入試で狙われそうな最近の時事ニュース(7月24日(金)は土用の丑の日ですが、「ナマズ重」をご存知ですか?)

今年の5月9日から31日まで、奈良県にあるウナギ料理の専門店で、『ウナ重』ならぬ『ナマズ重』がテスト販売されました。『ナマズ重』を食した人達からは、「言われなければウナギだと思うかもしれない」「あっさり目だけれど美味しい」などの声が上がったそうです。このウナギ味のナマズを生み出したのは、近畿大学水産経済学研究室のメンバーです。近畿大学といえば、クロマグロの完全養殖に成功したことでも有名です。同大学がナマズの研究を始めたのは2009年になりますが、そのきっかけはウナギに代わる魚を探す必要があったからでした。ウナギ(ニホンウナギ)は今、大変危機的な状況にあるのです。ウナギの現状を見ていくと、そこには様々な問題が存在していることがわかりますが、それらは中学受験でも十分に出題対象になり得るものです。

そこでこんな問題が考えられます。

  • 「ニホンウナギの幼生が産卵場から日本に向かう際、ある自然現象がそれを阻んでしまうことがあります。太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続くというこの現象を何といいますか」
  • 「海水域に生息する海水魚ではなく、ナマズのように川や湖に生息する魚類を何と呼びますか」

今回はウナギ味のナマズが作られたというニュースを題材として、中学受験の社会・理科の観点から分析を進めたいと思います。

【ニホンウナギの危機】

第1問の答えは「エルニーニョ現象」です。確実に答えられるようにしておきましょう。
第1問の文章を読んで、違和感を持たれた方もいるかと思いますが、ニホンウナギの産卵場は日本の沿岸ではないのです。ウナギは意外と謎の多い生物で、生まれる場所がどこなのかが解明されたのは最近のことでした。2011年6月に東京大学や九州大学などの研究チームが、ニホンウナギの受精卵の採取に成功しましたが、その場所はグアム島やマリアナ諸島の西側沖という、日本から3000km以上も離れた地域だったのです。

ニホンウナギの幼生であるレプトセファルスは通常であれば黒潮に運ばれる間に親ウナギと同じ形状の稚魚(シラスウナギ)へと変態し日本に到達します。ところがエルニーニョ現象が発生してしまうと、レプトセファルスの多くが北上することができず、南に流されて死滅してしまうと言われています。日本へ向かう幼生の減少が、ニホンウナギの生息を危機に追い込む要因のひとつになっているのです。

こうした海洋環境の変化以外にも、稚魚であるシラスウナギの乱獲、ニホンウナギが育つ川などの生息地の消失、海流汚染といった複数の要因が重なり合って、ニホンウナギを取り巻く環境は大変厳しくなりました。

そしてとうとう昨年、国際的な自然保護団体である国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリスト(絶滅の恐れがある野生生物のリスト)に、ニホンウナギが「絶滅危惧種」として加えられてしまいました。このレッドリストは対象の野生生物を、その危険度に応じてランク付けしています。絶滅危惧種とは、対策を打たなければ近い将来にその種が地球上から一頭残らず永久にいなくなってしまう野生生物のことなのですが、その中でも、ごく近い将来に危険性が極めて高い種をⅠA、近い将来に危険性がある種をⅠB、そして危険が増大している種をⅡ類とランク付けしています。ニホンウナギはこの中の絶滅危惧ⅠBに指定されましたが、同じカテゴリーにジャイアントパンダやトキがいるということから、いかに状況が危機的であるかがイメージされるのではないでしょうか。

ニホンウナギを守るための対策のひとつが、完全養殖の実用化ですが、コストが非常に高くなってしまうため、まだ研究段階にあります。
こうした厳しい状況の中で登場してきたのが、ナマズなのです。

【ナマズを食べる】

第2問の答えは「淡水魚(たんすいぎょ)」です。ナマズは淡水魚ですが、ウナギはどうでしょうか。産卵場が海ですから海水魚とも思えますが、生涯の大部分は川や池で過ごすことが多いので、淡水魚とも海水魚とも限定できず、結局、海と川を行き来する「通し回遊魚」と言われることが多いようです。

いずれにしてもナマズとウナギは生物学的に異なるのですが、ぬるっとした表皮や生息地、食べるものが似ていることから、近畿大学のグループは以前から、ウナギの代替食としてナマズに注目してきました。ナマズは臭いが強いと言われますが、水のきれいな場所で育ったナマズには臭みがまったくないそうです。エサと水を管理してナマズを養殖すれば、ウナギ並みになるという仮説のもとに、4年前の夏から本格的な研究が始められました。

味の決め手として着目されたのは、エサでした。通常、ナマズは淡水魚のエサで育てるため、淡泊な味になるのが普通です。そこで、近畿大学のグループは、ペレットと呼ばれる海水魚用の固形のエサが国内に豊富にあることに注目し、それをナマズのエサとして転用したところ、エサに油分が多く含まれることから、それを食したナマズは脂身が増えて、ウナギに近いこってりとした味になりました。今ではタンパク質の多いエサも混ぜることで、ウナギに似た弾力が出るように工夫が重ねられています。

こうした様々な工夫を施して生み出される「ウナギ味のナマズ」が普及した場合、以下のようなメリットが見こまれています。

  • ウナギでは実用化していない、卵から成魚という完全養殖が可能になる。
  • 養鰻業者の設備がそのまま使え、成長が早く、種苗単価が安いナマズだと、養殖コストはウナギの3分の1、市場価格は半額以下になる。
  • ウナギではできないような、刺し身、湯引き、天ぷらなどの多彩な調理が可能になる。

こうしたメリットがあればこそ、万が一将来、ニホンウナギの稚魚が禁漁になっても、鰻屋や養鰻業者を救うことができるようになるのです。

江戸時代に平賀源内が「土用の丑の日」を広めるまで、日本人はナマズをよく食べていたと言われています。来月7月24日(金)が土用の丑の日にあたりますが、丑の日にウナギを食べるという習慣自体は尊重しながらも、ウナギが置かれた危機的状況を鑑みれば、丑の日以外はナマズのかば焼きを楽しむということも必要になってくるかもしれません。ぜひこれからもニホンウナギの現状、ナマズの食用化に関するニュースには気をつけておいてください。

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