No.1606 競技かるたに魅了された人物たちの再生の物語!『オリオンは静かに詠う』村崎なぎこ 予想問題付き!

amazon『オリオンは静かに詠う』村崎なぎこ(小学館) 

 聖光学院中2024年度第2回入試で出典となった『ナカスイ!海なし県の水産高校』の著者・村崎なぎこ氏が、競技かるたの世界を舞台として描いた群像劇です。

 生まれながらに聴覚障害を持つ女子高生・咲季が、競技かるたと出会い、心の成長を果たして行く姿を軸に、咲季と関わる3人の人物それぞれが葛藤しながら、深い挫折から再生して行く姿が描かれています。

 ひとつの物語が、4人の人物それぞれの視点で語られる章を通して進行する構成で、伏線回収といった読書の醍醐味を楽しみながら、中学受験物語文の最重要テーマ「自己理解」の学習を進める機会を提供してくれる作品です。

 聴覚障害を持つ人物、両親が聴覚障害者である子ども(コーダ:Children Of Deaf Adults)、ろう学校の教師など、様々な境遇、立場にいる人物たちの姿を通して、聴覚障害を持つ人々と共に生きる社会の在り方を問うというテーマも含まれ、来年度入試では男子校、女子校を問わず、上位校から最難関校を中心に、多くの中学校の先生方が注目することが必至の一冊です。

【あらすじ】

≪主な登場人物≫

木花咲季(このはなさき:生まれながらに重度の聴覚障害を持つ女子高生。聴者の世界に強い引け目を感じていた。偶然立ち寄ったカフェ「アライン」の店長であるママンに誘われて、競技かるたを始める。)
日永カナ(ひながかな:両親が聴覚障害者であるコーダであり、両親の通訳を務める日々を送っていた。叔母であるママンを深く慕っている。咲季との出会いをきっかけとして、「アライン」で咲季と共に競技かるたをママンに教わるようになる。)
白田映美(しろたえみ:咲季のろう学校での担任の教師。かつてはママンのもとで競技かるたを習っていたが、ある出来事が原因で心を閉ざし、競技かるたの世界からも身を引いていた。咲季が試合に臨むことをきっかけとして、咲季の手話通訳を務めることを決める。)
中田陽子(なかたようこ:通称ママン。カナの母親である静香の姉で、カフェ「アライン」を経営しながら、競技かるたの読手でもある。過去には、妹の静香の世話に終始する母親からの愛情を一切感じられない日々を送っていた。)
松田南(まつだみなみ:警察官で「アライン」の常連客である男性。競技かるたを習ってはいるが、かるたを自分でやるより人がやっている姿を見る方が好きと語り、一向に技術が上達しないとママンに苦言を呈され続けている。)

 今回は、咲季やカナ、白田映美からママンと呼ばれる中田陽子の半生をつづった第三章の『さんさんと』を取り上げます。

★『さんさんと』(P.153~227)

≪あらすじ≫

 中田陽子は双子の妹・静香が二歳の時に感音性難聴と診断された時から、母親からの愛情を感じられないでいました。静香の身の回りの世話にすべてを捧げる母親からの視線すら受けられない状況は変えようがないと悟った陽子が、不満を表に出さずに、母親に愛されたいという気持ちを封じこめるために選んだ手段が、常に太陽のような笑顔でいることでした。

 そんな陽子はある時、競技かるたの試合を目にし、その世界に魅了されます。家で一人過ごすことの多かった陽子は競技かるたの練習に没頭し、みるみる実力を上げて行ったのです。

【中学受験的テーマ】

※テーマについては、メルマガ「中学受験の国語物語文が劇的にわかる7つのテーマ別読解のコツ」で詳しく説明していますので、ぜひご覧になりながら読み進めてください。

 この作品は重要テーマ「自己理解」が様々なかたちで描かれています。各章の主人公となる4人の人物たちはそれぞれに強い喪失感を味わい、そこから自らを再生させて行きます。その姿には、「自己理解」の中でも特に心情の変化が多く表される「挫折からの再生」、「苦境に向き合う」というテーマが色濃く反映されています。

