No.1159 GWに最適!中学受験生にぜひ読んで欲しい短編集10冊!

 今回は、数ある物語文の短編集のうち、読みやすく、かつ中学受験読解の教材ともなるような、選りすぐりの10作品をご紹介します。中学受験の王道とも言える作品も含め、読書が苦手でも読んでみたいと思って頂けるような作品を選びました。分量は少なめでも、物語文の読解力をアップさせるために必要なエッセンスが満載の作品、そして何より楽しみながら読み進められる作品ばかりを集めています。短い時間でも物語文読解のポイントが吸収できる絶好の機会となります。GWのちょっとした時間に手にとって、興味が持てそうな短編だけでも構いませんので、作品の世界観に触れてみてください!
 各作品に対象学年を設定していますが、学年はあくまで目安です。対象学年が実際の学年よりも上でも、短編ですので読み進められる作品もあるかと思われます。ぜひ対象学年は気にせずにどんどんチャレンジして頂きたいです。
 以前にメルマガでご紹介したことのある作品は、そのリンクもつけてありますので、ぜひ参考にご覧になってください。

『教室に並んだ背表紙』相沢沙呼(集英社)

amazon『教室に並んだ背表紙』相沢沙呼(集英社)

【対象学年】

 6年生

【ここがポイント!】

 今年度入試で、駒場東邦中・慶應義塾普通部などで出題され話題となった作品です。中学校の図書室を舞台に、母親との関係に悩む生徒、自己肯定感を抱けないでいる生徒、クラスのいじめに対して何もできないでいることに心を傷めている生徒などの姿を描いた6編の連作短編集です。各短編の主人公となる女子中学生達が、揺れ動く心情の中で自分なりの答えを見つけ出して行く過程が描かれています。小学生のお子様方からすれば少し年上の人物設定となり、重いテーマも含まれますが、中学受験でも多く問われる中学生ならではの想いに触れるという貴重な疑似体験ができる一冊です。注目すべき中学受験的テーマは「相反する気持ちに悩まされ、本心とは裏腹な行動をとってしまう人物の心情」の把握です。物語文読解では頻出の裏腹な表現が意味するところが何かに注意しながら、読み進めてみましょう。最後にはびっくりするようなトリックも隠されている、読書の楽しみも満喫できる一冊です。

【入試で出題した主な学校】

 駒場東邦中(2022年度『やさしいわたしの綴りかた』)、慶應義塾普通部(2022年度『その背に指を伸ばして』)

☆2021年3月28日配信メルマガ
中学入試で近年注目の作家による連作短編集『教室に並んだ背表紙』相沢沙呼(集英社)予想問題付き!

☆2021年11月13日配信メルマガ
2022年度入試で出題される確率が高い物語のベストテンを発表します!

『給食アンサンブル』如月かずさ(光村図書)

amazon『給食アンサンブル』如月かずさ(光村図書)

【対象学年】

 6年生

【ここがポイント!】

 こちらも中学生が主人公となる6編の連作短編集です。各短篇のタイトルが『七夕ゼリー』、『黒糖パン』などとされているように、「給食」にまつわる中学生達の物語が描かれています。中学生が主人公にはなっていますが、人物達が抱く悩みやもどかしさが、丁寧でありかつリアリティのある表現で描かれていますので、小学生のお子様方にとっても共感を持ちながら味わうことができる内容になっています。中学受験的テーマは「心の成長」です。各短編の主人公達はそれぞれに孤独やコンプレックスの壁に対峙しながら、人物との心の触れ合いを通して心の成長を果たして行きます。その成長の過程を追うことは、中学受験でも頻出であるこのテーマを読み解くきっかけを得る道へとつながります。思い悩みながらもそれに向かう人物達の姿が魅力的で、読み物として楽しめる要素も多く含まれています。何気なく出てくる給食が人物達の心情が変わるきっかけとなっている点を読み取ることも物語文読解力の向上につながります。

【入試で出題した主な学校】

 学習院女子(2019年度B入試『ミルメーク』)、香蘭女学校中(2019年度『マーボー豆腐』)、鴎友学園女子中(2020年度第2回『ミルメーク』)

『車夫』いとうみく(小峰書店)

amazon『車夫』いとうみく(小峰書店)

【対象学年】

 6年生

【ここがポイント!】

 家庭の事情で高校を中退し、陸上部OBの誘いで車夫(しゃふ)となった主人公・走(そう)が、様々な人々との心の触れ合いを重ねて行く姿を描いた連作短編集です。著者は、2021年度入試ラ・サール中、栄光学園中、浦和明の星中などで出題された話題作『朔と新』などで知られる、いとうみく氏です。登場人物のほとんどが社会人で、大人向けの内容ではありますが、人物達が心を通わせる過程は6年生、読書好きな5年生であれば十分に読み取れるもので、日能研など塾の模試などでも出題されています。中学受験的テーマは「悲しみや苦しみを乗り越えて行く心の道程」の読み取りです。主人公の走をはじめ、走の職場の同僚、そして客として人力車に乗る人々誰もが、悩み、悲しみにとらわれています。そうした人物達が心を前向きに変えて行く様子を味わうことは、物語文読解の力を何倍にも増強させるものとなります。大人向けの内容に触れるといった、知的に少し背伸びする体験ができる貴重な一冊です。

