No.1540 2025年度入試で出題される確率が高い物語のベストテンを発表します!

 来年2025年度中学入試の国語・物語文で出題確率が高い作品を、ベストテン形式で選びました。作品ごとにどの層の中学で出そうかを書いておきました。具体的にどの学校で出題されそうかも予想しています。昨年度の予想では、予想した10冊すべてが入試で出題され、特に海城中では学校まで的中しました。今年も出題確率が高い物語文が目白押しです!

 入試では、既知の作品が出ると非常に有利です。6年生のお子様方は作品を読む時間がないかと思いますので、各作品をご紹介したメルマガのリンクをそれぞれ貼っておきますので、あらすじ、中学受験的テーマ、予想問題を確認して、解答のポイントをつかんでください。5年生以下の皆さんにはぜひご紹介した本を手に取って読んで頂きたいです。

【ベストテン】

第1位:『彼女たちのバックヤード』森埜こみち(講談社)
【上位校から最難関校。特に大妻中・香蘭女学校中・横浜雙葉中・学習院中等科は要注意】

第2位:『カラフル』阿部暁子(集英社)
【上位校から最難関校。特に駒場東邦中・栄光学園中・浦和明の星中は要注意】

第3位:『透明なルール』佐藤いつ子(KADOKAWA)
【中堅校から最難関校。特に学習院女子・芝中・田園調布学園中・成城学園中は要注意】

第4位:『わたしは食べるのが下手』天川栄人(小峰書店)
【中堅校から最難関校。特に浦和明の星中・サレジオ学院中・品川女子学院中は要注意】

第5位:『光の粒が舞いあがる』蒼沼洋人(PHP研究所)
【中堅校から最難関校。特に学習院女子・本郷中・中央大附属中は要注意】

第6位:『ぼくの色、見つけた!』志津栄子(講談社)
【中堅校から最難関校。特に学習院中等科・立教女学院中・専修大松戸中は要注意】

第7位:『いつか、あの博物館で。アンドロイドと不気味の谷』朝比奈あすか(東京書籍)
【上位校から最難関校。特に鷗友学園女子・桐朋中・横浜雙葉中は要注意】

第8位:『17シーズン 巡るふたりの五七五』百舌涼一(講談社)
【中堅校から最難関校。特に鷗友学園女子・湘南白百合学園中・洗足学園中は要注意】

第9位:『魔法竜(マジックドラゴン)の由来』川端裕人(『飛ぶ教室 第76号・2024年冬』収録)(光村図書)
【上位校から最難関校。特に洗足学園中・浦和明の星中・立教女学院中は要注意】

第10位:『恐竜時代が終わらない』山野辺太郎(書肆侃侃房)
【上位校から最難関校。特に早稲田実業、市川中、豊島岡女子中は要注意】

【第1位】

『彼女たちのバックヤード』森埜こみち(講談社)

amazon『彼女たちのバックヤード』森埜こみち(講談社)

 それぞれに事情を抱える3人の中学3年生女子の関係を題材として「友人関係」「家族関係」という、中学受験物語文の最重要テーマ「他者理解」の中でも特に頻出度の高い2つを鮮明に描き出した傑作です。登場人物たちの深い心情が込められた会話や心の声などに、中学校の先生方の作問意欲をかきたてる心情表現が数多く見られる一冊です。章によって3人のうちの誰かが主人公になるという作問しやすい構成もあって、多くの学校が出題対象とすることは必至です。特に、会話の多い文章で友人関係の変化を描く作品を出題する傾向の強い、大妻中、香蘭女学校中、横浜雙葉中、学習院中等科は要注意です。

☆2024年3月16日配信メルマガ
重要テーマ「友人関係」&「家族関係」の理解を深めることができる稀に見る傑作!『彼女たちのバックヤード』森埜こみち 予想問題付き!

【第2位】

『カラフル』阿部暁子(集英社)

amazon『カラフル』阿部暁子(集英社)

 病気により車いすユーザーとなった六花と、大けがが原因で陸上の世界から離れた伊澄という二人の高校生が、相手が抱える心の傷への理解を深め、再生のきっかけをつかんで行く過程を描いた作品です。一般文芸書の長編という中学受験では出題されづらい設定ですが、「他者理解を通じて自己理解を深める」という最頻出パターンが鮮やかに描かれ、圧倒的な求心力を持った人物描写に満ちた本作品を第2位に選出しました。上位校から最難関校を中心とした出題が予想されますが、苦境に向き合いながら再生する人物の姿を描いた作品を出題する傾向のある、駒場東邦中、栄光学園中、浦和明の星中は要注意です。

☆2024年5月24日配信メルマガ
傑作誕生!中学受験最頻出パターン「『他者理解』を通じて『自己理解』を深める」を学び取れる再生の物語『カラフル』阿部暁子 予想問題付き!