 「挫折からの再生」、「苦境に向き合う」のどちらも、厳しい環境にいる人物が、他者の言葉や、新たな人物と出会い、また自信を取り戻すような出来事に遭遇することで、自分の中の可能性に気づき、心を強くするというプロセスが描かれるケースが多いですが、本作品でも人物との出会いや、心を支えてくれる言葉の数々が重要な役割を果たしています。

 人物たちがどのように再生のきっかけをつかんで行くのか、その過程を正確に読み解くことを強く意識して作品に臨みましょう。

 そして今回取り上げる、中田陽子(ママン)を主人公とした第三章では、妹の想いに気づくことで陽子が自分の考え方を変えて行く過程で、「他者理解を通して自己理解を深める」という入試最頻出パターンを見ることができます。

 主人公の陽子がなぜ本心を隠すようになったのか、何をきっかけとして妹の想いに気づき、自己理解を深められるようになったのかを、人物たちの言葉を通して的確に理解できるように、注意深く読み進めて行きましょう。

【出題が予想される箇所】
P.158の3行目からP.161の11行目&P.166の16行目からP.190の19行目

 前半は、双子の姉妹である静香が二歳の時に感音性難聴であることが発覚してから、母親の愛情がすべて静香に向けられていることを受け入れざるを得ないと陽子が認識している様子が、後半は高校三年生になった陽子が母親との衝突の後、自分のあるべき姿を見つけ出し、家族との関係を変えるきっかけをつかむ様子が描かれています。

 厳しい現実を受け止めなければならなかった陽子がどのような考え方に至ったのか、何をきっかけにその考え方を変化させ、そこで陽子がどのような心境になったのか、物語の流れにそって理解して行きましょう。

≪予想問題1≫
P.173の13行目から15行目に「何ひとつ文句を言わず、笑顔の『盾』をかざしていたアタシの唯一の反抗は、母と妹のコミュニケーション手段である『手話』を拒否することだった。」とありますが、陽子にとって『盾』とはどのようなものであったのか、60字以内で説明しなさい。
≪解答のポイント≫

 まずは問題該当部に至るまでの流れを確認しておきましょう。

 陽子は小学五年生の時に「百人一首かるた大会」を観覧した時から、競技かるたの世界に没頭していました。大会前の練習の最中、いきなり雹(ひょう)が降り出したため、競技かるたの先生が陽子の母親に迎えに来るように要請し、母親と静香が車でやって来たのですが、そこで手話をする母親と静香の姿を見た競技かるたの生徒たちが、陽子も手話ができるのかと問いかけました。それに対する陽子の反応が、問題該当部を含む以下の部分となります。

できないわけではない。でもアタシは頑なに手話を使わなかった。何ひとつ文句を言わず、笑顔の『盾』をかざしていたアタシの唯一の反抗は、母と妹のコミュニケーション手段である『手話』を拒否することだった。(P.173の13行目から15行目)

 そもそも「盾」とは、敵の攻撃から自分を守るものですので、「笑顔の『盾』」とは、笑顔によって自分を守っていること、と解釈することができます。それでは、なぜ笑顔が自分を守るものになるのか。解答のポイントはこの点を正確に読み解くことにあります。

 まず、陽子は何から自分を守っているのでしょうか。問題該当部の直後に、以下のような描写があります。

手話を使ったら、母と妹「ふたりの世界」の住人になることを意味する。母に振り向いてもらいたくて、ひとりで頑張ってきたアタシにとっては、自分自身を否定するようなものだった。(P.173の16行目から17行目)

 最後の「自分自身を否定する」という言葉からも、陽子が強い気持ちで、母と妹との間に距離を置こうとしていることがうかがえます。

 なぜ陽子が母と妹と交わろうとしないのか、そしてそのための手段がなぜ「笑顔」になるのでしょうか。それを解くカギは、【出題が予想される箇所】の前半に指定した、P.158の3行目からP.161の11行目の中に見ることができます。

 双子の妹の静香が感音性難聴と診断された時の、母親が母子手帳に想いをぶつける様子が、陽子の目を通して以下のように表されています。

ボールペンにものすごい筆圧をかけて書いたことがわかる慟哭の文字で、涙なのかにじんだ跡があった。
『私は人生のすべてをこの子に捧げる』
その決意は「この子たち」と複数形ではなかった。アタシは含まれていなかったのだ。(P.158の6行目から9行目)

