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今月は、“南海トラフ地震時の事前避難”と“高致死率病原体を輸入”と“海底地図ロボコン準優勝”そして“高血圧の治療指針改定”について取り上げてみましょう。
南海トラフ巨大地震の想定震源域(2013年)
画像引用元:ウィキペディア
政府の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)は5月31日南海トラフ地震時の基本計画を改定し、東西に長い震源域の片方で大地震が起こった場合、もう一方の地域の住民に対して1週間の事前避難を求めることを新たに盛り込みました。起きていない地震に備えて避難する前例のない方針が示されたのです。
静岡県の駿河湾から大分県沖の日向灘にかけてユーラシアプレートにフィリピン海プレートが1年あたり数cm潜り込むことで長い海溝ができています。この海溝のことを南海トラフと言います。地震の想定震源域は静岡県から大分県にかけての陸と南海トラフとの間の広大な領域となります。
この領域では約100年から150年周期で繰り返し大地震が起こっていました。現時点では今後30年以内にM8~9の地震が起こる確率は70~80%、発生する津波の高さは最高で34mと推定されています。
5月31日に内閣府が中央防災会議に報告した南海トラフ地震の被害想定では、2012年の想定数字と比較し、次のように改善されていました。
「死者・行方不明者」 約 9万人少ない 23.1万人
「建物の全壊・全焼棟数」 約30万棟少ない209.4万棟
これは津波に対する避難意識の向上、避難場所の新設や建築物の耐震化の促進などが図られた成果であると評価されています。
南海トラフ地震の震源域は太平洋沿岸の東西に広がっているので、1854年の安政東海地震では東側の地震の32時間後に西側で安政南海地震が、1944年も東側の昭和東南海地震の2年後にM8級の昭和南海地震が西側で発生しました。
その為、気象庁がトラフ周辺でM8.0以上の地震が発生したことを確認すると、連続地震の可能性が高まっているとして、気象庁が「臨時情報(巨大地震警戒)」を出し、政府が「事前避難を呼び掛ける」こととなります。
避難の対象は
「津波からの避難が間に合わない住民」
「避難しきれない可能性のある高齢者」
などとされていますが、地域により状況が異なるため、自治体等の策定する防災計画で具体的に決まることになります。
マールブルグウィルス 画像引用元:ウィキペディア
厚生労働省と国立感染症研究所は5月30日に、致死率が高いエボラ出血熱などの生きた病原体を東京都武蔵村山市にある感染症研究所村山庁舎の施設で保管することを決め、周辺住民らが参加する協議会で説明しました。
2020年オリンピック・パラリンピックなどを機会に、海外の観光客の増加によって、国内で流行したことのない危険な感染症の患者が入国するリスクが高まってきています。航空機を使って短時間に世界中を行き来できる現代は、感染症の潜伏期間で本人も知らずに感染症を広めてしまう恐れがあります。疑いのある患者の発生に備え、生きた病原体による正確で迅速な検査が必須であり、病名がはっきりすれば適切な治療や社会的対策を早期に行うことが可能となります。そのために国内に生きた病原体を持っている必要があるのだそうです。
感染症法によると感染症は5段階に分類されています。皆さんがよく目にする感染症を例に挙げて示しますと、通常のインフルエンザ、はしか(麻疹)など最下位の第5類感染症、ヒトスジシマカ等の蚊が媒介するデング熱は第4類で、O157(腸管出血性大腸菌感染症)が第3類、結核、新型肺炎(SARS)、鳥インフルエンザが第2類、最も危険な第1類としては、一時アフリカで感染が拡大した致死率の高いエボラ出血熱などがあります。
今年も流行してニュースになっているはしか(麻疹)は第5類で最下位です。それでも、同室内に居るだけで空気感染する非常に感染力が強く、発熱、全身の発疹、咳などの症状が出るウィルスが原因の病気で、先進国でも1000人に1人の割合で亡くなる方がいるような怖い感染症なのです。
今年の夏ごろに輸入することが決まった病原体は、感染症法という法律で最も危険度が高い第1類感染症に分類され、いずれも致死率の高い「エボラ出血熱」「クリミア・コンゴ出血熱」「南米出血熱」「マールブルグ病」「ラッサ熱」の5種類です。
万一危険な病原体が漏れ出てしまうと大変なので、世界保健機関(WHO)による国際基準「バイオセイフティー・レベル」(BSL)が取扱う施設の基準として定められています。レベルは4段階あり、最も危険度が高い病原体を安全に取り扱える施設が「BSL4施設」なのです。世界的には欧米などに約60施設あり、武蔵村山市の施設は2015年にはBSL4の指定を受けていたのですが第1類以外の感染症の研究を行っていました。
施設は病原体が外に漏れないように気圧を低く保ち、テロリストの侵入を防ぐ身元確認、監視設備などが整備されているので、映画のようにBSL4施設から病原体が外に流出した例はないと言うことです。
無人探査ロボットによる海底地図の作製を競う国際レースが2017年から行われてきました。参加32チームの中から予選を通過し決勝に残った日本と米国などの5チームの中で日本チームは準優勝を勝ち取りました。優勝は米国に拠点を置く17か国の研究者などで作る国際チームで、日本財団が開発費などを支援してきたのだそうです。
大会はアメリカの民間財団「Xプライズ」が海底探査技術の向上を目指して主催したレースで、決勝はギリシャ沖の最大水深4000mの深海の海底を測量し、24時間以内に面積250平方km以上の地形を調査し、正確な地形図と広さを競うものでした。
名前は「チームクロシオ」、メンバーは海洋研究開発機構(JAMSTEC)や東京大学生産技術研究所、三井E&S造船など産官学の8組織で構成される約30名のチームでした。
日本チームは、超音波で海底の地形を測定するソナーという機器を搭載した長さ5mほどの自律型無人潜水ロボットと、その位置を海上から把握する小型の無人船を使って、250平方kmという課題には及ばなかったものの長さ30km余り、幅5kmの海底地図を制作したのだそうです。
日本高血圧学会は高血圧の治療指針を5年振りに改定し、高血圧症としての診断基準の血圧(上140以上、下90以上)とは別に、患者が目指す血圧の数値として治療目標を上130未満、下80未満と改定しました。上とは心臓の筋肉が“収縮期”の血圧あるいは“最高血圧”、下とは心臓の筋肉が“拡張期”の血圧あるいは“最低血圧”のことです。
中高年になって、血管に高い圧力がかかり続けると血管が痛んで弾力を徐々に失い、血管の老化が進み動脈硬化が起こってきます。そうなると脳の血管が破れておこる脳卒中や、心臓の血管が詰まっておこる狭心症や心筋梗塞など血管に由来する病気になってしまいます。
厚生労働省の調査によりますと脳と心臓の病気で年間31万人以上が亡くなられているそうです。
日本高血圧学会によりますと海外の調査結果から上の血圧で10、下の血圧で5下げると脳卒中の発症リスクが30~40%、心筋梗塞では20%減らせることが分かったそうです。
そのためには、塩分の摂取量を抑え、適度な運動と体重の減量、ストレスを貯めないこと、禁煙することなど“生活習慣の改善”を実践することが大切です。思い当たる方に勧めてくださいね。
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