No.1322 『ブラタモリクイズ!屋久島~「屋久杉」を知れば「屋久島」が分かる!?~編』

 今や中学受験生必見のNHK『ブラタモリ』。近年の中学入試では社会入試問題の作成担当の先生が『ブラタモリ』を見てインスパイアされたと思われるような問題が出題されています。そこで鉄人会では『ブラタモリ』で紹介された知識の中で、中学受験生にぜひ覚えておいて欲しいものや、なぜだろう?と考えながら答えを見つけていくトレーニングを兼ねてクイズ形式で整理しました。今回は5月27日に放送された屋久島編です。

 鹿児島県の大隅半島から南に60㎞の位置にある屋久島は、1993年に日本で初めて登録された世界遺産のひとつです。屋久島という環境だからこそ自生する「屋久杉」を知ることで、屋久島の歴史、特徴を深く知ることができます。屋久島をつくりだしている「岩」の正体とは?屋久杉が樹齢1000年を超えて生き続ける理由とは?巨大な岩を抱え込んで育つ屋久杉を支えるものとは?山の中に突然現れるトロッコの果たした役割とは?厳しい環境の屋久島に生き続ける屋久杉が島にもたらしてきた様々な恵(めぐみ)について探って行きましょう!

屋久島の位置

 屋久島は島の9割が森林に覆われた「自然の宝庫」です。島の住宅が見えなくなったところからすぐに山の急斜面が立ち上がっています。ふもとからいきなり高い山が立ち上がっている風景。この風景から、屋久島が世界遺産に選ばれた理由が見えてきます。

Q1.屋久島には標高1000mを越える山が約40もあります。高い山が多いことで、屋久島の自然ではどのようなことが起こるでしょうか?
A1.生息する植物の種類が多くなる。

屋久島の地形図 画像引用元:ウィキペディア

 屋久島は亜熱帯気候に属していますが、山々の標高が上がるにつれて気温が下がり、標高2000m近くでは北海道とほぼ同じ気温になります。その気温の変化にしたがって、標高の低い地ではガジュマルなどが、1000mを超えるとスギが、さらに高くなるとミヤマビャクシンなど、様々に移り変わる植生が見られます。屋久島が世界遺産に選ばれた理由に、ひとつの島で「屋久島から北海道まで」の植生を網羅している点があるのです。

ガジュマル 画像引用元:ウィキペディア

 屋久島には、樹齢2000年以上とされる屋久杉を代表する巨木『縄文杉』が、台風も通過するという気象条件が厳しい中でも、倒れずに生き残っています。縄文杉をはじめ、屋久杉を中心とした自然の美しさも世界遺産に選ばれた理由になっています。

 

縄文杉 画像引用元:ウィキペディア

 日本では、杉は北関東から東北、北海道辺りに自生しています。亜熱帯気候に属する屋久島で杉が自生するには、標高1000m以上の「高さ」が必要となります。この高さはどのように生まれたのでしょうか?

Q2.屋久島は島の7割がある岩で占められています。その岩石の特徴は「地下深くでマグマが徐々に冷えてできる」岩である点です。その岩とは次の中のどれでしょうか?
 ア.流紋岩(りゅうもんがん) イ.玄武岩(げんぶがん) ウ.花こう岩(かこうがん)
A2.ウ.花こう岩

千尋(せんぴろ)の滝 画像引用元:ウィキペディア

 マグマが冷えて固まった岩石である「火成岩」には、地表近くで冷えて固まった「火山岩」と、地下深くでマグマがゆっくりと冷えて固まった「深成岩」があります。ア~ウのうち、アの流紋岩とイの玄武岩はいずれも火山岩で、ウの花こう岩のみ深成岩になります。
 屋久島の観光名所のひとつ「千尋(せんぴろ)の滝」の周辺には、大きな岩盤がむきだしになっているところがあります。この岩盤は花こう岩がむき出しになっているものです。そして、この花こう岩こそが、屋久島の「高さ」を生み出したのです。
 屋久島はユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に位置しています。今からおよそ1550万年前、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界の地下深くでマグマがつくられました。そのマグマが長い年月をかけてゆっくり冷えて固まり、1つの大きな花こう岩となります。そして、その花こう岩がその後、最大約1万㎞も隆起することによって屋久島が誕生しました。
 このように、花こう岩の隆起によって、屋久杉が自生するのに必要な「高さ」のある屋久島が生まれたのです。

 そして、この「高さ」は屋久杉の成長にとって欠かせないある重要なものを島にもたらしました。

Q3.屋久島に標高1000m以上の山が多いことで、あるものが発生しやすくなります。そのあるものとは何でしょうか?ヒントは「湿った空気」と「上昇」です。
A3.