 母親が聴力を失った静香を守ることにすべてを捧げ、母親からの愛情を感じられなかったことに陽子が不満を抑えきれないでいる様子は、アイスの「雪見だいふく」を静香と分け合う場面でも、以下のように表されています。

おいしかったけど、小さな不満が芽生え、大きくなっていった。
―分け合うのが前提の、二個セットはイヤだ。自分ひとりのためだけのアイスが欲しい。
アタシは妹の残り物しかもらえないのだ。アイスも、母親の愛情も。(P.159の19行目からP.160の2行目)

 母親からの愛情を欲しながらも、生活するうえで助けが必要な妹に母親の愛情のすべてが向いてしまう状況を変えることはできないことを陽子は分かっています。そこで陽子は、以下のように自分の振る舞い方を心に決めるのです。

小さいころ描いた風景画には、必ず太陽があった。目尻を下げ、口は大きく開いて笑っている擬人化した太陽だ。そして、自分自身もこの笑顔でいられるように鏡の前で練習した。いつも笑顔なら、母も喜んでくれるはずだ。(P.159の5行目から7行目)

 そんな陽子の想いはかなわず、笑顔をもってしても母親からの愛情を感じられなかったことが、続く以下の部分に表されています。

でも、母はアタシを見てくれない。その視線は常に静香のものだった。そして、母が外に出る時、その手はいつも静香につながれていた。アタシの手にあったのは本だけで、家で寂しさをまぎらわせるしかなかった。(P.159の8行目から10行目)

 そんな陽子が家庭内での孤独を決定的に感じてしまう出来事が、問題該当部の近くで表されています。
 
 急な雹のため、競技かるたの練習会場に母親が迎えに来た際に、母親が静香に手話で以下の内容を伝える様子を陽子は目にしてしまいます。

〈こんな豪雨の時に、車の運転なんかしたくないよ。バスで帰ってくればいいのに〉
稲妻が闇を切り裂いた。落雷の地響きが足から伝わって、体を抜けていく。(P.174の15行目から16行目)

 母親が迎えに来てくれると知った時に陽子は以下のような想い胸に抱きます。

期待していたんだ。お母さんは喜んでアタシを迎えに来てくれるって。(P.175の6行目)

 どんなに頭の中で無理とは考えていても、母親からの愛情がわずかにでも感じられることを期待していた陽子にとって、母親の態度が思いも寄らない衝撃的なものであったことが、雷の描写を通して強く伝わってきます。

 陽子が改めて家の中で孤立させられていると感じた様子が以下のように表されています。

静香が泣けば、母が抱きしめる。でも、自分はどこで安らげる?どこで涙を流せる?(P.175の1行目)

 耐えられずに部屋で大泣きしてしまったところに母親が訪れ、以下のような言葉を発します。

「陽子、なんで泣くのよ」(P.175の11行目)
(中略)
「これ以上、お母さんに気を遣わせないでよ。ただでさえ大変なんだから。家では静かに休みたいの。陽子は聴こえるんだし、ひとりで何でもできるでしょ」(P.175の16行目から17行目)

 陽子の心中を察すれば、あまりに無慈悲に聞こえる発言ですが、この言葉に陽子は以下のように返します。

アタシが自分を守る手段は、笑顔だ。それしか知らない。
顔をゆっくり上げ、涙を拭うと母親を振り返った。
「分かりました。もう何も言わない」
最高の笑顔を浮かべて、そう言った。(P.175の18行目からP.176の2行目)

 「最高の笑顔」というところに、母親からの愛情が注がれることを決して期待しない、自分は母親や静香とは別の世界で生きるしかない、という陽子の決意ともとれる強い気持ちがうかがえます。

 こうして見てくることで、陽子にとっての「盾」とは、何かしらの敵からの攻撃を防御するものではなく、母親から愛情を注がれることがないという変え難い現状を受け入れる自分を支えるもの、守るものであり、その手段が笑顔で日々を過ごすことであった、と考えることができます。

 この陽子の「笑顔の『盾』」の意味するところについて、先まで読み進めることでより深く知ることができます。

 ふとしたきっかけで訪れた喫茶店「ベラトリクス」でバイトを始めた陽子は、聴覚障害者の客を手話でもてなしたことで、オーナーから以下のように讃えられます。

「陽子ちゃんってさ、いろんな魅力があるよね」(P.184の4行目)
(中略)
オーナーは指折り数えながら、アタシの良いところを、いっぱい挙げていってくれた。(P.184の8行目)

