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東京都立中高一貫教育校10校の問題内容、配点、そして独自問題の出題傾向の分析結果をご紹介します。私立型の入試問題とは全く異なる出題方法をすると言われていますが、どのような違いがあるのか、そして都立中高一貫校の中でも出題傾向に違いはあるのか、といった点にスポットを当てて調べてみました。
※千代田区立九段中等教育学校は、また別途分析します。
※2019年度入試についての分析結果です。( )内の数値は四谷大塚・第3回合不合判定(9月実施)80偏差値で、(女子/男子)と表しています。また、「適性検査Ⅱ①」は、適性検査Ⅱの第1問を表します。
※★を付した学校は2019年度の配点です。
独自問題は学校によって出題タイプが分かれますので、タイプに応じて文系タイプを緑色、理系タイプをピンク色と色分けします。また都立武蔵の適性検査Ⅱ②は理科・社会の複合型ですので、紫色とします。
適性検査Ⅰ:国語タイプ
400字から600字くらいの範囲での記述問題です。2つの文章を挙げて、そこでの筆者の主張を説明し、さらにそれに対しての自分の意見を述べるタイプです。
資料となる文章は古文や明治時代の出典など古いものですが、説明がついていますので、読みづらくはありません。時間の使い方が習得できれば、対策しやすいテストです。
適性検査Ⅱ①:算数タイプ
私立型算数の要素が強いテストです。特に、図形については展開図や断面図などへの慣れが必要になります。割合の計算などが出されることがありますが、計算の材料が問題に含まれているので、問題文を確実に読めば、対応は難しくはありません。小学校の内容を基礎に私立型算数の練習を積むことで得点率がアップします。
適性検査Ⅲ:算数・理科タイプ
2問構成で、1問が理科、1問が算数タイプです。理科は生物の実験問題が頻出です。実験結果を表す表やグラフの読み取り問題で、私立型理科の実験問題に慣れていると、内容がより速く確実に理解できるテストと言えます。ポイントは算数の問題にあります。図形をもとに、規則性や展開図を考える問題が多く、空間把握能力や規則性への対応力が問われるテストです。ある程度書き出しも必要になるので、私立型算数の図形問題の演習が対策につながります。
適性検査Ⅱ②:社会タイプ
日本での水の消費、日本の小売業、東京都の人口など、テーマとしては社会ですが問題は計算やグラフ作成など多岐に渡り、いかに与えられた資料を的確に読み取ることができるか、が問われます。最終問題はそれまでの問題を踏まえて自分の考え121~150字以内で書かせる記述問題です。字数は多くありませんが、問題で指示された内容を踏まえなければ得点にならない可能性があるレベルの高い記述問題と言えます。海城中や鴎友女子の問題が活用できますが、時間の使い方を習得するためにも、小石川の過去問を最優先で演習すべきです。
適性検査Ⅲ:理科タイプ&算数タイプ
大問2題構成で、1題は理科タイプ、もう1題は算数タイプです。
理科タイプは身近な出来事を理科的な視点から見る、というタイプの問題で、知識問題が一部とほとんどが自分の考えを書かせる問題で構成されています。字数制限がありませんので、学校がHPに公開している解答例をよく参考にするとよいでしょう。
算数タイプは図形の規則性に関する問題が多いですが、とにかく問題が長いので、長い文章から的確に条件を整理する力が求められます。他校にないタイプで、問題内容が理解できれば解答の方針は立ちますが、説明形式の記述問題なので、理科タイプ同様に、学校の解答例を十分に参考にする必要があります。
適性検査Ⅰ:国語タイプ
完全な国語記述問題タイプです。文章量は合不合の国語よりも短く、論説文からの出題ですが、榎本博明や山極壽一など、私立中学の国語でも出題される作家の作品が多いです。問題は3題構成です。すべて記述問題で、制限字数が40~50字と60~70字と450~500字の3タイプに分かれます。40~50字、60~70字は文章内容の説明で、450~500字の問題で、自分の考えを表現させます。文章のタイプも含めて、私立型国語が得意な場合は、対応しやすいテストと言えます。
適性検査Ⅰ:国語タイプ
立川国際と同様に完全な国語記述問題タイプです。文章のタイプは論説文ですが、読みやすい構成です。問題は3題で、2題が100字以内で問題文の内容説明をさせる。最後の1題で400字から450字で本文内容をもとに、自分の考えを説明させるというパターンです。最後の1題では、題材として取り上げたものを答案用紙に書かせるなどの、細かな指示が出されることがありますので、その指示を逃さないように注意が必要です。私立型国語が得意な場合は、対応しやすいテストと言えます。
適性検査Ⅲ:算数タイプ
2題構成で、1題は図形に関して問題で提示されたルールにそって解き進めるタイプです。一見取り組みづらいですが、よく問題を読めば、解法は見つけづらくありません。ただし、展開図や切断など私立型算数の立体図形の問題に慣れていると有利になります。いかに時間をかけ過ぎずにルールを理解するかがポイントになります。もう1題は、論証タイプの問題で、ゲーム理論に近いです。こちらも問題文をよく読めば、ルールの理解は難しくはありませんが、時間の使い方がポイントになります。
