No.781 入試で狙われそうな今月の理科時事問題(リュウグウに金属塊(かい)撃ち込み成功、世界の異常気象、2018年の食中毒件数)

 今月は、“リュウグウに金属塊(かい)撃ち込み成功”と“世界の異常気象”そして“2018年の食中毒件数”について取り上げてみましょう。

<リュウグウに金属塊撃ち込み成功>

 宇宙航空研究開発機構JAXAは4月5日、探査機「はやぶさ2」が最難関とされた小惑星リュウグウのクレーター作製に挑み、約2kgの銅の塊(かたまり)を撃ち込むことに世界で初めて成功したと発表しました。
「はやぶさ2」から高度500mで分離された「衝突装置」が高度200m付近まで接近した時点で爆発し、銅塊を秒速2kmで撃ち込んで、最大直径10m深さ1mのクレーターを作る計画です。リュウグウの破片の衝突を回避するため「はやぶさ2」はリュウグウの裏側に移動しているので、定位置に戻ってクレーターを確認できるのは4月22日以降になるようです。

『なぜクレーターを作るの?』

 小惑星リュウグウの表面の石や砂は、太陽光や太陽風(電気を帯びた高温の粒子)、宇宙からの放射線の照射(しょうしゃ)を受けて風化しています。そのため、約46億年前の太陽系誕生当時の状態を留めていると思われている内部の石や砂を採取し、太陽系の成り立ちを明らかにすることが目的なのです。
 「はやぶさ2」の赤外線観測によって、含水鉱物(岩石に取り込まれた形で水が存在する鉱物)があることが確認されたリュウグウ。その岩石を持ち帰って調べることによって、生命誕生に不可欠な有機物や水の由来なども研究の進展が期待されています。

『小惑星の衝突回避ができる?』

 今回のクレーター作製技術は、小惑星から地球を守る対策にも期待されているそうです。地球に衝突する危険性のある、直径が数100m程度の小惑星は把握されているものだけで1000個以上あり、世界の専門機関が重い人工物を衝突させて軌道を変える方法を検討しています。今回のクレーター作製技術と正確な運用ノウハウが基本技術として貢献すると良いですね。

<世界の異常気象>

 世界気象機関WMOは3月28日に2018年の年次報告書を公表しました。その中で、異常気象による洪水や熱波などで6200万人近くが被害に遭い、200万人以上が移住を強いられており、世界の気候変動の影響が進んでいると指摘しています。

WMOの旗 ※画像引用元:ウィキペディア

『海面水位・海水温』

 WMO報告書によりますと、2017年に比べ、気温上昇に伴って海面水位が平均で3.7mm上昇し、過去最高を記録したそうです。
 一方、水深700mまでの海水温は、観測データが残っている1955年以降で2018年が最高値となり、水深2,000mまでの海水温も観測データがある2005年以降で最高値を記録したのだそうです。尚、両方の水深の温度も昨年最高値を更新していました。地球温暖化が海洋生物に与える影響も心配される内容となっています。

『熱波・森林火災』

 WMO報告書は、熱波や森林火災により、欧米や日本で1600人以上が死亡し、被害総額は米国だけで約2.6兆円になったとしています。
 東南アジアの記録的熱波では日本が最も被害を受けたとして、国内観測史上最高気温41.1度を記録した7月23日の埼玉県熊谷市が記載されているそうです。

『世界の二酸化炭素排出量』

 国際エネルギー機関IEAは3月26日、温室効果ガスの大半を占める二酸化炭素の2018年の排出量が、世界全体で331億4300万トンと過去最多となり、増加率も2017年比で1.7%上昇し、2013年以来の高さになったと発表しました。
 報告書はその理由について、排出量1位の中国、2位の米国両国の経済成長が継続していること、世界各地の熱波や寒波などの影響で冷暖房の需要が増加し、石油や天然ガスを大幅に消費したことをあげています。一方、日本、独、仏などでは二酸化炭素の排出量は減ったのだそうです。
 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの利用が進んでいるにもかかわらず、二酸化炭素の排出量が増えていることに対し、IEAは各国に対策の強化を呼びかけています。