 これまで自分を讃えてくれる言葉に遭ったことがなかった陽子は、以下のような想いを抱きます。

初めての気持ちだ。なんだろう、水中から浮き出たような、扉のない部屋から解放されたようなこの感情は。
努力して身につけた競技かるたの技や、心を押し殺して笑みを浮かべてきたこと以外にも、アタシには魅力があったんだ。(P.184の9行目から12行目)

 ここで陽子にある大きな変化が生まれます。

このままで、ありのままでいい。
盾にひびが入り、音を立てて崩れて地面に広がる。でも恐怖はなかった。すっきりした、晴れやかな心地だ。(P.184の13行目から15行目)

 オーナーの言葉を受けて、陽子の「盾」が壊れる様子が表されていますが、そのことに陽子が「晴れやかな心地」を感じていることから、ここで陽子の心が深い闇の中から解放されたと考えることができます。

 そしてポイントとなるのが、「このままで、ありのままでいい」という言葉。ここから「盾」は陽子の素の心を隠すものであったと読み取ることができるのです。

 その素の心とは、母親や静香との心の隔たりをなくしたい、というものであることが、バイト先から帰宅して、雹が降った夜から絶縁状態にいた母親に陽子が話しかける以下の部分からも理解することができます。

「……今日ね、バイト先に聴覚障害のお客様が来たんだよ。アタシが手話で話したら、すごく喜んでくれたんだ」
アタシの盾はもうない。素の顔を晒すのがちょっと気恥ずかしくて、下を見て頬を搔いた。(P.187の11行目から13行目)

 以上より、陽子にとって「笑顔の『盾』」は、素の心を隠して母親と静香とは別の世界で生きる自分を支えるためのものである、と読み取ることができます。

 ここでの「笑顔と盾」のような、一見相対するような印象を受ける組み合わせの持つ意味を読み解く際には、盾の持つ意味を陽子の置かれた境遇を踏まえて理解するように、その人物にとっての組み合わせの真意を深く探る意識を強く持つように心がけましょう。

≪予想問題1の解答例≫

 母親と静香の生きる世界と交わりたいという自分の正直な気持ちを隠し、孤立する自分を支えるための手段となるもの。(54字)

≪予想問題2≫
P.190の8行目に〈日食で空が真っ暗になる時、太陽の光に消されていた星が見えることがあるんだって〉とありますが、この言葉が暗示してる陽子の「変化」について、100字以内で詳しく説明しなさい。
≪解答のポイント≫

 問題該当部は、≪予想問題1≫で取り上げた、「笑顔の『盾』」が崩れ、素の自分を出せるようになった陽子と母親とのやりとりの後に続く部分に含まれます。

 陽子は妹の静香の前ではじめて手話を見せます。その姿に驚いた静香と陽子は以下のような会話を交わします。

〈お姉ちゃんは競技かるたに一生懸命で、手話を覚える気がないのかと思ってた。私と遊んでくれないしさ〉
〈だって、静香はお母さんといつも一緒じゃん〉
静香は苦笑いしながら首を横に振る。
〈遊びたいよ、そりゃ。毎日訓練で辛かったし〉(P.189の1行目から5行目)

 何気ない姉妹の会話のように見えますが、これも陽子が素の自分を出せるようになったからこそ交わされるようになったと考えられます。

 そして2人の会話を続ける中で、陽子が問題該当部にあるような「日食」の話を静香に伝えるのです。

 そもそもこの「日食」の話は、陽子がバイト先の喫茶店のオーナーから聞いたものでした。オーナーは客との会話の中で、1955年に起きた皆既時間7分8秒という伝説の皆既日食のエピソードを紹介し、以下のように話します。

「冬の星座だって、今の時期でも早起きすれば見えるわよ。太陽の光で消されても、確かに天を周ってるの。この皆既月食で七分間だけ夜が訪れ、黒い太陽の周りに一気に現れて消えた。素敵じゃない?」(P.179の9行目から11行目)

 これを聞いた陽子の心に、以下のような想いが生まれます。

自分は太陽のように家を照らそうと、無理していつも笑っていた。だけど、笑顔を消したら、何か見えてくるものもあるのだろうか、と。(P.180の4行目から5行目)