 屋久島は日本列島の中でも南に位置する島です。南の海からは、暖かい湿った空気が押し寄せてきます。その湿った空気が島へやってくると、高い山にぶつかって上昇し、冷やされて、雲になります。雲は標高1000m付近で発生しますので、標高1000mを超えた山が多い屋久島は「雨雲の一大生産地」となっているのです。屋久島は日本一雨が多い場所で、特に山岳地帯では年間降水量が8000m以上にもなります。

 杉が好む涼しさをもたらす「高さ」と植物が育つのに欠かせない「豊富な水」。これらを合わせ持つ屋久島だからこそ、屋久杉が育つのです。

 屋久島の標高1000mあたりの地域はほぼ福島、新潟の気候と同じになり、そこから上に屋久杉が生えてきます。実は、杉は日本の「固有種」で、本州の杉と屋久杉は同じ種類になり、屋久島で自生している杉を「屋久杉」と呼んでいるのです。
 ただ、同じ種類の杉でありながら、屋久杉には一般的な杉とは異なる特徴があります。
 屋久杉の倒木に、樹齢10歳くらいの小さな屋久杉が生えることがあります。実は屋久杉は倒木になっても200~300年は朽ちることがないのです。ここに屋久杉のある「秘密」が隠されています。

Q4.屋久杉を触ると、粘りけがあります。この粘りけをもたらしているものは何でしょうか?
A4.樹脂(じゅし)
 
 屋久杉といえば強い香りを持つことが有名ですが、「樹脂」が多いことも屋久杉の特徴です。樹脂には防虫効果・抗菌作用があると言われていますが、屋久杉には一般的な杉の6倍以上もの樹脂が含まれているため、倒木となった後も朽ちずに残り続けるのことができるのです。
 樹脂は屋久杉が傷ついたときに出てくるものですが、台風が多い屋久島では、雨風にさらされ、木が傷つくことも多くあります。そんな時に、杉の傷を守るために樹脂が出てくるのです。
 
 屋久杉の林には巨大な花こう岩がゴロゴロ転がっています。屋久島はそもそも1つの花こう岩でできた岩山です。そんな花こう岩でできた岩山は土壌がやせているのに、豊かな屋久杉の森がなぜ広がっているのでしょう?

Q5.屋久杉の中には土の上ではなく、下の写真のように花こう岩の上に生えるものもあります。なぜ岩の上で杉が育つことができるのでしょうか?

花こう岩の上に生える屋久島の樹木 画像引用元:ウィキペディア

A5.苔(こけ)が岩の表面に生えているため。

 花こう岩の上に生えている杉を見ると、岩と杉の間に「苔」があることがわかります。屋久島は雨が多く、苔にとって最高の環境です。屋久島では、苔の種類が600種を超えます。屋久杉は、苔に覆われた石を「苗床(なえどこ)」にしているのです。
 岩の表面に苔がつくことで水分が常に保たれるため、杉がそこに根を張ることができて、生きて行けると言われています。苔は岩の上でも育つことができる植物です。その苔を利用することで屋久杉は花こう岩の島に美しい森をつくっているのです。

 屋久杉の中には、「千年杉」という樹齢1000年を超えているものが見られます。本州の一般的な杉はどんなに長くても樹齢500歳くらいまでですが、その樹齢は屋久島では「小杉」になります。屋久杉の大きなものは1000年から2000年という樹齢になると言われています。
 同じ種類の杉なのに、なぜ屋久杉は一般的な杉と比べて寿命が長いのでしょうか?

Q6.屋久杉の年輪を見ると、肉眼では読みづらいほど、ぎっしりと密に刻まれています。この年輪の幅の狭さは、屋久杉のどのような特徴を示しているでしょうか?
A6.成長が遅いこと。

 木の年輪は、その幅が狭ければ狭いほど成長が遅いことを示します。一般的な杉では5cm太くなるのに10年かかるところ、屋久杉は5cm太くなるのに100年くらいかかると言われています。
 屋久杉の成長が遅い理由には、屋久島が花こう岩の岩山であるために、屋久杉にとって十分な栄養が豊富ではないことが挙げられます。そのために少しずつしか成長せず、その分、年輪が詰まった丈夫な木になります。人間で言えば「体幹のしっかりした」粘り強い木質になっています。そのため、樹齢が1000年を超えるような木になることができるのです。

 苔を利用して花こう岩に根を張り、栄養が乏しい中でゆっくりと成長する屋久杉の姿を見ると、植物にとって過酷な環境が、逆に立派な屋久杉を育んでいることがわかります。屋久杉の種を本州の環境に持って行っても普通の杉にしかなりません。屋久島という環境が、屋久杉のたくましさを育んでいると言えます。

 屋久杉と島に住む人々の生活には、どのような関係があるのでしょうか。
 それを教えてくれるのは、「トロッコ」です。島にはトロッコが通った跡が今も残っています。

Q7.島を通ったトロッコの軌道にはトンネルがあります。このトンネルの内壁にはいくつもの穴があいています。この穴はあるものが仕掛けられた跡です。何が仕掛けられた跡でしょうか?
A7.ダイナマイト

