No.1318 伝統校、桐朋の底力!生徒の知的好奇心を刺激する『特別講座』(塾対象学校説明会レポート)

校舎外観(筆者撮影)

実施日:2023年5月24日(水)

今回の内容は以下の5点です。
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1. 2023年度中学入試結果について
・入試問題に見る「桐朋らしさ」とは
・科目別「特徴的問題」「差がついた問題」
2.2024年度入試要項について
3. 桐朋中の教育が目指すもの
・自律的な学問者の育成
・生徒の知的好奇心を刺激する「特別講座」
・生徒たちの夢を支える卒業生のサポート
4. 桐朋中の進路指導
・進路決定のアプローチ
・進路決定のための様々な企画
・大学進学について
5. 文化祭の日程
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1.2023年度中学入試について

【入試問題に見る「桐朋らしさ」とは】

・2023年度入試は前年度から大きな変更はなく、桐朋らしい出題内容でした。

・全科目を通しての「桐朋らしさ」の特徴は、以下の通りです。
 1.基礎確認を重視する。
 2.小問を解き進むことで結論にたどりつく。
  筋道を考えて、その筋道を書き記す。

 ここからは、2023年度入試の科目別の「受験生に求めるもの」、「求めるものが特徴的に見られた問題」、「差がついた問題」の説明です。

【科目別 2023年度入試の概要】
《国語で受験生に求めるもの》

 国語では、「登場人物(他者)の立場を理解し、全体をとらえる力」「全体をふまえて自分とのつながりをとらえる力」「ことばによってとらえ、自分のことばで伝える力」をしっかりと身につけて欲しいとのことです。

《国語の特徴的な問題》

二日目 大問2 問7
「秘密」がなくなった理由を筆者がどう考えているかを問う内容で、「筆者が作家という立場になった」という点に注目できているかがポイントでした。「作家として働いているうちに、~『秘密』が減っていった。」という展開で解答を作って欲しかったのですが、ポイントをつかめた答案は少なかったそうです。

《国語の差がついた問題》

一日目 大問2 問9
 「筆者が十年前の滞在のことをいま文章に書いた理由」を問う内容でした。問題中に、この文章が「2022年5月に」書かれたものという表現があることから、「コロナ禍」と「ロシアによるウクライナ侵攻」を踏まえて、人と人とのつながりについて書くべき問題でした。問題中の条件をしっかりとらえられたかどうかで差がついたとのことでした。

《国語のまとめ》

 世界を広く意識して、どういう生き方をしたいかを考えること、そして、対話を大切にし、自分のことばで伝えることを大事にして欲しいとのことでした。
 特に世界を広く意識するためには、読書体験が重要ですが、親御様からお子様に、本を読むことを強制せずに、「この本が面白かった」としてお子様に薦めるように、読書の楽しさを共有する意識で臨んで頂きたいとのことです。

《算数で受験生に求めるもの》

 算数では、「自ら考え、試行錯誤すること」を重視し、初めて出会う問題でも、一歩一歩確認して前進する、失敗を恐れずに挑戦する姿勢を身につけて欲しいとのことでした。

《算数の特徴的な問題》

一日目 大問7 
 (1)で図形の中に記された約数のならびに着目して、規則性を理解したうえで、(2)で新たな条件のもとに、そこから導かれる新たな規則性に気づけるかがポイントでした。
 見たことのない図形でも、(1)はしっかり読み取れば解ける問題で、その(1)をもとに(2)に臨むという問題です。

《算数の差がついた問題》

二日目 大問5
 図形に計算の要素が入るタイプの問題でした。図形は得意だから図形の考え方で解ける、といったパターンで解こうとすると正解に行き着けない問題です。こうした、幅広い分野が融合した問題では、パターンで解くのではなく、どのようなプロセスを踏まえれば答が出てくるのかを考えて欲しいとのことでした。

《算数のまとめ》

 桐朋の算数では、後半の問題でも小問は易しいことが多いので、チャレンジをして欲しいとのことです。また、幅広い分野の丁寧な理解、日々の学びの中で「やってみる・挑戦する」という姿勢を忘れずに、試行錯誤をして欲しいとのことでした。