『小学五年生』重松清(文春文庫)

amazon『小学五年生』重松清(文春文庫)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 中学受験・物語文作家の重鎮とも言える重松清氏。その著書の中でも中学受験最頻出の短編集と言えばこの『小学五年生』でしょう。これまでも、麻布中、聖光学院中、慶應義塾普通部をはじめ、文字通り数え切れないほどの学校で出題され続けている、まさに定番中の定番です。収録されている17編の短編は、すべて小学五年生の男子が主人公となっています。中学受験的テーマは「心情の変化」です。登場人物達が抱く「心のもやもや」は、彼らと等身大のお子様方にとって共感しやすい心情であり、その心情が出会う人々との交流を通して変化して行く様子が、重松清ならではの細やかで精緻な語り口でつづられています。どの作品からでも構いませんが、未読であればテストでも頻出の『友だちの友だち』、『南小、フォーエバー』『バスに乗って』『タオル』などから読み始めてもよいでしょう。読書の楽しみ、中学受験で多く問われる心情表現との出会い、どちらも体感できる鉄板の一冊です。

【入試で出題した主な学校】

 麻布中(2005年度『タオル』)、慶應義塾普通部(2009年度『南小、フォーエバー』)、聖光学院中(2008年度『すねぼんさん』)、山脇学園中(2008年度『バスに乗って』)、世田谷学園中(2014年度『プラネタリウム』)、大宮開成中(2022年度『友だちの友だち』)

『大きくなる日』佐川光晴(集英社)

amazon『大きくなる日』佐川光晴(集英社)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 2017年度以降、武蔵中、立教新座中、学習院女子、日本女子大附属中など、国語の難問を出題する学校で出されてきた、中学受験の新たな定番となっている作品です。ある少年が保育園を卒業してから中学を卒業するまでの時間の経過の中で、少年や家族が様々な人々との交流を重ねる様子が描かれた、9編の作品から成る連作短編集です。中学受験的テーマは「家族関係」です。物語で起こる出来事は、部活でのもめ事や、進路についての悩みなど、小学生のお子様方でもイメージがしやすい内容ばかりで、それらが読みやすい文体でつづられています。人物達が人間関係を変化させたり、心を成長させる際に、その背景に「家族の絆」がある点まで読み取ることが、読解力の大きな向上につながります。物語を楽しみながら、頻出テーマである「家族関係」に触れる機会になり、さらに中学受験の読解で求められる「推測する力」も強化できる貴重な作品です。

【入試で出題した主な学校】

 武蔵中(2017年度『お兄ちゃんになりたい』)、立教新座中(2017年度第1回『四本のラケット』)、立教池袋中(2017年度第1回『四本のラケット』)日本女子大附属中(2017年度第1回『もっと勉強がしたい』)、学習院女子(2017年度B入試『四本のラケット』)、青山学院中(2019年度※短編名不明)、

☆2016年10月5日配信メルマガ
今年もやります!プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた鉄人会貝塚が予想する2017国語出題予想ベスト10

『白をつなぐ』まはら三桃(小学館文庫)

amazon『白をつなぐ』まはら三桃(小学館文庫)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 『たまごを持つように』、『鉄のしぶきがはねる』など中学受験でも最頻出作家の一人、まはら三桃氏駅伝に参加する走者達の物語を描いた作品です。全13章のうち、駅伝がスタートしてから終了するまでの第5章から第11章が、7人の走者それぞれの駅伝にかける想い、抱える悩みなどが描かれる連作短編の構成になっています。本作品の中学受験的テーマは「心の葛藤と向き合う姿」の読み取りです。中学受験で多く出題されるジャンルのひとつに「部活もの」があります。部活動にかける人物達の心情はストレートであることが多く、かつ挫折を克服するといった成長物語の要素もあり、出題対象になりやすいのですが、本作品もこれまでの生き様も、走ることへの向き合い方もバラバラな走者達が、それぞれに心に抱える葛藤に立ち向かって行く姿が、駅伝という競技ならではの高揚感も伴って描かれています。スポーツに関心のないお子様でも、細かなルール設定のない駅伝ですので、楽しみながら心情理解を進められる一冊です。

【入試で出題した主な学校】

 桐朋中(2017年度第1回『一区 沢田瞬太』)

☆2016年10月5日配信メルマガ
今年もやります!プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた鉄人会貝塚が予想する2017国語出題予想ベスト10

