No.995 大本命『金木犀とメテオラ』第2弾!予想問題付き!

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amazon『金木犀とメテオラ』安壇美緒(集英社)

 3月に私共のメルマガで、来年度入試の本命として本書をご紹介しました。

2020年3月20日配信メルマガ:No.893 早くも来年度入試の本命登場!嫉妬に苦しむ人物の描写が凄い(『金木犀とメテオラ』安壇美緒・集英社)

 本作は10月に実施されたサピックスの合格力判定オープンでも出題されており、来年度入試注目の作品であることが改めて認識されます。

 前回のメルマガでは読解ポイントのみのご紹介で、問題まで触れていませんでしたので、今回は、サピックスオープンで出題された問題以外で、出題されそうな部分をご紹介し、さらに予想問題と模範解答もご紹介します。

【テーマとあらすじ】

 この作品のテーマは、大枠としては友人関係ですが、具体的には「思春期ならではのプライドと嫉妬」です。
 6年生の皆さんは、本をこれから1冊読む時間はなかなかとれないと思われますので、以下に主な登場人物とあらすじをご紹介します。
 
《主な登場人物》
宮田佳乃(みやたよしの・東京出身、成績優秀でピアノの技術も高い)
奥沢叶(おくさわかなえ・容姿端麗、成績優秀。人当たりのよい優等生)
森みなみ(もりみなみ・明るい性格で、宮田と入学時から行動をともにする)
北野馨(きたのかおる・お調子者タイプ、宮田を常にライバル視する)
冴島真帆(さえじままほ・遊び好きで退屈を嫌う。東京出身) 
館林悠(たてばやしはるか・真帆の親友でやや冷めている。東京出身)      
羽鳥由梨(はとりゆり・宮田と寮で同部屋、朗らかなタイプ)

《あらすじ》
 北海道の中高一貫の女子校を舞台として、東京からトップの成績で入学してきた宮田佳乃と地元の成績優秀者である奥沢叶がメインとなって物語は展開します。
 マイペースなために他人とぶつかることの多い宮田と、誰もが認める美貌とそつのなさで優等生としての位置を確立する奥沢という対照的な2人がそれぞれに抱える、プライドと嫉妬が混然とする強い気持ちが随所に表されている物語です。
 ヒリヒリとするようなネガティブな心情に突き動かされてしまう少女たちの姿が、リアリティに溢れる描写でつづられていきます。 

【出題ポイント:他者に抱く嫉妬にかられた心情を読み取る!】

 10月の合格力判定サピックスオープンでは、「宮田佳乃が悩み、葛藤する姿」が出題対象になっていました。
 出題された箇所は3つに分かれていて、具体的には、
① P.208の1行目からP.211の13行目
② P.215の1行目からP.218の15行目
③ P.252の7行目からP.255の最終行まで
からの出題でした。

 しかし、もう一人の主役、奥沢の嫉妬にかられる姿も非常に出題されやすい場所ですので、おさえておいてください。

【出題が予想される箇所】

《P.132の4行目からP.137の5行目まで》 
 奥沢が宮田に対する嫉妬にかられ、苛立ちに支配されてしまう姿が描かれています。
 その中でもP.134の最終行から135の6行目に出題される可能性が高い箇所が含まれています。お祭りに皆で行く際に着ていく浴衣について話している以下の場面です。

「宮田さんは?浴衣」
やっと木陰から出てきた宮田は、まぶしそうに目を細めていた。
「持ってないけど」
「じゃあ一緒にイオンで買お。それともネットで見る?」
「買わないよ、いらないし…」
何の執着もなさそうに、宮田がそう呟く。
どうしてか奥沢は、その言葉に自分がひどく傷ついてしまったのかがわかった。
【予想問題】

 上記の場面からの出題として、記述型選択肢型の問題を作成しました。
 問題を解くにあたっての事前情報(テストでは問題文のはじめに書かれる内容です)として、奥沢の家は経済的に余裕がなく、母親の恋人からの支援を受けなければ浴衣を買うことができない境遇にあることを踏まえておきましょう。
 それでは問題です!