【第3位】

『透明なルール』佐藤いつ子(KADOKAWA)

amazon『透明なルール』佐藤いつ子(KADOKAWA)

 「他者理解を通して自己理解を深める」という近年の中学受験物語文の最頻出パターンが描き込まれ、さらに「同調圧力」という論説文・物語文ともに多く扱われることの多い注目テーマも盛り込まれている本作品を第3位としました。著者の佐藤いつ子氏の作品で、鷗友学園女子をはじめ多くの学校で出題された名作『キャプテンマークと銭湯と』と同様に、友人関係の変化が描かれている点もまた、出題可能性が高い要因となります。等身大の人物が友人関係に悩みながら自己理解を深める姿を描いた作品を出題する傾向の強い、学習院女子、芝中、田園調布学園中、成城学園中は特に要注意です。

☆2024年6月28日配信メルマガ
黄金パターン「他者理解を通して自己理解を深める」+「同調圧力」!来年度入試で出ないはずがない成長物語!『透明なルール』佐藤いつ子 予想問題付き!

【第4位】

『わたしは食べるのが下手』天川栄人(小峰書店)

amazon『わたしは食べるのが下手』天川栄人(小峰書店)

 会食恐怖症である葵と、摂食障害で過食嘔吐をしてしまう咲子という2人の中学生が、学校での給食改革を進める中で、様々な人々との出会いを通して自分に向き合い、もがき苦しみながら再生して行く過程を描いた作品です。本作品もまた、「他者理解を通した自己理解」を具現化しており、また読み手の心を打ち震わせてくれる心情描写に満ちています。「親子関係」「異文化理解」といったテーマも含まれ、多くの学校の注目を集めること必至ですが、特に挫折からの再生を通して自分のあるべき姿を見つめ直す人物の姿を描いている点で、浦和明の星中、サレジオ学院中、品川女子学院中は要注意です。

☆2024年8月31日配信メルマガ
心の深い闇から「生きる希望」を見つけ出す女子中学生の姿を通して、重要テーマ「自己理解」を描き切った一冊!『わたしは食べるのが下手』天川栄人 予想問題付き!

【第5位】

『光の粒が舞いあがる』蒼沼洋人(PHP研究所)

amazon『光の粒が舞いあがる』蒼沼洋人(PHP研究所)

 ボクシングを通じて出会った2人の女子中学生が心の交流を経て、自分の進むべき道をつかみ取って行く姿を描いた成長物語の傑作です。主人公・心愛がボクシングに打ち込む中学生・こはくとの出会いを通して成長する過程には「他者理解を通して自己理解を深める」がという最頻出パターンが見られ、また「同調圧力」について読み手に考察する機会を与えてくれる点で、多くの学校が出題対象とする可能性が高く、特に個性の強い人物との出会いを通して自分の生き方を見つめ直す主人公の姿を描いた作品を出題する傾向の強い、学習院女子、本郷中、中央大附属中は要注意です。

☆2024年9月29日配信メルマガ
ボクシングに魅入られた2人の女子中学生の姿を通して、重要テーマ「自己理解」を描き切った成長物語!『光の粒が舞いあがる』蒼沼洋人 予想問題付き!

【第6位】

『ぼくの色、見つけた!』志津栄子(講談社)

amazon『ぼくの色、見つけた!』志津栄子(講談社)

 色覚障がいのある小学5年生の主人公が、家族、担任の先生の支えを受けながら、自分の個性を活かして打ち込めるものと出会い、心を成長させて行く姿を描いた傑作です。重要テーマ「自己理解」がわかりやすい文体で書かれており、出題対象となりそうな心情表現も満載です。主人公が成長を果たす過程で、友人関係、家族関係を変化させて行く様子も丁寧な筆致で描かれています。来年度入試で偏差値を問わず多くの学校が出題対象とする可能性が高いですが、特に読みやすい文体で主人公が自分と向かい合いながら成長する様子を描いている点で、学習院中等科、立教女学院中、専修大松戸中は要注意です。

☆2024年8月12日配信メルマガ
読みやすい文体で「自己理解」の黄金パターンを描いた成長物語『ぼくの色、見つけた!』志津栄子 予想問題付き!

