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今月は、“はやぶさ2 リュウグウ到着”と“大阪北部地震”そして“南極の氷2.7兆トン減少”について取り上げてみましょう。
2014年12月H2Aロケット26号機で打ち上げられた探査機“はやぶさ2”が地球と火星の軌道の間を公転している小惑星“リュウグウ”に6月27日に到着しました。
約3億km離れたリュウグウに3年半かけ約32億km飛行し到着する快挙(かいきょ)を成し遂げたのです。
この飛行距離を直線にすると、太陽から天王星(約29億km)の先まで航行した距離に相当します。
強力なエンジンを搭載した探査機を作れば直接“リュウグウ”へ向かうことも可能ですが、重量は重くなり、開発期間や費用が膨大になります。そこで日本の技術陣は工夫を凝らし、信頼性が高く、省エネ、低価格で長距離飛行を達成する方法を編み出しました。初代“はやぶさ”の経験を基に、“はやぶさ2”は色々な改善工夫を取り入れて設計開発されました。
H2Aロケットによる打上後は、地球軌道を約1年かけ1周し、地球の重力を利用した加速方法の“スイングバイ”という方法でリュウグウを追いかける軌道に入りました。その後“イオンエンジン”による加速を2年半かけて行い“リュウグウ”の公転軌道を2周して到着したのです。結果的に太陽を約3周することとなり、32億kmとなったのです。
接近した“はやぶさ2”からの“リュウグウ”上空22kmの写真を見て、研究計画の専門家もそろばんの“玉”の様な形状は想像していなかったようです。宇宙航空研究開発機構JAXAによれば、“リュウグウ”の名称は、浦島太郎が玉手箱を竜宮城から持って帰るというお話と、小惑星からサンプルというお宝をいれたカプセルを持って帰ることとが重なりあうことが理由の一つです。また、この小惑星は水を含む岩石でできていると期待されているので、水を連想させる名前にしたかったことなどの理由で、公募の中からリュウグウを選び命名した様です。竜宮城が直径約900mの“そろばんの玉”とは…ビックリです。
なお、初代“はやぶさ”が試料採取した“イトカワ”はリュウグウと同じ地球と火星の間を公転している小惑星ですが、長い方向が535mの“ジャガイモ”の形状でしたね。
皆さんは「小惑星帯」は火星と木星の間にあると習っていますよね。ところが、まれに小惑星帯からはじき出され、地球に近づく「地球近傍小惑星」があり、“リュウグウ”も“イトカワ”もこのタイプなのです。
“はやぶさ2”は今年の秋から来年の5月にかけて3回の試料採取を行って、有機物や水を含んだ鉱物を持ち帰る予定です。有機物は蛋白質やアミノ酸など生命に必須の材料です。地球に有機物や水が存在する理由、生命のルーツをたどる上で貴重な資料が入手出来るものと期待されています。
最初の2回は“はやぶさ2”が“リュウグウ”に着陸し弾丸を打ち込んで舞い上がった砂や岩石を回収し、3回目は新開発の衝突装置から秒速2kmの弾丸を発射しクレータを作り、その後“はやぶさ2”がクレータに着陸し、太陽光や宇宙線で風化していない小惑星内部の岩石を採取します。内部の岩石は約46億年前の太陽系誕生当時の状態のままの物質が多く残っている「タイムカプセル」と思われていますので、重要な試料が入手されるものと期待されています。
初代の“はやぶさ”の失敗から数々の改良を加えられていますので、無事にミッションが進めば来年11月から12月にリュウグウを出発し2020年末に帰還する予定です。成功を期待していましょうね。
この度の大阪北部地震で被災された皆様、そのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。
6月18日に大阪府で発生したマグニチュードM6.1で最大震度6弱の地震は多くの死傷者と被害をもたらしました。この地震は全国に約2,000有ると言われている活断層の内、国内有数の活断層密集地帯「近畿三角地帯」で発生しました。
