天才女流画家・上村松園 生誕140年

上村松園(うえむらしょうえん)という名前を聞いても、誰のことかピンと来ない方も多いかと思いますが、松園は日本の美術史上においてとても重要な位置を占める女流画家で、1948年には女性として初めて文化勲章を受章したほどの人物です。日本の美術切手に使われている作品もいくつかあります。そんな上村松園が生まれた1875年から今年で140年になります。

そこでこんな問題が考えられます。

  • 「上村松園の京都の実家は一時、刀剣商を営んでいましたが、明治9年に廃刀令(はいとうれい)が発令され、刀剣商はたたまなければならなくなりました。この廃刀令などで身分的特権を奪われた旧武士階級を何と呼びますか」
  • 「上村松園の作品『序の舞』は能を題材としています。室町時代に足利義満の保護を受けて能を大成させた親子の名前を漢字で答えなさい」

今回は天才と称された女流画家・上村松園を題材として、中学受験の社会の観点から分析を進めたいと思います。

【母への想い】

第1問の答えは「士族」です。王政復古により成立した明治政府は、大名、武士階級を廃止して華族、士族を創設しました。明治9年に発令された廃刀令では刀の所有は認められましたが、携帯することは禁止されました。当時、刀は武器としてよりも自らの職業身分を証明するものとしての意味合いが強かったので、その携帯を禁止されるということは士族の特権が否定されることを意味しました。この廃刀令を含む明治政府の四民平等政策に反発して、士族反乱を起こす者も現れます。その最大規模が1877年に勃発した西南戦争です。日本が大きく変わり行くこの時代については、詳しく理解をしておいてください。

上村松園は1875年(明治8年)に京都下京に生まれました。実家は刀剣商をたたんだ後に葉茶屋を営んでいましたが、父親は松園が生まれる二か月前に他界し、それからは母親が松園とその姉の二人の娘を女手ひとつで育て上げました。幼い頃から絵の才能を発揮していた松園ですが、明治の世の中では「女性は嫁に行って家を守ることが最上の美徳」とされていましたので、女性が絵画を習うのは非難中傷の対象になることでした。それでも松園が絵画の道を進むことができたのは、常に自分を理解し励まし続けてくれた母親の存在があったからこそだと、松園自身が語っています。松園は15歳でイギリス皇太子に絵を買い上げられるなど、順調に創作を続けますが、当時の絵画の世界は男性中心であったため、その活躍は大いに嫉妬を買い、陰湿な嫌がらせまで受けるようになります。

そんな境遇にあった松園が見出したのが「美人画」の世界でした。男性には描くことができない女性が本来持っている美しさを、女性である自分であるからこそ描くことができるという気概のもと、多くの美人画の名作を誕生させたのでした。

松園の作品には大きな二つの系統があると言われます。そのひとつは「母性」を主題とした作品です。『母子』『青眉』『夕暮』『晩秋』などがそれに該当しますが、ここではそのうち『母子』をご紹介します。

この作品は、松園を支え続けていた母親が他界した1934年に描かれました。幼い子供をあやす女性の美しく気高い表情に、亡き母親への松園の想いが感じられます。女性と抱かれる子供を描く柔らかい曲線と、奥に配された簾の直線のコントラスト、女性の着物を彩る浅緑の美しさなど、絵画としての美しさにも魅入られる傑作です。『夕暮』という作品では、日が傾いても針仕事を続ける女性が障子を開けて、夕陽の明かりの中で針に糸を通す様子が描かれています。いずれも母親への想いが託されているだけでなく、激動の時代にあっても変わることなく日々の営みを続ける女性の姿が描かれています。これこそ、松園が女性であったからこそ持ち得た視点であると考えることができます。

【能の世界】

第2問の答えは「観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)」です。漢字で正確に書けるようにしておいてください。能が大成したのは足利義満の時代ですが、その後に世を治めた人物にも能は愛好されていました。織田信長は『敦盛』という舞をとても気に入っており、信長自身が最期に舞ったとされる「人間五十年」は『敦盛』の中の一節になります。豊臣秀吉は大の能好きで、ただ鑑賞するだけでなく自ら演じることもあったそうです。入試に直結する情報ではありませんが、能がそれほど人々を引きつける伝統芸能であるということは知っておいてください。

上村松園も能に魅了された人物の一人でした。松園の作品の大きな系統のもう一つは、能を題材としているということです。『序の舞』『焔(ほのお)』『砧(きぬた)』などがそれに該当します。ここでは上村松園の代表作とも言われる『序の舞』をご紹介します。

この作品について松園は「何ものにも犯されない、女性のうちにひそむ強い意志」を表現したと語っています。作品に描かれた女性の、扇を持って前に突き出した右手、そして強く握りしめられた左手には、確かに強い意志というものが見てとれます。

まさに松園が絵画の道を進むうえで強くこだわっていた、女性でなければ描けない女性の美しい姿がここに表されていると言えます。今回は明治〜大正〜昭和と生きた稀代の天才女流画家・上村松園とその作品から、日本の歴史を探ってみました。ぜひ機会があれば、上村松園の作品を直に観てみてください。

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