わが子を医学部に導く中学受験(医学部生はなぜ『コードブルー』を見て医者を志したのか)

プレジデントファミリーのムック『医学部進学大百科2018完全保存版』の、「密着!医学部生の素顔」を読んでいると、ドラマ『コードブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(以下『コードブルー』)を見て医者を志したという声が、複数見られます。なぜ『コードブルー』は、彼らの心を揺り動かしたのでしょう。

『コードブルー Season1』を見直しましたが、「自己投影」「理解と共感」「疑似体験と憧れ」というキーワードが浮かび上がってきました。

《5人の主人公への自己投影》

このドラマのメインキャストは研修医4名と看護師の1名からなりますが、彼らは終始、医療服姿のままで、私服姿はドラマ全編で全くと言ってよいほど見られません。そのことに象徴されるように、このドラマは病院内と治療の現場のみを舞台として、研修医たちの住居が映されることも、彼らが病院外で食事をする場面もありません。徹底して研修医たちが医療の現場で活動する姿のみを映し出しています。だからこそ若い世代が、医師である彼らの姿に未来の自分を明確に投影することができたのではないでしょうか。

《5人の主人公への理解と共感》

ドラマの主題歌、Mr.Childrenの「HANABI」の歌詞に「誰も皆悲しみを抱いている」とありますように、この物語の登場人物たちは、それぞれに深い悲しみを抱いています。その悲しみを知った周りの人物たちの深い優しさに満ちた言葉や行動が、数多く見られるのです。 例えば第7回で、愛する人物との別れにドクターヘリの中で涙する比嘉愛未が演じる冴島に対し、藍沢が彼女をひとり残して、ヘリのドアを強く閉めます。一見乱暴に見えるこの行為に、普段から強気でいる冴島に周りの目がない中で涙する場を与える優しさがにじみ出ているように、直接的ではないながら深い優しさに満ちた心のやりとりが、物語の随所で見られるのです。心情をじっくりと描き出しているからこそ、成長物語に厚みが増し、見ている側は人物への理解、共感をより深いものにするのだと思います。

《医師という仕事の疑似体験と憧れ》

第1回で、確かな腕と冷酷とも言える的確な判断力を持つ山下智久演じる藍沢が、新垣結衣演じる白石に、なぜフライトドクターの候補生に名乗り出たかを問われ、「誰よりも早く名医になるため」と答えます。ここでの藍沢にとって、患者を治療することは自らの症例を増やすための経験の場でしかありませんでした。
その藍沢が第10回で、柳葉敏郎演じる指導医の黒田に「名医とは何でしょうか」と問いかけます。救命医療の現場で様々な命のあり方を見てきた藍沢が、物語の最後に迷いを抱くのです。多くの物語は、はじめは迷いを抱いていた人物が次第に自らの答えに行き着く過程を描きますが、このドラマでは逆に、藍沢が確信から迷いへと、長い時間をかけて心を移ろわせていく様子を描ききっているのです。 勉強やスポーツのように、訓練と経験の積み重ねが成果に直結しやすい世界とは異なり、どんなに技術を磨いても太刀打ちできない壁が立ちふさがるのは、人の命というとてつもなく重く尊いものに常に対峙する医師という仕事だからこそと言えるでしょう。藍沢という卓越した医療技術を持つ者でさえも確信が崩されていく、その過程を見ることで、医療の世界に身を置くことの重さを感じ、医師への畏敬の念がより強く感じられるのではないでしょうか。
それほどに厳しい医師への道に対して、ドラマではひとつの答えが示唆されます。最終回で藍沢が黒田に対して「医者にできることは、患者の死ぬまでの時間をほんの少し延ばすことだけではないでしょうか」と問います。
それに対する黒田の答えが以下です。
「その時間が5分や1日かもしれない。それでも、そのわずかな時間が、時に人生の意味を変えることがある。そのために医者が腕を磨くということもあるんじゃないか」
この言葉に、人の命を救う医療という仕事への強い尊敬の意が込められています。
藍沢という人物が様々な困難にぶつかり、様々な人々との出会いを通して次第に成長していく様子を見ることで、医療という厳しい現場の疑似体験をすると同時に、命を救うという仕事に憧れを抱くのだと思います。

『コードブルー』は、人気の俳優たちが多数出ている話題性だけのドラマではありません。医療の道を目指す若者たちの成長を真摯な視点で描き出しているからこそ、多くの医学部生が医者を志すきっかけとなっているのだと思うのです。このような良質な作品との出会いは、まだ多くの経験を積むことができていないお子さん達にとって、未来の自分の青写真を描くきっかけとなり、それがこれからのキャリアプランの構築につながる効果が絶大です。ぜひお子さんと一緒に、このような良質な作品に触れ合い、感想をお話し合ってみてはいかがでしょうか。

中学受験鉄人会 入試対策室
室長 貝塚正輝
(筑波大学附属駒場中高卒)

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