No.1148 春休み読書に最適!読解力養成の近道ができる物語文10選!

 今回は物語文読解力をアップに直結する、とっておきの10作品をご紹介します。春休みの時間を使って、読解力養成のポイントをぜひつかみ取ってください!
 各作品に対象学年を設定していますが、学年はあくまで目安です。対象学年を4年生以上としたのは、文章がよみやすく、文章量も多すぎない作品であって、6年生の皆さんにとってレベルが低いという意味では決してありません。読解力養成につながるという点では6年生でも十分に読む価値はあります。逆に対象を6年生とした作品は設定が少し複雑で文章量が多いものですが、4年生、5年生の皆さんでも、興味を持って読めそうであれば、ぜひチャレンジして頂きたいです。
 大事なのは中学受験でよく問われる心情の変化や、人物の真意が込められた言葉に触れ、物語文ならではの語彙に慣れることです。読むことが負担になったり、逆に物足りなさを感じてしまうと目的は達せられませんので、自分が読みたいと思う作品からどんどん読み進めてみましょう!
 以前にメルマガでご紹介したことのある作品は、そのリンクもつけてありますので、ぜひ参考にご覧になってください。

『思いはいのり、言葉はつばさ』まはら三桃(アリス館)

amazon『思いはいのり、言葉はつばさ』まはら三桃(アリス館)

【対象学年】

 4年生以上

【ここがポイント!】

 著者のまはら三桃氏は『たまごを持つように』、『白をつなぐ』など多くの作品が出題対象になってきた、中学受験最頻出作家の一人です。
 中国を舞台とし、時代設定も現代とは異なる物語ですが、文章自体はとても読みやすい作品です。
 10歳の少女チャオミンが、中国の女性だけが書く文字「ニュウシュ」を学びながら、様々な人物との出会いを通して成長していく姿が描かれています。
 中学受験的テーマは『友人関係・心の成長』です。主人公チャオミンが、民族の違いや友人との関係の変化などを感じながら、言葉を表現することの重要性をつかんで心を成長させて行く過程をとらえることがポイントになります。
 特に物語終盤の『シューイン』の章で、チャオミンの母親がつづる手紙に託された言葉の意味を、じっくりと読み取ってください。

【入試で出題した主な学校】

 桜蔭中(2020年度)

☆2019年8月3日配信メルマガ
LINE・SNS世代にこそ読んで欲しい!『思いはいのり、言葉はつばさ』まはら三桃(アリス館)

☆2019年10月27日配信メルマガ
プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた入試対策室長貝塚が予想する2020年度入試 国語出題予想ベスト10

『わたしのあのこ あのこのわたし』岩瀬成子(PHP研究所)

amazon『わたしのあのこ あのこのわたし』岩瀬成子(PHP研究所)

【対象学年】

 4年生以上

【ここがポイント!】

 岩瀬成子氏は『となりのこども』、『アスパラ』(『くもりときどき晴れる』所収)、『地図を広げて』など大変多くの著作品が中学受験の出題対象となってきました。
 とても読みやすい文体で書かれた作品ですが、ちょっとした言葉の中に深い意味が込められた表現が多く、何気ない表現からその真意を読み取る基礎づくりができます。
 貸していたレコードに傷が入ったという、ほんのささいな出来事がきっかけで心が離れ離れになった五年生の女子2人が、互いへの理解を深め合い、友人関係を再構築して行く様子を描いた物語です。
 中学受験的テーマは「友情」です。主人公の秋と仲たがいをしてしまったモッチの友情関係がどのように変化して行くのかを、何気ない、見逃してしまいそうな人物たちの言動に注意して読み取ることが読解のポイントになります。

【入試で出題した主な学校】

 関東学院中(2022年度)

☆2021年7月11日配信メルマガ
何気ない表現の中に中学受験的エッセンスが満載の傑作!『わたしのあのこ あのこのわたし』岩瀬成子(PHP研究所)予想問題付き!