《社会で受験生に求めるもの》

 社会では、「時代認識をしっかり持ち、社会問題に関心が持てているか」を大事にして欲しいとのことです。

《社会の特徴的な問題》

二日目 大問1 
 桐朋中の定番の出題形式の問題です。「女性の記録から時代を把握し、時系列に並べる」という内容でした。男子校だからといって、女性の問題は難しいでは困る、しっかりと社会を見つめる視点を持って欲しいとのことです。得点率は7割弱で、近代の資料が多かったことでやや難しかったのではないか、と考えているとのことでした。

《社会の差がついた問題》

一日目 大問3
 公民分野の論述問題です。提示された資料をしっかりと踏まえた解答が少なかったそうです。様々な資料の中から「有意な差」を導き出すことができるかどうかを問う、資料読解としての要素が強い問題でした。

《社会のまとめ》

 桐朋の社会では、細かな知識よりも、それぞれの時代や地域の特徴をしっかり意識する受験生が高得点を取れるテストとしたく、ニュースなどに関心を持って、それを日常の話題として、他者と意見交換する習慣を身につけて欲しいとのことです。

《理科で受験生に求めるもの》

 理科では、日常の中にある理科の要素に興味関心を持って、「なぜ」と考えて調べるという意識を持って欲しいとのことです。知識を活用して(データを分析して)、その上で新しい発見につなげることの喜びを感じられるような問題を作っているとのことでした。

《理科の特徴的な問題》

一日目 大問2 問5 
 化学分野からの問題でした。(1)で基本事項を確認→(2)で(1)を踏まえて解く→(3)で表とグラフから読み解く、という構成です。正答率は(1)が8割、(2)が5割、(3)の名前を答える問題で3割、温度を答える問題で1割以下となりました。

《理科の差がついた問題》

二日目 大問1
 物理分野からバネについての問題でした。問1~3でバネの性質を確認して、問4~6で、それらを利用した具体的な問題という構成です。問4で複数の基本事項が理解できているか、問5で基本事項を変えて、新たな条件を加えた設問への対応が問われたところで差がつきました。

《理科のまとめ》

 桐朋の理科では、日常の中にある理科の要素に興味関心を持って、「なぜ」から「調べよう」の意識を強く持って欲しいとのことです。学んだ知識や与えられた知識を理解し、活用して、新しい発見につなげるという想いを持って勉強して欲しいとのことでした。

正門横に表示された学校名(筆者撮影)

2.2024年度入試要項について

 来年の2024年度入試は、大きな変更はなく、今まで通りの入試を実施する予定とのことです。

3.桐朋中の教育が目指すもの

【自律的な学問者の育成】

 桐朋中では「一人ひとりが、試行錯誤しながら学習の方法や方略を見つけ、自ら学んでいく」というモットーを実践するために、先生方が教科学習はもちろん、行事・部活などの機会を活用しています。その一例がバラエティーに富んだ様々な内容で構成される「特別講座」です。

【生徒の知的好奇心を刺激する「特別講座」】

 高校生を対象として、希望者に、放課後実施している「特別講座」は、生徒が学問への関心を高めて、学ぶ喜びを知る場とするために、先生方それぞれの専門性を活かして、中高で学習する枠を超えた内容が扱われています。

《特別講座の例》
「日米文化交流」(アメリカの高校生と、メールや動画を用いて週1回交流)
「4技能試験で学ぶ『Learning with Four-skills Tests』」
「映画論入門」、「村上春樹とチャンドラー翻訳と文体づくり」

・上記の講座は学期を通して、継続的に行われるものですが、それとは別に、1話完結で、先生方自身の興味・関心を生徒に伝える、「短期」の特別講座も開催されています。
 短期の講座は参加のハードルを下げて、中学生でも参加できるかたちになっています。「美術館・博物館を考える」、「ロシア=ウクライナ戦争~歴史・地政学から考える~」など計15講座を実施、参加生徒数は延べ632名あまりにまで達しています。

・桐朋中では、独自の教員研修制度を活用して、先生方が大学院で研究に取り組み、その成果を生徒に還元する講座も開催されています。先生方自身が探求心を持って自己研鑽に励む姿が、生徒たちの知的好奇心を刺激しているのです。

