焼ですが、その作風は中国の影響を受けているとも言われています。織部焼の特徴のひとつである緑の色使い、まるで雫が滴ったようなその独特の緑が中国南部で作られた「華南三彩(かなんさんさい)」という陶磁器の影響を受けているという説があるのです。南蛮貿易が盛んに行われていた日本ですが、中国や東南アジアからも様々なかたちで文化的な影響がもたらされていました。織部焼の緑にもその現れが見られるのです。
ちなみに同じ緑でも織部焼と中国の華南三彩とでは違いがあり、華南三彩がムラのない均一な色使いがなされているのに対し、織部焼では釉薬(うわぐすり:陶磁器の表面に掛けて、装飾と水分の吸収を防ぐために用いられる)が流れたままの状態で焼き上げられるなど、釉薬の生み出す濃淡がそのまま残されているそうです。
釉薬が流れるという、中国では失敗とみなされることが、日本では偶発的に生まれた「美しい変化」として愛されている。織部焼からはそんな日本と中国の文化の違いを感じることができます。
2問目の答えはもちろん千利休(せんのりきゅう)です。室町時代の茶人である村田珠光(むらたじゅこう)らによって始められた「侘び茶(わびちゃ)」を大成したのが千利休です。侘び茶では禅(ぜん)の精神が取り入れられ、簡素で静寂であることが理念とされます。千利休を師事した弟子たちのうち、特に優秀な7人を「利休七哲(りきゅうしちてつ)」と呼び、古田織部もこの七哲に含まれます。ちなみにキリシタン大名として有名な高山右近(たかやまうこん)も七哲のひとりです。
千利休の教えを受けた古田織部ですが、この師匠と弟子がつくりだす世界観には違いがあります。例えば陶器を見ると、師匠の千利休の作風が黒を基調として装飾をそぎ落とした、静けさを感じさせるものであるのに対し、古田織部のそれは躍動感に満ちていて、それまでにない斬新なものが多かったようです。かの司馬遼太郎が「(古田織部は)世界の造形芸術史の中で、前衛精神をもった最初の人物ではないか」とまで評しています。
例えば織部の作品のひとつ「十文字」と呼ばれる茶碗は、大きさを縮めるために茶碗を十字に断ち切って、漆で改めて接着して完成されています。破調をあえて美として重宝した表現方法と言えるでしょう。
織部がつくり出した、まるで靴のようないびつな形の茶碗を見た商人が「へうげものなり」と書き残した記録があります。「へうげ」とは「ひょうきんな」や「おどけた」という意味です。この言葉に、織部がそれまでの茶の湯の美意識を覆し、新しい美をつくり出そうとしていることが表れています。
古田織部というそれまでにないタイプの芸術家を生み出した安土桃山時代そのものが、新しい価値観が次々と生み出された変革の時代であったことに気をつけておきましょう。
機会があれば『古田織部展』に足を運んで、その世界観を直に目にしてきてはいかがでしょうか。
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