入試で狙われそうな最近の時事ニュース(皆既月食とスピカ)

先日4月4日の夜に皆既月食が起こりました。夜桜と月食のコラボレーションが見られるかもしれないと、ニュースもにぎやかに報じていましたが、気象条件から今回の皆既月食を見られた地域は限られてしまいました。皆既月食は昨年10月8日にも見られ、その時にメルマガで月食のメカニズムについて解説しましたので、そちらもぜひ参考にされてください。

今回も皆既月食をテーマとしますが、前回と内容が重複しないように、少し別の視点から分析をしたいと思います。

そこでこんな問題が考えられます。

  • 「月がその向こう側にある星を隠す現象を『星食』や『掩蔽(えんぺい)』と言います。星食が見られる恒星の中で、春の夜に青白く輝くおとめ座の一等星の名前を答えなさい」
  • 「平安時代の末期、源氏と平氏の戦いのひとつ『水島の戦い』の最中に金環日食が起きたという記録があります。この戦いで源氏軍を率いた人物で、朝日将軍とも呼ばれた武将の名前を答えなさい」

今回は入試でも頻出の天文ショーのひとつ「月食」のニュースついて、中学受験の理科・社会の観点から分析したいと思います。

【星食】

第1問の答えは「スピカ」です。中学入試の理科でも青白く輝く恒星ということで出題されることがありますので注意しておいてください。ちなみにお子さんに、赤い星と青白い星とでは、表面温度はどちらが高いかも聞いてみてください。正解は青白い星です。色のイメージに惑わされないように気をつけましょう。

今回ニュースとなった月食をはじめ、日食や星食など天文では「食」というものがよく出てきます。この食にも違いがあるので、少し触れておきます。食は天体の位置関係から起こるものですが、そのパターンによって言い方が別にされることがあります。具体的には「通過」と「食」と「掩蔽(えんぺい)」です。通過の場合は、観測地から見て近い方に位置する天体の見かけの大きさが、遠い方の天体よりも極端に小さい時に使われます。具体的には地球から見た内惑星である水星と金星が太陽面を通過する場合があてはまります。

これに対して掩蔽は、近い方の天体が大きく見えて、遠い方の天体を完全に隠してしまう時に使われます。その点では、地球—月—太陽の位置関係となって、月が太陽を隠す日食は、厳密に言えば食ではなくて掩蔽であるとも言われています。では「食」とはどのような現象なのでしょうか。ある天体が別の天体の影に入ってしまうような現象が食と言われます。その点では、太陽—地球—月の位置関係で、月が地球の影に入る「月食」は純粋な食となります。中学受験の理科では掩蔽という言葉はほとんど使われず、月による太陽の掩蔽も「日食」とされていますので、あくまでも参考として踏まえておいてください。

おとめ座のスピカのように、月に恒星が隠される星食(ここでも掩蔽ではなくこちらを使います)は、すべての恒星で観測されるものではありません。月に隠されたことがわかる程に明るく光る一等星であること、さらには天球上での位置も重要なポイントになります。具体的に月による星食が観測され得るのは、スピカの他におうし座のアルデバラン、しし座のレグルス、そしてさそり座のアンタレスになります。夏の星座の代表格であるさそり座のアンタレスや、おうし座で最も明るい恒星であるアルデバランの名前は聞いたことがあるかと思いますので、レグルスについて少し補足します。レグルスはしし座の恒星の中で最も明るい恒星で、上記のアルデバラン・アンタレス・スピカの他、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のベテルギウスなどから成る「全天21」と呼ばれる21個の一等星のひとつですが、明るさでは21個の中で最も暗いとされています。天球上の太陽が通る道である黄道に最も近く位置する一等星であることから、月による星食が定期的に発生しています。また、航海位置の計測の基準にも使われています。

同じしし座では、スピカとうしかい座のアークトゥルスとで「春の大三角形」を形成するデネボラという恒星もありますが、レグルスの名前もぜひ覚えておいてください。

【朝日将軍】

『源平盛衰記』という軍記物語の中で、水島の戦いの最中に金環日食が起きたという記録があります。初めて見る日食に恐れおののいた源氏軍は大混乱を起こし、一方で暦に精通していた平氏軍は日食が起こることを知っており、一気に戦いを有利に進めたという話が有名ですが、実は日食が起こる前に勝敗はほぼ決していたという説もあり、真偽の程はわからないところです。ただ、公家として暦を作成する仕事を行っていたために平氏が日食にも詳しかったというところは信憑性の高い話とされています。

第2問の答え、この戦いで源氏軍を率いていたのは「源義仲(よしなか)」です。木曽義仲というとすぐに浮かぶ方も多いでしょうか。源頼朝・義経兄弟の従兄弟である義仲は、源頼朝と共に平氏を討つべく挙兵しましたが、皇位継承問題への介入や、京都の治安回復に失敗したことなどがきっかっけとなり後白河上皇と対立してしまいます。後白河上皇は頼朝に義仲追討の命令を発し、義仲は義経らが率いる軍に敗れ、戦死を遂げてしまうのでした。従兄弟同士で戦い合うというこの時代ならではの悲運や、義仲に献身的に仕えた日本史上最強の女武将にして美貌の持ち主と伝えられる巴御前(ともえごぜん)の存在など、源義仲は様々な物語を生み出した人物なのです。朝日将軍という名称の由来には諸説ありますが、破竹の勢いで平氏を破り、京都まで攻め上がったことから、日の出のような勢いを持った将軍として、朝日将軍という俗称で呼ばれていたという説があります。

中学入試では決して出題頻度の高い人物ではないですが、源義仲という武将についてぜひ知っておいてください。

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