屋久島の縄文杉登山口へと続くトロッコ軌道 画像引用元:ウィキペディア

 ダイナマイトは発破(はっぱ)と呼ばれていました。トロッコが通るトンネルを造るために、花こう岩を砕く目的で発破を仕掛けられました。
 トロッコは屋久杉の巨木を載せて運ぶために使われていました。山を登る時はディーゼル機関車でトロッコを牽引していましたが、下る時は自然落下方式でブレーキの調整だけで下りていました。
 屋久島の森は1920(大正9)年に国有林になり、それ以降、1970年頃まで国の事業として屋久杉の大規模な伐採が行われており、最盛期には20台ほどのトロッコが稼働していたと言われています。
 花こう岩でできた山の急な傾斜をトロッコが通れるように切り開くのは大変な作業でした。山の中から島の港にある貯木場までをつなぐトロッコの軌道は、全長約16キロで、その軌道に橋が24個、トンネル16個がつくられました。この軌道は、1923年に莫大な予算と人員をかけて、わずか1年半で建設されたものです。屋久杉にはそれだけの価値があり、昭和30年代で1本300万円(当時のサラリーマンの初任給が約2万円)、今で言えば、1本4000万~5000万円もの値が付いたと言われています。

Q8.屋久杉は主に高級な建築材として使われていました。昭和30年代の日本で高級な屋久杉の需要が高かった理由として、日本が歴史的にも特徴的なある時期にあったことが挙げられます。この時期と何でしょうか?
A8.高度経済成長期

 「高度経済成長期」とは、1950年代後半から1970年代前半の、日本の経済成長率が年平均で10%を超えた時期を指します。この好景気の時代にあって、高級建材として屋久杉の需要が高かったのです。

 そんな屋久杉は島の暮らしを大きく変えて行きます。
 トロッコは伐採作業に携わる作業員だけでなく、学生や女性などを含む一般の人々も運んでいました。家族全員で屋久杉の伐採のために島に移り住むケースが多く発生し、山の中に「小杉谷」「石塚」という2つの集落がつくられました。それらの集落で暮らす人々の生活のためにもトロッコは利用されていたのです。1960(昭和35)年には、山の中の集落に540人もの人々が暮らしていたと言われています。
 屋久島で林業に携わっていた人々は経済的に潤っていましたが、山の中ではお金を使うところがないため、トロッコで山を下りて、山の下の安房という町で買い物などをしていました。屋久杉は山の下の町にも恵をもたらしていたのです。
 かつてにぎわった安房の町には現在、登山用のレンタルのお店、旅館、民宿、お土産屋など、観光客のための店が並んでいます。屋久杉を使った林業の人々でにぎわった町が、今は屋久杉を見に来る人々のための玄関口になっている。昔は山から人々が下りて来て、今は山へ人々が入って行っているのです。昔も今も屋久島の町は屋久杉の恩恵を受けて成り立っています。

 この屋久島の価値を見出した先人とされるのが、泊如竹(とまりじょちく)という人物です。泊は戦国時代に屋久島で生まれた高名な儒学者で、江戸時代のはじめには、薩摩藩の島津光久(しまづみつひさ)、津藩の藤堂高虎(とうどうたかとら)といった名だたる大名家の知恵袋として数々の功績を挙げました。

Q9.泊如竹は屋久杉をあるかたちで使うことで、花こう岩の島で平地がない屋久島に住む人々を貧しさから救いました。その屋久杉の使いみちとは何でしょうか?
A9.年貢

 泊は屋久杉を、幅も長さもある規格で決められた板のかたちにして、年貢として納めることを薩摩藩に提案しました。屋久島は花こう岩の島で平地がなく、お米がとれません。そこで、屋久杉の板を米の代わりに年貢としたのです。当時、板2310枚で米1俵の価値がありました。腐りにくく丈夫な屋久杉は、高級建材として、主に関西地方で需要がありました。

Q10.年貢として納められた屋久杉は、京都のある寺の離れにある施設の床板として使われました。『鳥獣戯画』が所蔵されている、この寺とはどこでしょうか?
A10.高山寺(こうざんじ)

高山寺 画像引用元:ウィキペディア

鳥獣人物戯画(国宝、甲巻部分)兎と蛙の相撲の場面 画像引用元:ウィキペディア

 高山寺は『鳥獣戯画』をはじめ多くの文化財が所蔵され、1994年に「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されています。この高山寺の離れにある国宝『石水院』の床板に、屋久杉が使われています。

石水院 画像引用元:ウィキペディア

 屋久島には自然の豊かさだけでなく、人々の暮らしがありました。屋久島に住む人々は屋久杉の恵みを受け取り、感謝の気持ちを忘れていないと言われています。
 
 日本初の世界自然遺産である屋久島。この島だからこそ生まれた屋久杉と人々との深い結びつきが、今も息づいています。

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