 この自らへの問いかけへの答えを陽子がつかみ始めている様子が、問題該当部から後の部分に表されています。

 陽子から「日食」の話を聞いた静香と陽子の会話の様子が以下のようにつづられています。

〈面白いね。引っかき絵みたい〉
〈なにそれ〉
〈若草ろう学校の幼稚部でよくやったんだ。画用紙にいろんな色のクレヨンを塗って、その上を全部黒で塗りつぶしたあと、竹串で引っかくの。すると、下にあるカラフルな色が見えてくる〉
〈アタシの幼稚園でも、やった!〉
ふたりの世界が交じり合う。静香は〈私、口語が得意じゃないから、今までお姉ちゃんとあまりおしゃべりできなかった。寂しかったんだよ〉と笑った。(P.190の9行目から15行目)

 最後の静香の言葉に、妹として姉と過ごす時間が持てなかったことに静香が寂しさを感じていたこと、それに陽子が気づかずにいたことが表されています。

 そして、これに続く陽子の心情を表した以下の部分に、この問題の重要な解答要素が含まれています。

ずっと、静香は聴こえない世界の住人でアタシは聴こえる世界の住人だと思ってた。もしかして、ふたりの世界は重なっていたんじゃなかろうか。皆既日食の星空のように。同じ空でも光の加減で見える姿は違うけど、「ひとつの宇宙」なのだ。(P.190の16行目から18行目)

 ≪予想問題1≫で取り上げたように、陽子は母親からの愛情がすべて静香に注がれることの寂しさ、不満を感じていながら、その本心を隠すために常に笑顔を顔に浮かべ、母親と静香とは住む世界が違う、と自分に言い聞かせることで、自分を支え続けてきました。

 そしてまるで皆既日食のように、家庭を照らす太陽と思っていた笑顔を消して、素の自分を晒すことで、これまで見えていなかった妹の静香の寂しさに気づくことができたのです。自分を隠す笑顔を封印することで、妹との心の距離を縮めるきっかけを得られたとも考えられます。

 ここでの皆既日食のように比喩として使われる事物が意味するところを正しく理解するために、その事物が物語の中でどのように説明されていたかをとらえ、人物の心情の変化とどのように関連しているのかを的確に把握するように意識しましょう。

≪予想問題2の解答例≫

 母親の愛情がすべて静香に向けられることへの寂しさを隠して無理に笑顔で振る舞っていたが、笑顔を消して素の自分を出すようにしたことで、静香の寂しさを知り、静香との心の距離を縮められるようになった。(96字)

【最後に】

 今回ご紹介した中田陽子(ママン)を主人公とした第三章『さんさんと』以外にも、聴覚障害を持つ木花咲季が競技かるたと出会い、自分の可能性を信じて心の成長を遂げて行く様子を描いた第一章『きらきらと』、ママンの姪でコーダである日永カナが、咲季との出会いをきっかけに競技かるたの道へと進み、両親との関係を変えて行く過程が描かれた第二章『ひらひらと』、そして咲季のろう学校の担任の教師であり、過去の出来事がきっかけで心を閉ざしていた白田映美が手話通訳として再生する姿を描いた第四章『しんしんと』と、どの章でも厳しい境遇に置かれたり、深い挫折を経験した人物たちが心を解放させ、再生して行く姿が描かれています。

 4人の人物たちが葛藤しながら自らの進む道を模索して行く過程をじっくりと見守ることは、重要テーマ「自己理解」を深く学習する貴重な機会となります。

 そして冒頭でも触れました通り、本作品は物語の進行が4人の人物それぞれの視点でつづられており、例えば第一章で出てきたエピソードが第四章で重要な役割を果たすなど、伏線回収のような物語のつながりを楽しむことができます。

 咲季、カナ、ママン、映美が、支え合い、それぞれに成長しながら、まるでタイトルにもあるオリオン座の星どうしのように美しくつながり合って行く過程に魅了されながら、クライマックスの競技かるた大会では、会場から4人の姿を見つめているような臨場感を味わうことができます。

 中学受験物語文の重要テーマを学習しながら、読書の楽しみを存分に満喫できるこの傑作を、多くの受験生の皆さんが読まれることを強く願っています。

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