『夜明けをつれてくる犬』吉田桃子(講談社)

amazon『夜明けをつれてくる犬』吉田桃子(講談社)

【対象学年】

 4年生以上

【ここがポイント!】

 まるで童話のように物語がシンプルに進行し、人物達の言動のストレートなため、心情の読み取りが進めやすい作品です。
 飼っていた犬を亡くしたことで心を閉ざし、言葉も失ってしまった美咲が、家族の支えや花屋で働く女性との触れ合いの中で、徐々に心を解放させて行く物語です。
 中学受験的テーマは『心の解法、成長』です。主人公の美咲の心の言葉には、悲しみ、悔しさ、もどかしさが込められています。それらの言葉や行動から、美咲の心がどのように変化して行くのか、特に花屋の女性(おねえさん)から投げかけられた言葉が美咲にどのように響いたのかをとらえることがポイントになります。
 また、家族の中で特に兄の翔が見せる、表面上の振る舞いとは裏腹な優しさは、中学受験で多く見られますので、しっかり読み取りましょう。

【入試で出題した主な学校】

 山手学院中(2022年度)

『あしたのことば』森絵都(小峰書店)

amazon『あしたのことば』森絵都(小峰書店)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 2020年の11月に発刊になるや、早速2021年度の桜蔭中で出題された作品で、これからも中学受験物語文の定番作品になるであろう傑作です。著者は『クラスメイツ』などが出題対象となった、中学受験最重要作家の一人、森絵都氏です。
 8編の作品からなる短編集ですが、そのほとんどは中学受験生の皆さんと同じ小学生です。何か劇的な事件が起こることはなく、小学生の日常の中で感じられる、友人関係の悩み、家族への想いなどがつづられています。
 中学受験的テーマは『言葉の力』です。8編に登場する人物達の心情の流れはそれぞれですが、どの短篇も共通して心の変化、交流における言葉の果たす役割を読み取ることがポイントになります。その言葉は時に人の心を傷つけ、時には支えとなり、また言うべき言葉を言えないはがゆさや、思いもよらない言葉に救われるなど、様々な姿を見せます。大事な言葉を見逃さないために、急がず、できれば同じ作品をくり返し読まれることをおすすめします。

【入試で出題した主な学校】

 桜蔭中(2021年度『あの子がにがて』)、横浜雙葉中(2022年度『風と雨』)、香蘭女学校(2022年度『風と雨』)、日本女子大附属中(2022年度、短編名不明) 

『キャプテンマークと銭湯と』佐藤いつ子(角川書店)

amazon『キャプテンマークと銭湯と』佐藤いつ子(角川書店)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 部活動を通して友人関係が変化して行く様子を描いた、まさに中学受験の王道を往く作品です。
 主人公の周斗がサッカークラブのキャプテンの座を入団したばかりの大地に奪われ、その悔しさや孤独の中でもがきながら、様々な人々との出会いを通して成長していく様子が描かれた物語です。
 中学受験的テーマは『友人関係』です。最新2022年度入試ではこのテーマの出題が少し減ったものの、友人関係が中学受験で頻出のテーマであることに変わりはありません。
 主人公の周斗と大地の心の距離感が、相手への反感・不審・嫌悪に始まり、挫折や孤独といった感情を経て心の成長を果たし、相手への理解を深めて行くという、公式とも言える流れで縮まって行く過程を読み取ることがポイントになります。特に、悩む周斗の心の内を表す言葉や、月などを象徴的に使う場面での表現効果には、ぜひとも触れておいて頂きたいです。

【入試で出題した主な学校】

 鷗友学園女子中(2020年度)、横浜共立学園中(2020年度)、筑波大附属中(2020年度)、専修大松戸中(2022年度)

☆2019年5月9日配信メルマガ
入試最頻出テーマ「友人関係」は佐藤いつ子『キャプテンマークと銭湯と』に学べ!