適性検査Ⅲ:算数タイプ
制限時間が30分と短いです。2題構成で1題は、あみだくじや独特の時計など、初見のルールに沿ったサンプルを題材として、与えられた例から法則を把握して、考察を進めさせるタイプの問題になります。初見の図でも焦らずに内容理解を進められるように対応することがポイントになります。単元を問わず、様々なタイプの問題に接しておくことが重要です。もう1題は、算数の図形の問題です。立方体の組み合わせなど、私立中学でも出題されるタイプに近いと言えます。空間把握能力を問われることが多くありますので、立体図形の問題を数多く解いておくと有利になります。長い問題文をしっかり読み取る力も必要です。
適性検査Ⅰ:国語タイプ
完全な国語記述問題タイプです。大問が1題の年度と2題の年度があります。文章のテーマが「生き方」についてのものとなることが多く、内容を50~60字で説明させる問題と、問題文をもとに自分の考えを200字程度で説明させる問題で構成されます。文章の内容がわかりやすいので、私立型国語が得意な場合は、対応しやすいテストと言えます。
適性検査Ⅱ①:算数タイプ
ゲームや作業を題材として、問題文と表からルールや条件を見つけ出して問題に対応するタイプです。計算だけでなく、解答根拠を説明させる問題も含まれます。ゲームや作業が複雑ではないので、内容は理解しやすいですが、時間内にどれだけ問題を解けるかのスピードが重要になります。
適性検査Ⅰ:国語タイプ
完全な国語記述問題タイプです。論説文を題材として小問3題の構成です。25~35字くらいの字数で内容説明をさせる問題2題と、400~500字で自分の意見を述べさせる問題です。意見を述べさせる問題で、文章構成に指示があるので、それを必ず守る必要があります。私立型国語の演習がそのまま活きるテストです。
適性検査Ⅱ②:理科・社会タイプ
社会タイプの年度が多いですが、2016年度の光の問題のように理科タイプになることもあります。科目のタイプに関わらず問題形式は変わらず、親子の会話と資料を見て、問題を解くかたちです。問題に「会話をふまえて」とあるように、親子の会話の中に解答のヒントがあります。そのヒントと資料を結び付けて記述することが正解に近づくポイントです。問題のテーマが社会的なことがありますので、時事問題には普段から注意しておくと、より対応しやすくなります。
適性検査Ⅲ:理科タイプ&算数タイプ
大問2題構成で、1題は理科タイプ、もう1題は算数タイプとなります。理科タイプは、単元のジャンルが幅広く、自分で分析方法を考えて記述させる問題や、電極分解を題材にした計算問題など、様々な分野から出題されます。難度の高い問題なで、過去問演習で慣れておくことが不可欠となります。
算数タイプは、図形の規則性から出題されることが多いです。一見文章が長いですが、説明をよく読んで内容を理解すれば、問題自体の難度は高くありません。最終問題がやや難しいですが、問題の説明をよく読む練習を積むことで、問題対応力はアップします。
適性検査Ⅲ:算数タイプ
問題で扱うテーマは理科・社会に近いですが、表や条件の読み取り、読み取った内容からの計算という流れは算数タイプと言えます。計算自体は難しくありませんが、どのような式を立てるかがポイントです。また、問題で提示される条件やルールをどれだけ的確に読み取るかが大事になります。問題文は会話形式になっており、その会話の中に問題のヒントが隠されていることが多いです。過去問演習で会話文の読み取りの練習を重ねる必要があります。
分析をしてみて、やはり私立型の入試問題との違いを強く感じました。もちろん、算数の立体図形や理科の実験問題など、私立型の入試問題対策を重ねた生徒さんにとっては慣れている題材が出題対象になることが多い点で有利にはなるでしょう。ただし、解答をつくる段階では、算数・理科タイプではありながら自分の考えを的確にまとめて文章で表現するという、私立型の算数・理科ではあまり問われない力が要求されますので、公立中高一貫型の出題傾向に慣れておかなければ、制限時間内に問題を解ききるのは極めて困難と思われます。
特に都立小石川や都立武蔵の問題は1問のボリュームがあり、多岐に渡る資料やグラフから多種多様な問題が出されますので、例えば海城中や鴎友学園女子といった比較的傾向の近い私立難関校の問題に慣れていても、かなり対応が難しくなるテストと感じました。
今後、この公立中高一貫校の入試問題がどのように変貌していくのかはわかりませんが、いずれにしても、日頃から親御様との会話などを通して、なぜそうなるのか、といった視点を持ち続け、それを自分の言葉で表現する鍛錬を積み上げる力が求められることは変わらないでしょう。
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