【生徒たちの夢を支える卒業生のサポート】

・桐朋中では桐朋学園同窓会によって『ゆめチャレンジProject』が展開されています。このプロジェクトは、学問、スポーツ、文化にとどまらず、自分で何かを成し遂げたいという在校生の志を後押しするために、資金を給付するかたちで支援するものです。
 給付対象者は最大10名程度で給付金は最大30万円。希望者が自分の掲げるテーマについてプレゼンテーションを行い、審査のうえで給付が決まります。

・同校のOBで東京大学先端科学技術研究センター准教授である鈴木俊貴氏が桐朋中を訪れて、在校生の生物部員たちと交流を深めるという機会もありました。生徒たちは、世界的に注目される研究者からの刺激を大いに受けたそうです。

・こうした卒業生たちのサポートを得て、生徒たちは「興味を持って探求していると理解してくれるし、応援もしてくれる」という実感を抱くことができています。

4.桐朋中の進路指導

【進路決定のアプローチ】

・桐朋中では以下の基本姿勢のもとに進路指導が進められています。
1.生徒自身が自主的・主体的に進路を考える。
2.段階を踏んだ指導
3.担任による個人面談と進路指導部によるガイダンス
 この基本姿勢にそって、高校3年間を通して、以下の進路決定のアプローチが実施されています。
高1:職業・社会へのイメージ
高2:学問分野への探求
高3:大学の選択

【進路決定のための様々な企画】

・具体的な取組みとして、高1の6月と、高2の11月には「在卒懇(ざいそつこん)」といういう卒業生による講演と意見交換の場が提供されます。
 高1の在卒懇では、10年前に卒業したOBが講師となって自分の現在までの道のりを語ります。2022年度の講師の主な勤務先は、キャノン、海上保安庁、竹中工務店、みずほ証券など多数で、医師、研究者、弁護士となったOBも参加しています。
 高2の在卒懇には、大学の教授など、大学などで研究・指導にあたっている卒業生が講師として参加します。2022年度の講師の専門分野は、文学、国際関係学、法学、政治学、医学、農学、航空工学など多岐に渡ります。

・その他にも、「桐朋卒業の医学部生との進路懇談会」や、「起業ゼミ」「卒業生と語る会」など様々な企画が実施されています。

【大学進学について】

・生徒たちが自分の進路を切り拓くために、学校として大事にしたいのは、授業を基本に、当たり前のことをしっかりと身につけることです。
以下の方針のもと、進学指導が進められています。
1.基礎基本の徹底
2.本質的な理解
3.自ら考える姿勢
4.自主教材、オリジナルプリントの使用

夏期講習では、通常の授業をさらに発展させた内容の演習を実施しています。夏期講習の講座は以下の通りです。
高2:計10日間 今年度は計10種類の講座
高3:計20日間 今年度は計38種類の講座

・卒業後の進路は、ほぼ全員が4年生大学へ進学しています。2023年度の大学進学結果の詳細は以下をご覧ください。

 「桐朋高等学校 2023年度大学入試結果」

 現役進学率は、2019年度50%→2020年度42%→2021年度51%→2022年度56%→2023年度55%と推移しています。

指定校推薦は59大学、147学部より総数250名強の枠(2023年度入試)が得られています。
 主な指定校推薦枠は以下の通りです。
早稲田大(法・文・文化構想・商・先進理工・創造理工)
慶応義塾大(法・商・理工)
上智大・東京理科大・中央大・日本大・学習院大・東京歯科大・日本歯科大・東京薬科大北里大(医・薬・獣医・理)・獨協医科大など

推薦入試での進学結果(現役生)は以下の通りです。
学校推薦型選抜(指定校制)で10名が進学
学校推薦型選抜(公募制)で5名が進学
総合型選抜で2名が進学

5.文化祭の日程

第72回桐朋祭6月3日(土)から6月5日(月)に実施されます。
 詳細は、「第72回桐朋祭Webサイト」をご覧ください。

第72回桐朋祭チラシ(筆者撮影)

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