☆2019年10月27日配信メルマガ
プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた入試対策室長貝塚が予想する2020年度入試 国語出題予想ベスト10

『家族シアター』辻村深月(講談社文庫)

amazon『家族シアター』辻村深月(講談社文庫)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 筆者の辻村深月氏の作品では、これまで『サクラ咲く』『島はぼくらと』など多くの作品が出題対象となってきました。
 短編集である本作品は、タイトルの通り親子、兄弟、祖父母と孫など様々な家族間の心のやりとりを描いた物語が7編掲載されています。中学受験的テーマも『家族関係』になります。
 特に個性が異なる姉妹の姿がつづられた『1992年の秋空』、祖父と孫がぶつかり合う『孫と誕生会』は、どちらも、理解し合えなかった2人の関係が徐々に変わっていく過程が描かれていて、読解力養成に適した教材と言えます。
  『1992年の秋空』では、姉のはるかが妹のうみかに対して抱く、いら立ちや嫉妬心が、『孫の誕生会』では孫の実音の祖父への反抗心が、いずれもストレートな言葉で表されています。こうしたはっきりと言葉を発する人物が、次第に相手を受け入れて行く変化の様子は実際の入試でも問題の対象となることが多くあります。
 どの作品も心情の流れがていねいに描かれていますので、心情変化をじっくりと理解することができます。

【入試で出題した主な学校】

 麻布中(2016年度)、慶應義塾湘南藤沢(2017年度)、頌栄女子学院中(2019年度)
 ※すべて『1992年の秋空』

☆2015年9月5日配信メルマガ
昨年プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた鉄人会貝塚が予想する2016国語出題作品ベスト10

『屋上のウインドノーツ』額賀澪(文春文庫)

amazon『屋上のウインドノーツ』額賀澪(文春文庫)

【対象学年】

 5年生以上

【ここがポイント!】

 著者の額賀澪氏は本作品以外にも『ヒトリコ』、『タスキメシ』、『風に恋う』などの作品が出題対象となっている中学受験注目作家の一人です。
 高校の吹奏楽部を舞台として、他人と関わることを苦手としている志音と、過去に部長としての役割が果たせず挫折した経験のある大志が、部活動を通してそれぞれが抱えた心の傷から再生を果たして行く物語です。
 中学受験的テーマは『心の成長』です。挫折とそこからの再生が明確に表現されやすい部活動を舞台とした作品は出題されることが多く、本作品は心の成長の過程を理解するうえで有効なテキストと言えます。
 主人公の志音、大志をはじめ、彼らと関わって行く人物たちの心情表現はリアリティがあり、読んでいて爽やかな印象を抱くことができます。志音、大志それぞれが主役となる章が交互に連なるという構成も、視点を切り替えながら読解して行く練習を重ねる教材になります。
 目的に向かって進む二人が様々な壁を乗り越えて行く様子は、読み手をグイグイと引き込んで行きます。読書を楽しみながら、心情理解の練習を進められる一冊です。

【入試で出題した主な学校】

 高輪中(2016年度)、成城中(2017年度)、豊島岡女子中(2020年度)

☆2015年9月5日配信メルマガ
昨年プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた鉄人会貝塚が予想する2016国語出題作品ベスト10

『あしたの幸福』いとうみく(理論社)

amazon『あしたの幸福』いとうみく(理論社)

【対象学年】

 6年生

【ここがポイント!】

 2021年度入試で栄光学園中、浦和明の星中など、多くの学校で出題されて話題となった『朔と新』や、母と娘の愛と葛藤を描いた名作『カーネーション』の著者いとうみく氏による物語です。
 中学受験的テーマは、「心の距離感」です。突然の事故で父親を亡くした主人公の雨音が、産みの親である京香、父親の婚約者であった帆波と三人で共同生活を始めるといった少し入り組んだ設定になっています。
 雨音が最初は反発と戸惑いを抱いていた京香との心の距離を縮めて行く過程、そして同じく心の傷を負う幼なじみの廉太郎との間で心の奥底で共鳴する様子を的確に把握することがポイントになります。
 難しい言い回しなどは使われず、決して読みづらい文章ではありませんが、複雑な設定をしっかりと踏まえ、表面的な言動だけで人物の心情、心の距離感を解釈してしまわないように注意する必要があります。最近の中学受験の物語文では、設定が難しい作品が出題されることが多くあります。そうした作品に対しても戸惑わないように読み進める練習として、本作品は高い価値を有します。
 また、物語の背景にヤングケアラーという重要なテーマが含まれており、国語の読解力だけでなく社会的な問題について考察する力も養成することができる作品です。

【入試で出題した主な学校】

 江戸川学園取手中(2022年度)

☆2021年6月12日配信メルマガ
今年度入試の話題作『朔と新』の著者による新たな傑作!『あしたの幸福』いとうみく(理論社)予想問題付き!

