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筆者撮影
区立九段中の特徴的な入試スタイルをご存知ですか?千代田区に住んでいる方が有利?独自問題ばかりで構成される入試問題は難しい?そんな疑問にお答えすべく、区立九段の入試を徹底解剖しました!
区立九段の入試では、募集人員が千代田区在住者を対象とする「区分A」と、都内在住者を対象とする「区分B」に分かれる点が際立って特徴的です。
それぞれの区分について、2019年度のデータを以下にまとめました。なお、受験者数、合格者数、実質倍率は晶文社『中学受験案内2020』に掲載された数値、偏差値は四谷大塚・合不合判定2019年度結果80偏差値を掲載しています。
上記の実質倍率をみると、区立九段の入試が千代田区在住の受験生に有利と言われる理由がわかります。合格者数が同じ40名ながら、受験者数は区分Bが区分Aの3倍近くになるのですから、実質倍率に大きな差が生まれることは当然と言えます。
それでは入試問題にはどのような特徴があるのでしょうか。
区立九段の入試問題に見られる最大の特徴は、東京都の共同作成問題が一切使われずに、適性検査1、適性検査2、適性検査3すべてが独自問題で構成されることです。
過去3年間の出題内容をまとめたのが以下の表です。
区立九段では、適性検査2と適性検査3で科目による区別がありません。例えば都立小石川であれば、適性検査Ⅱが社会タイプ、適性検査Ⅲが理科&算数タイプと適性検査ごとに分類できるのですが、区立九段では適性検査2、3のそれぞれ3問ずつ合計6問の中で、算数、理科、社会タイプがランダムに割り振られる構成になっていますので、適性検査2で算数が2問、適性検査3が理科と社会になる年度もあれば、算数タイプが適性検査2と適性検査3それぞれに出題される年度もあり、出題タイプは統一されていないのです。そこにも区立九段の入試問題の特徴が見て取れます。
ここからは、各テストの問題の特徴について分析結果を説明していきます。
全体的には私立中学で出題される国語の問題に近いタイプの出題です。大問2題の構成で、直近3年は第1問が物語または詩、第2問が説明文でした。
問題は記述が多く、第1問、第2問ともに最終問題は自分の考えを書かせるタイプの問題です(第1問は50字以上60字、または70字以内、第2問は200字以上240字以内)。記述問題については共同作成問題や、他の中高一貫校の独自問題と大きな違いは感じられません。
区立九段の適性検査1を特徴づけるポイントは以下の2点になります。
1.物語や詩で表現される抽象概念を把握する力が求められる。
第1問について直近3年を見ると、2017年度の武者小路実篤、2019年度の志賀直哉の文章ともに、童話のような内容となっています。この2問と2018年度の高村光太郎の詩と共通しているのは、平易な(読むやすい)文章の裏にある抽象的な概念(謙虚さや愛情)を正確につかむ必要があるということです。童話的な内容や詩で表現された内容をそのまま受け取るだけでなく、その背景にある概念をつかんだうえで記述問題に対応しなければなりません。ただ文章を読んで終わり、ではなくそこで表現されているものは何か、それを自分の言葉で表現して理解を確かなものとする練習を積むことが要求されているテストと言えます。
2.豊富な語彙を正確に使いこなす力が求められる。
例えば2017年度第2問では、接続詞を選択肢から選ぶのではなく、自分で考えて答えさせる問題が出されました。文章をつなぐ接続詞が逆接のタイプであるとわかったうえで、それが「しかし」なのか「けれども」なのか、文章のタイプも考えて選び出さなければなりません。ただ機械的に接続詞を選択肢から選ぶ作業だけを重ねていては正解できない問題です。
また2019年度第2問では、本文中の空欄にあてはまる言葉を語群の中から選ぶだけではなく、選んだ理由を説明させる問題が出されています。この他にも、2018年度の詩の問題では、詩の最後の一文に続く文章を自分で考えさせる記述問題が出され、2017年度の説明文では、章の小見出しを自分で考えて書かせる問題が出されました。これらに共通するのは、知識として正しい言葉を豊富に持っているかどうかが問われているという点です。様々なかたちで受験生の言葉の表現力を求めてくるテストと言えます。
多種の文章を読む経験を持ち、その経験から言葉の感覚を磨いてきた生徒さんにとって有利な問題となっています。
上記のように区立九段では、適性検査2と適性検査3で傾向が分かれていませんので、ここでは適性検査2と適性検査3を合わせたかたちで特徴を挙げていきます。