『国内の二酸化炭素濃度』

 気象庁は、岩手県大船渡市三陸町と沖縄県の与那国島、小笠原諸島の南鳥島の3か所で気候変動の監視のため、二酸化炭素濃度の観測を続けているのだそうです。
 2018年の二酸化炭素の平均濃度は、大船渡市で412ppm、与那国島で411.7ppm、南鳥島で409.4ppmとなり、3か所とも2017年を上回り、観測史上最高となったそうです(ppmとは1,000,000分の1であり、1万分の1%のことです)。
 国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC(国連の学術機関)は、21世紀末の気温上昇を2度未満にするには、二酸化炭素の濃度を世界の平均で420ppm程度にすべきだとしているのですが、国内の観測点はあと5年程でIPCCの目安を超えてしまう可能性があるのだそうです。
 世界的に化石燃料の消費を抑制し、二酸化炭素削減の取り組みを一層促進して頂けることを願うばかりです。

<2018年の食中毒件数>

 厚生労働省が3月13日に公表した資料によると、2018年の食中毒の報告件数1,330件のうち、寄生虫アニサキスが468件となり、2位の病原菌(カンピロバクター)319件、3位のノロウィルス256件を抜いて1位になったとのことです。
 ただし、アニサキスは感染が広がらないので、患者数はノロウィルスの8,475人、カンピロバクターの1,995人を大きく下回った478人だったようです。

『アニサキスって何物?』

 アニサキスは回虫の仲間の線虫で、成虫はクジラやイルカなど海生哺乳類が最終宿主です。その腸の中に寄生して卵を産み、排出された卵がオキアミなどの甲殻類に捕食され、その腸内で成長して幼虫(アニサキス幼虫)になります。長さ2~3cm、幅は0.5~1mm位の、白色の少し太い糸のように見えます。

※画像引用元:ウィキペディア

『人間との係わりは?』

 アニサキス幼虫は私たちが食べる身近なサバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類の内臓が大好きで、寄生しています。
 ところが、寄生している魚介類が死んで内臓の鮮度が落ちると、アニサキス幼虫は内臓から筋肉(身)に移動します。冷凍ではない鮮魚として売られている魚の内臓や身をよく探してみると、白い糸のような幼虫が、小さくとぐろを巻いているのが見付けられるかも知れません。

『中毒症状は?』

 2018年の食中毒ではカツオ由来の報告が多かったようです。幼虫が生きたまま胃や腸に入ると内壁に潜り込むため、約3週間で排出される間に嘔吐(おうと)や激痛を起こすことが有ります。
 アニサキスを駆除する有効なお薬は未だ無いので、内視鏡検査で見付け、直接つまみ出す治療が行われています。

『予防策は?』

 アニサキスは、配合飼料で育てられる養殖魚ではほぼ居ないそうです。
 熱処理が有効で,加熱なら60℃で1分間、70℃以上ならすぐに死んでしまいます。また、冷凍ならマイナス20℃以下24時間以上で死んでしまうので、一度冷凍した魚介類であればリスクを回避できるでしょう。
 一方、酢漬け、しょう油浸け、わさび等では、アニサキスの幼虫は死にません。残念ながらシメサバも安全とは言えません。
 少しでもリスクを減らす方法は、
・魚介類の内臓を生で食べるのは避けること
・鮮度の良い魚を選び、できるだけ早く内臓を取って幼虫が身の部分(筋肉)へ移動するのを防ぐこと
・刺し身などを食べるときには、良く噛み砕く(かみくだく)こと

 「新鮮=安全」とは限りません。「天然物で冷凍なし、おまけに内臓付き」は避ける方が賢明でしょうね。

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