『神に守られた島』中脇初枝(講談社)

amazon『神に守られた島』中脇初枝(講談社)

【対象学年】

 6年生

【ここがポイント!】

 現在ウクライナで起こっているロシアによる軍事侵攻が日々ニュースで取り上げられていますが、この大きな事件を単に社会の時事問題としてのみとらえるのではなく、物語文において戦争がどのように描かれてきたのかをおさえておく契機とする必要があると考えます。
 中学受験の物語文で戦争をテーマとした作品は数多く出題されており、本作品も桜蔭中、武蔵中で同じ年度に出題されました。第二次大戦末期の沖永良部島を舞台に、戦争によって愛する者を失う悲しみに直面しながら、様々な人達と出会い、心の触れ合いを重ねて行く人々の様子が、子供達の視点で描かれた物語です。
 中学受験的テーマは『戦時下における心の交流』です。戦争中という極限の状態にあって、時に深い悲しみに包まれながらも、子供達が互いを思いやる心を、何気ない言葉から読み取ることがポイントになります。また、桜蔭中、武蔵中が同じく出題箇所とした、島に不時着した特攻隊の伍長と子供達が言葉を交わす一連のエピソードは、命、人間としての尊厳の大切さ、戦争に向き合う様々な人物の考え方が表された重要な場面ですので、ぜひ読み込んでください。

【入試で出題した主な学校】

 桜蔭中(2019年度)、武蔵中(2019年度)

☆2018年10月4日配信メルマガ
中脇初枝『神に守られた島』(講談社)は来年度中学入試で出題が予想される、戦時下の心の交流を描いた稀有の傑作です!

『アンマーとぼくら』有川ひろ(講談社文庫)

amazon『アンマーとぼくら』有川ひろ(講談社文庫)

【対象学年】

 6年生

【ここがポイント!】

 これまでも『旅猫レポート』、『明日の子供たち』などの作品が出題され、最新2022年度入試でも栄東中A日程で『みとりねこ』からの短編が出題された、有川ひろ氏による作品です。
 子供の頃に実の母を亡くし、再婚するために沖縄に移住した父親も事故で亡くした主人公リョウが、大人になって沖縄に里帰りし、思い出の場所を訪ねる様子を描いた物語です。
 中学受験的テーマは物語全体のテーマである「家族」、そして「友人関係」です。父親の再婚相手である晴子さんとの家族関係、リョウが沖縄に移住してきてから知り合った友人の金ちゃんとの友人関係は、どちらも中学受験において多く描かれる人間関係の貴重なサンプルと言えます。
 特に物語の終盤で、父親を亡くした後のリョウの学校での様子を描写した箇所(文庫版P.293の17行目からP.300のP.10行目)は、大事な人を亡くした悲しみ、それを受け止める友人の優しさがあふれ出す名場面で、海城中2017年度第2回、甲陽学院中2017年度で同じく出題対象とされていました。
 大人向けの作品で、主人公の現在と過去の姿が交錯する設定の複雑さはありますが、文章自体は読みやすいものです。物語の展開に引き込まれながらも、心情読解の練習を進められる一冊です。

【入試で出題した主な学校】

 海城中(2017年)、神奈川学園中(2017年)甲陽学院中(2017年)埼玉栄中(2019年)

☆2016年10月5日配信メルマガ
今年もやります!プレジデントファミリー誌上で1位、2位を的中させた鉄人会貝塚が予想する2017国語出題予想ベスト10

 中学受験鉄人会のメルマガ『合格に導く魔法の本棚』では、今回ピックアップした作品以外にも多くの物語文をご紹介しています。ぜひご覧ください。

 われわれ中学受験鉄人会のプロ家庭教師は、常に100%合格を胸に日々研鑽しております。ぜひ、大切なお子さんの合格の為にプロ家庭教師をご指名ください。

メールマガジン登録は無料です!

頑張っている中学受験生のみなさんが、志望中学に合格することだけを考えて、一通一通、魂を込めて書いています。ぜひご登録ください!メールアドレスの入力のみで無料でご登録頂けます!

ぜひクラスアップを実現してください。応援しています!

ページのトップへ