『サクラ咲く』辻村深月(光文社文庫)

amazon『サクラ咲く』辻村深月(光文社文庫)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 麻布中、慶應義塾湘南藤沢などで出題された『家族シアター』渋谷教育幕張中、市川中などで出題された『ロードムービー』など、中学受験でも頻出の人気作家、辻村深月氏による3つの作品で構成された短編集です。短編とはいえ、ひとつの作品が文庫本で100ページ前後と、今回ご紹介した作品の中でも特に長いですが、とにかく物語の展開が魅力的ですので、読書が苦手なお子様でも読み進められる内容です。中学受験的テーマは「心の成長」です。表題作の『サクラ咲く』は、内気な中学1年生の女子・マチが、図書館の本にはさまれた名前のない手紙を見つけ、見えない相手との文通を進めるといった話を軸に物語が展開します。手紙を書いたのが誰か、という謎解きのような要素がありながら、周りの人々との関係の中で成長して行くマチの姿が描かれています。まずは気構えることなく、物語の世界にのめり込んでみてください。楽しみながら読み終えた時には、マチや友人達の姿から様々なかたちの「心の成長」が自然と感じ取れる、貴重な教材とも言える稀有の一冊です。

【入試で出題した主な学校】

 早稲田中(2019年度第2回『世界で一番美しい宝石』)、鎌倉女学院(2017年度1次『サクラ咲く』)、大妻多摩中(2017年度第1回『サクラ咲く』)

『ぐるぐるの図書室』工藤純子・まはら三桃他(講談社)

amazon『ぐるぐるの図書室』工藤純子・まはら三桃他(講談社)

【対象学年】

 4年生以上

【ここがポイント!】

 図書室を舞台に、5人の作家達がそれぞれに著した短編で構成された作品です。まず時空を超えるといった不思議な物語の展開が魅力的で、読書が苦手なお子様でも楽しめる作品になっています。それに加えて、5人の作家の中には、先にご紹介した『白をつなぐ』をはじめ、毎年のようにその作品が入試で出題されるまはら三桃氏、2021年度の駒場東邦中で出題された『あした、また学校で』の工藤純子氏など、中学受験でも頻出の作家達も含まれており、そうした作家達の作品に触れられる貴重な機会にもなります。中学受験的テーマは「心の成長」です。物語の設定として、主人公が時空を超えて、過去をやり直せる状況になるのですが、そこで彼らが何を思い、どのような行動をしたかを読み取ることは、中学受験物語文で頻出の、人物が心を成長させる過程の読み取りにつながります。まずは物語を楽しみながら、主人公達の心の動きをじっくりと追ってみてください。

『そしてぼくらは仲間になった』小嶋陽太郎・高森美由紀他(ポプラ社)

amazon『そしてぼくらは仲間になった』小嶋陽太郎・高森美由紀他(ポプラ社)

【対象学年】

 4年生以上

【ここがポイント!】

 今でも多くのお子様方に愛読されている、那須正幹氏の『ズッコケ三人組』シリーズの誕生40周年を記念して、同シリーズを読んで育った世代の5人の作家達が、「三人組」を題材としてつづった短編で構成された作品です。中学受験的テーマは「友人関係」です。5つの短編に登場する三人組は、ぶつかり合いながら、互いの気持ちや環境に想いを寄せるようになり、その関係を変化させて行きます。どの作品も魅力的ですが、1編目の小嶋陽太郎氏(慶應湘南藤沢中等部2018年度、暁星中2019年度などで『ぼくのとなりにきみ』が出題)による『夏のはぐれもの』、2編目の高森美由紀氏による『ブリリアントなサルビア』(洗足学園中2020年度第2回で出題)の、初めは理解できなかった人物の思わぬ一面を見て、主人公が気持ちを変化させる過程、そして物語ラストの一文で見事に表される深い心情は、学年を問わず多くのお子様方に触れて頂きたい逸品です。

【入試で出題した主な学校】

 洗足学園中(2020年度第2回『ブリリアントなサルビア』)

『天のシーソー』安東みきえ(理論社)

amazon『天のシーソー』安東みきえ(理論社)

【対象学年】

 4年生以上

【ここがポイント!】

 小学五年生のミオと妹のヒナコの姉妹を中心とした小学生達の日常が描かれた6編から成る短編集です。この作品の中学受験的テーマは「細やかな心情表現、風景描写の読み取り」です。どの短編も劇的な出来事が起こることはありませんが、主人公のミオが妹のヒナコや友人との関係の中で抱く、ちょっとしたいらだちややりきれなさといった、ほんの些細にも見える心情が、細やかで美しい表現でつづられています。読んでいて、まるでその場の香りや音色が伝わってくるかのような風景描写も随所に見られます。本作品が入試頻出である要因のひとつがそうした表現の美しさにあると言えます。まだ読書経験の少ないお子様であれば、その真意を読み取ることは難しいかもしれませんが、「こんな表現をするんだ」といった印象を抱くだけでも構いません。本作品に散りばめられた数々の瑞々しく凛々しい表現に触れるだけでも、それが読解力を養成する大事な基盤づくりにつながります。できれば音読して頂きたいですが、それが負担に感じられるようであれば無理をせずに、ますはゆっくりと読み進めてみてください。

【入試で出題した主な学校】

 鷗友学園女子中(2004年)、品川女子学院中(2002年)、洗足学園中(2002年)
※いずれも短編名不明、麻布中2019年度に出題された『明日への改札』は2012年に発刊された文庫版に掲載されています。

 中学受験鉄人会のメルマガ『合格に導く魔法の本棚』では、今回ピックアップした作品以外にも多くの物語文をご紹介しています。ぜひご覧ください。

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