《記述型》

【問題】
なぜ奥沢は自分が傷ついてしまったと感じたのか。80字以内で答えなさい。

【解答】
頑なに本心を隠して生きている自分と、何の執着もなく自然に生きている宮田を比べて、自分の行動に恥ずかしさを感じ、自分を否定された気持ちになったため。(73字)

《選択肢型》

【問題】
奥沢が「傷ついてしまった」と感じた理由について正しく説明したものを選びなさい。

ア:宮田の素っ気ない返事が、自分が大事に思ってきた友人に対してあまりに失礼なものだったので、怒りを感じてしまったから。
 イ:頑なに本心を隠して生きている自分と、何の執着もなく生きている宮田を比べて、自分の行動に恥
ずかしさを感じたから。
 ウ:浴衣を欲しくないことは自分も同じで、それを気楽に言葉にできる宮田に先を越されてしまった
ことが悔しかったから。
 エ:自分の意志を貫く宮田の姿に憧れを感じ、自分もそうなりたいと思ったものの、その方法をすぐに思いつくことができなかったことが恥ずかしかったから。

【解答】

【解答のポイント】 

 記述型、選択肢型どちらにも共通するキーワードは、「頑な」、「執着がない」、「恥ずかしさ」です。
 このうち「執着がない」については意味が取りづらいかもしれません。「執着」の辞書での意味は、「ある物事に心が深くとらわれて離れられないこと」です。
 そこから「執着がない」は、物事に心がとらわれることがない、という意味になります。
 物語文の読解では、語彙をどれだけ豊富に持っているかが、ポイントになります。

 次に、解答の裏付けとなる文章を挙げて見ましょう。

 私だって、朝顔の浴衣が一番可愛いと思った。欲しかった。とても。欲と現実が乖離していく度に、自分が頑なになっていくのがわかる。別に浴衣なんてなくったって生きていける。友達がいなくたって生きていける。何の問題もない女の子でなくたって、生きていくことはできる。みじめだった。
(P.136) 
 宮田は、夏祭りの浴衣なんてどうでもいいのだ。成績だってピアノだって、彼女にとっては特別なものではないのだろう。その執着のなさを見せつけられると、いかに自分が恥ずかしいことばかりを気にしているのかを、まざまざと思い知らされる。
(P.137)

 この2つの箇所に着目すると、キーワードである「頑な」、「執着がない」、「恥ずかしさ」を、どのように解答に盛り込むかが見えてきますね。

 文字数ですが、80字と見ると長くて書くのが大変、と思われるかもしれませんが、むしろ、字数が多い方が説明を十分にすることができる、ととらえるようにしましょう。書く内容が定まれば、むしろ字数は80字以上ある方がまとめやすいのです。ただし、すぐに書きだすのではなく、どのような内容を解答にまとめるか、考えをしっかりまとめてから記述する必要があります。
 今回の問題であれば、80字のうち半分の40字くらいで奥沢が宮田の姿と自分を比べていること、残りの40字くらいで、奥沢の心情の説明、といった構成を考えてから記述を始めるとよいでしょう。

【出題が予想される学校】

 この作品は書店でも児童書ではなく、一般書に分類されており、文章は小学生向けに書かれてはいません(刺激的な表現などはありません)。そのため、偏差値55以上の学校で出題されるかと思われます。  
 登場人物が女子ばかりですので、女子校で出題されるのはもちろんですが、男子校でも出題される可能性はとても高いです。
 特に海城や、などは男子校ですが、女子の繊細な心情を容赦なく聞いてきますので要注意です。海城は今年話題となった朝比奈あすかの『君たちは今が世界(すべて)』でも女子の揺れ動く心情を題材としていました。男子校だから女子だけで作られる世界は出されない、という考えは中学受験の国語では成り立たないのです。

 嫉妬やプライドといった心情は、最近の中学受験の国語では出題対象になることが多く、そうした心情を読み取る練習としても、本作は恰好のテキストとなります。5年生以下の皆さんも、ぜひ挑戦してみてください。

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