近畿三角地帯とは福井県の敦賀湾を頂点に、1995年阪神大震災の淡路島と三重県の伊勢湾を底辺とする三角地域で、中部、北陸地方と並ぶ活断層の集中する地域なのです。特に今回の震源域近くには、M7以上の地震が想定される3つの活断層、大都会の下を走る“上町断層帯”、“生駒(いこま)断層帯”と“有馬-高槻(たかつき)断層帯”の近くで起きました。ただし、内陸型地震の原因である活断層のずれは1000年から1万年と長いので、最も発生確率が高い上町断層帯でも30年以内の確率は2~3%だそうです。
今回の大阪北部地震を広範囲にみると新潟県から兵庫県南部にかけて延びる“新潟-神戸ひずみ集中帯”と呼ばれる地域で起こったとも言われています。1964年のM7.5新潟地震、2004年のM6.8の新潟中越地震、2014年M6.7長野県北部地震、1995年M7.3阪神大震災、これらがこの中で発生しています。
日本列島は北米プレートとユーラシアプレートという岩盤の上にあり、その下に太平洋プレートとフィリピン海プレートが潜り込んでいる構造上、日本列島にひずみが溜まるのは致し方ないことなのです。特にユーラシアプレートにフィリピン海プレートが潜り込んでいる海溝の“南海トラフ”で想定されている巨大地震への影響はないと専門家は見ていますが、東京大学古村教授は「南海トラフ巨大地震の様な海溝型地震の前には内陸型の地震が活発になる傾向がある」と言っています。
現在、政府の発表によれば、南海トラフを震源とするM8~M9の巨大地震が起こる確率は10年以内で30%、30年以内に70~80%、50年以内に90%以上なのだそうです。
6月26日に政府が発表した「全国地震動予測地図」では、30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率は、首都直下地震が心配されている首都圏で70%、千葉市で85%、横浜市で82%、北海道東部が昨年に比べて急上昇し釧路市で22ポイント増の69%、根室市で15ポイント増の78%となっています。
くれぐれも日頃の準備を万全にしておかなければいけませんね。
南極大陸を覆っている厚い雪原は、降り積もった雪が固まり圧縮されて氷床になったものです。陸地の上に有る氷なので“氷床”と呼ばれています。南極の氷をコップに浮かべると雪の結晶の間に閉じ込められていた空気が飛び出しプチプチと音を立てるのを聞いた人もいるでしょう。雪が圧縮されて氷となった証拠ですね。
そんな南極の氷が1992年から2017年の25年間で約2.7兆トン減少したとの研究結果が欧米などの国際研究チームから6月13日に発表されました。この溶け出した氷は地球全体の平均海面水位を8㎜上昇させる量に相当するそうです。
研究チームは人工衛星を使って氷床の厚さを長期間観測して量の変化を調べたので解ったのです。調査期間の初めの5年間では年間平均490億トンだったのが、後半の5年間では年間平均2190億トンと溶解が大幅に加速していることも解りました。
環境省の資料では、南極大陸の氷の厚みは最高で4000m、平均2450mもあります。メルカトル図法の世界地図では南極大陸は南端に引き伸ばされている形なので、面積比較が困難です。実際、大陸の大きさは約1,300万平方kmで、世界第2位の面積を誇るカナダ998.5万平方kmの約1.3倍の面積が有ります。つまり、地球にある氷のほとんどが南極にあるのです。従って全部の氷床が溶け出すと海水面が60m近く上昇してしまう程の量なのです。
現在問題としているグリーンランドの氷床や山岳氷河からの流出、温暖化に伴う海水の膨張などよりも、地球温暖化の傾向がこのまま続くと、海面上昇の一番の原因が南極の氷床の流失となってしまいます。その結果、世界の海岸線の形を一変させてしまうと今回の国際研究は温暖化対策の強力な推進をうながしています。
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