1.科目の枠を超えた出題
例えば2017年度の適性検査3・第2問は表に記した通り、街の景観と資源の活用をテーマとしており、社会タイプの問題をメインに構成されていますが、その中に、底面の半径3cmの円柱型の缶に280mLのジュースを入れる時の高さを求めさせる算数(立体図形)の問題や、断熱材に関する理科タイプの問題が含まれています。このように、区立九段では、算数、理科、社会の科目の枠に限られない問題が出されます。社会の問題のはずなのに理科の問題がある!と焦ることがないように、科目関係なしに出される問題に落ち着いて対応する心構えが必要になります。
2.普段の生活の中で培われる知識が求められる。
これは区立九段に限らず、ほとんどの都立中高一貫校の適性検査で求められることですが、いかに身近な物事に関心を持って日常生活を送っているかが問われます。
例えば2018年度の適性検査3・第1問の中で、江戸時代の「貸かさ」のサービスがもたらすメリットについて記述させる問題があります。問題に資料として示された傘のデザインを見れば難しい問題ではありませんが、そこに「宣伝効果」というポイントがあることが問題を見た瞬間に浮かんでくれば、解答速度に大きな差が生まれます。
また2019年度の適性検査2・第3問では価格の決定をテーマに表やグラフを用いた出題になっています。価格の決定に需要と供給のバランスが関係していることを知らなくても、問題を読み込めば答えは導き出せるのですが、価格の決定と需給バランスの関係について基本だけでも知っていると、圧倒的に解きやすくなります。小学生が需給バランスについて考えることはなかなかありませんが、普段の会話の中で、「なぜこの商品は高いんだろうね」といったやりとりを重ねていると、お子様の知的好奇心が喚起され、ニュースを見ていても知識の吸収度合が変わってきます。日常生活の中で、「なぜ?」を大事にし、そこで得た知識を言葉で表現する習慣を身につけているお子様には、断然有利なテストと言えます。
3.コンパスを用いた作図問題
区立九段の算数タイプの問題では平面図形が多く出題されます。その中で、コンパスを用いて作図をさせる問題が含まれることが特徴的です。問題の難度は決して高くはなく、出題内容を正確に理解できれば作図自体は難しくありません。ただし、コンパスの扱いに慣れていないと想定外に手こずり、時間がかかってしまうでしょう。特に私立型の受験勉強をされてきたお子様は、算数でコンパスを用いた作図はほとんど練習することがありませんので、コンパスの使い方に不慣れな可能性が高いです。区立九段を受験する場合には、コンパスを使う作図練習が必須となります。
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区立九段の入試問題は際立って難しいというレベルではありません。例えば都立小石川の算数タイプの問題のような圧倒的長さ、情報量の問題への対応力が求められたり、都立武蔵の理科タイプの問題のような複雑な構成の問題への理解力が求められるようなことはありません。標準的な難度のテストと考えてよいでしょう。
ただ、すべてが独自問題ということもあって、適性検査2、3の問題で算数・理科・社会の問題が入り交じり、年度によって問題の傾向も変わってきますので、どのような出題が出されても焦ることなく落ち着いて対応できるように、例えば他の中高一貫校の過去問から見たことのないタイプの問題を選んで演習するなどの方法で、初見の問題への対応力を鍛える練習を重ねるとよいでしょう。
また私立型の受験対策をしてきた生徒さんにとって有利かという点ですが、算数タイプの図形問題や計算問題、適性検査1の国語タイプの問題で私立型に近い出題がありますので、それらの問題に対応する際のスピードと正確さでは私立対策をしてきた生徒さんが有利にはなります。また、【適性検査2】の特徴2で記しました身近な物事への関心が問われるタイプの問題も、私立の理科社会で思考型(知識を問うだけでなく考える力を求めるタイプ)の問題を出す学校の対策をしてきた生徒さんにとっては解きやすいものもあるでしょう。ただそれは一部の問題のことで、全体を見れば私立型の対策をしていなければ解けないというテストでは決してありません。
同校の過去問をしっかり練習して、特に自分の言葉を使う記述問題での解答のまとめ方を徹底的に鍛え、コンパスを使った作図など区立九段ならではの問題への対応力をアップさせれば、合格の可能性は十分に高くなると言えるでしょう。
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