【第7位】

『いつか、あの博物館で。アンドロイドと不気味の谷』朝比奈あすか(東京書籍)

amazon『いつか、あの博物館で。アンドロイドと不気味の谷』朝比奈あすか(東京書籍)

 『君たちは今が世界(すべて)』、『人間タワー』といった頻出作品の著者、朝比奈あすか氏が、4人の中学生たちが過ごす3年間を描いた群像劇です。「他者理解」という中学受験物語文の頻出テーマが扱われ、そこに、不登校」同調圧力」といったいくつもの社会的テーマを含み、作問者にとって出題対象としやすい連作短編集に近い構成の本作品は、来年度入試で多くの学校から注目を集めること必至です。特に、主人公が集団の中では気づかれることのない他者の魅力を知ることで、友人関係を見直す過程が描かれる作品を出す傾向の強い、鷗友学園女子中、桐朋中、横浜雙葉中は要注意です。

☆2024年10月12日配信メルマガ
重要テーマ「他者理解」が学び取れる!縁で結ばれた4人の中学生の成長物語『いつか、あの博物館で。アンドロイドと不気味の谷』朝比奈あすか 予想問題付き!

【第8位】

『17シーズン 巡るふたりの五七五』百舌涼一(講談社)

amazon『17シーズン 巡るふたりの五七五』百舌涼一(講談社)

 小学校の頃に上手く言葉を発することができなかったことが原因で心を閉ざしてしまった中学生女子が、俳句と出会い、様々な人物との心の触れ合いを通して自己を取り戻して行く様子が丁寧な筆致で描かれた作品です。「挫折からの再生」という重要テーマを題材としているだけでなく、SNSを通じた手短な会話では表現できない、心を込めてつむぎ出された言葉の価値を認識させてくれる点で、女子難関校を中心に多くの学校から注目を集めること必至です。特に挫折から再生する人物の姿を読みやすい文体で描いた作品を出す傾向のある、鷗友学園女子、湘南白百合学園中、洗足学園中は要注意です。

☆2024年5月11日配信メルマガ
頻出テーマ「挫折からの再生」を俳句を通して描いた成長物語!『17シーズン 巡るふたりの五七五』百舌涼一 予想問題付き!

【第9位】

『魔法竜(マジックドラゴン)の由来』川端裕人(『飛ぶ教室 第76号・2024年冬』収録)(光村図書)

amazon『魔法竜(マジックドラゴン)の由来』川端裕人(『飛ぶ教室 第76号・2024年冬』収録)(光村図書)

 これまでも収録された多くの短編が入試出典となってきた雑誌『飛ぶ教室』からの一編です。著者の川端裕人氏の作品では、これまでも『今ここにいるぼくらは』、『川の名前』が多数の出題実績を挙げています。父・娘・孫と三世代にわたる愛情の深いつながりが描かれ、短い作品の中に出題対象となり得る心情表現が満載の本短編も来年度入試で多くの学校の注目を集めると予想されます。特に、劇的な出来事が描かれることなく、淡々とした語り口を通して深い心情のやりとりを読み取る力が求められる点で、洗足学園中、浦和明の星中、立教女学院中は要注意です。

☆2024年4月20日配信メルマガ
祖父・娘・孫、三世代につながる家族愛を描いた傑作短編『魔法竜(マジックドラゴン)の由来』川端裕人 予想問題付き!

【第10位】

『最後のドッジボール』(『恐竜時代が終わらない』収録)山野辺太郎(書肆侃侃房)

amazon『恐竜時代が終わらない』山野辺太郎(書肆侃侃房)

 本作品の巻末に収録された短編『最後のドッジボール』を第10位に選出します。頻出テーマである「親子関係」を題材としながらも、「自分が親と同じ世代になることで初めて、親としての想いや、生き方を知る」といったパターンが、場面の空気感を絶妙にかもし出す表現で描き込まれており、来年度入試の出典となる可能性が高くあります。使われている語彙レベルが高いことから、上位難関校での出題が予想されますが、特にテーマは王道でありながら、小学生にとっては実感をもって読み取ることができない設定の物語を出題する傾向の強い、早稲田実業、市川中、豊島岡女子中は要注意です。

☆2024年7月20日配信メルマガ
頻出テーマ「親子関係」でありながら、ただの「親子関係」ではない!『恐竜時代が終わらない』山野辺太郎 予想問題付き!

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